中日新聞 朝刊 2023年5月28日
国が法律上の同性同士の婚姻を認めないのは憲法が保障する婚姻の自由の侵害にあたるとして、愛知県内の三十代の男性カップルが国に損害賠償を求めた訴訟の判決が三十日、名古屋地裁で言い渡される。全国五地裁で起こされた同種訴訟の判決では四件目。先行する札幌、大阪、東京では合憲か違憲かを巡って判断が分かれており、名古屋地裁の判決が注目される。
訴訟では、男女の婚姻を前提とする民法や戸籍法の規定が、憲法の定める「法の下の平等」(一四条)や「婚姻の自由」(二四条)に反するかが争われた。原告側は、憲法は同性同士の婚姻を禁じていないのに、男女間の夫婦であれば認められる相続や共同親権などの権利が得られず、法の下の平等に反するなどとして、一人当たり百万円の損害賠償を求めている。
これに対し、国側は、憲法二四条が「婚姻は同性の合意のみに基づいて成立する」と定め、同性婚を想定していないなどとして、請求棄却を求めている。
2021年3月の札幌地裁判決は「性的指向は自らの意思にかかわらず決定される個人の性質」として、婚姻の法的利益を得られない現状は14条に反するとして「違憲」と判断。一方、22年6月の大阪地裁判決は、将来的な違憲の可能性を指摘しつつも「合憲」とした。同年11月の東京地裁判決は「個人の尊厳」(24条)に照らして「違憲状態」にあると指摘し、判断が分かれた。
原告の代理人弁護士は「『合憲』と判断されれば、現行制度を維持するための口実に使われてしまう。(民法改正などにつながる)踏み込んだ判決で、婚姻制度を利用できるようにしてほしい」と話した。
男性カップル「現状打破を」
名古屋地裁の原告を務める愛知県内の三十代の男性カップルは、人生のさまざまな場面で選択肢が狭められてきたとし、「どちらかの人生が終わるときに『良かったね』と言えるようにしたい。現状を打破するため、裁判官には真摯に受け止めてほしい」と訴える。
二人は2016年秋に知り合い、程なく結婚を意識するように。法律婚が認められないため、翌年、相続などについて取り決めた公正証書を交わした。
ただ、法律上は家族でないため、マンションを購入した時は共同名義にできず、一方の名義とするしかなかった。相手が事故や急病で病院に搬送されても家族とみなされず、付き添いを断られる恐れがあり、「一分一秒を争うときに公正証書を取りに自宅まで戻り、病院に説明しないといけない」と不安を抱える。
19年2月の提訴から4年以上に及んだ裁判で、周囲の期待を重荷に感じる時もあった。それでも思いを寄せて支えてくれる人たちの存在は心強かった。「(日本の婚姻制度は)先進7か国(G7)の中でも遅れていて、現に困っている人たちがいる。社会を変えていくために、多くの人に関心を持ってもらえることが大事」と話した。
◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用、及び書き写し(=来栖)
* 同性婚可能とするための改正案提出 立憲民主党 2023/3/6 〈来栖の独白〉人が人と繋がること、愛し合うこと、その究極の形は「婚姻」「養子縁組」だけではないだろう
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