人事院総裁に天下り カコカンリョー 前厚生労働次官  /  大岡昇平「人事酒」

2009-11-18 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
江利川氏、人事院総裁就任へ 参院本会議が同意
 参院は18日午前の本会議で、人事院人事官に江利川毅前厚生労働次官を起用する政府の人事案を採決し、民主、社民、国民新各党などの賛成多数で同意した。政府は近く、江利川氏を9月に辞任した谷公士前人事院総裁の後継に任命する。
 政府は人事院勧告に基づいて国家公務員の給与を引き下げる給与法改正案の審議に出席する人事院総裁の後任選びを急いでいた。自民党など野党は厚労次官経験者の起用を「明確な天下り人事だ」などと批判し、反発を強めていた。
 鳩山由紀夫首相は官僚OBの天下りとの批判に対して「(官僚制度の)中を知っている人が1人くらいいた方が大胆な改革ができると判断した」と国会審議などを通じて主張。「人事院そのものの存廃の議論が必要なぐらいの人事院改革、公務員制度改革をしないといけない。大きな実力のある人をつけないと改革できない」などと理解を求めている。(日経新聞2009/11/18/10:43)
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春秋(11/18)
 太宰治、松本清張、埴谷雄高……。ことしは生誕100年を迎えた作家の当たり年だ。その一人、大岡昇平が「人事酒」という言葉を残している。戦争中、神戸で会社員だったころの体験をもとにした命名だと、丸谷才一さんが山口瞳との対談で披露していた。
▼「酒を飲みながら人事の話をする。これはいやなんだ。酒飲んだことにならないよ」と言っていたそうだ。「次の社長は彼らしい」。そんなうわさ話が、「なぜおれよりあいつが先なのか」という恨みとまじって湿っぽくなる。大岡が嫌った光景は、70年近くたった今でもそのままだろう。
▼この人事も、酒の肴(さかな)にしたらあまり愉快ではない。日本郵政社長に元大蔵次官がなり、きょうは前厚生労働次官が人事院人事官に就くことに国会が同意する運びという。民主党政権が掲げた「天下りのあっせんは全面的に禁止する」との御旗の裏には、小さく「ただし政権によるあっせんは除く」とでもあったか。
▼「いい酒は真ん中を通る」などという。人事話は酒を右往左往させ、まずくする。大岡にはそういう実感があったろう。天下り人事をめぐる鳩山由紀夫首相の弁明も、右往左往して政権の風味をいささか損ねている。真ん中を通ってストンと腑(ふ)に落ちる。酒には限らない。それがいい人事であり、いい政治である。

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