東電女性殺害事件/身体上のことや私生活をここまで暴かれる苦痛/無罪推定原則

2011-07-22 | 社会

東電女性殺害 新事実に目を凝らせ
社説:東電女性社員殺害 再審で審理やり直せ
 驚くべき事実だ。97年に起きた東京電力の女性社員殺害事件で、被害者の体から採取された精液のDNA鑑定をした結果、無期懲役が確定したネパール人受刑者とは別人で、現場に残された身元不明の体毛と型が一致したことが分かったのだ。
 元飲食店従業員のゴビンダ・プラサド・マイナリ受刑者の再審請求審で、東京高裁の求めに応じ、東京高検が専門家に鑑定を依頼していた。
 直接的な証拠がない事件だと言われた。だが、現場である東京都渋谷区のアパートの部屋のトイレに残されていた精液と、落ちていた体毛1本のDNA型がマイナリ受刑者と一致したことなどから、マイナリ受刑者は逮捕・起訴された。
 しかし、マイナリ受刑者は捜査段階から一貫して否認した。1審・東京地裁は2000年4月、トイレにあったマイナリ受刑者の精液を「犯行のあった日より以前に残された可能性が高い」と認定。さらに、遺体近くに別の第三者の体毛が残っていたことを指摘し「状況証拠はいずれも反対解釈の余地があり不十分」などとして、無罪を言い渡した。
 しかし、東京高裁は同12月、マイナリ受刑者以外が現場の部屋にいた可能性を否定し、無期懲役を言い渡し、03年11月に最高裁で確定した。
 再審は、無罪を言い渡すべき明らかな新証拠が見つかった場合に始まる。最高裁は75年の「白鳥決定」で「新証拠と他の全証拠を総合的に評価し、事実認定に合理的な疑いを生じさせれば足りる」と、比較的緩やかな判断基準を示した。
 新たな鑑定結果は、現場にマイナリ受刑者以外の第三者がいた可能性を示すもので、確定判決の事実認定に大きな疑問を投げかけたのは間違いない。裁判所は再審開始を決定し、改めて審理をやり直すべきだ。
 それにしても、被害者の体から精液が採取されていたならば、容疑者の特定に直結する直接的な証拠ではないか。トイレに残っていたコンドームの精液をDNA鑑定する一方で、体に残った精液のDNA鑑定をしなかったとすればなぜか。整合性が取れないとの疑問が残る。
 警察・検察当局は、鑑定技術の問題なのかを含め、再審請求審までDNA鑑定がずれ込んだ経緯を十分に説明してもらいたい。また、なぜ公判段階で証拠調べができなかったのか弁護団も検証すべきだ。検察側の証拠開示に問題があったのか、弁護側に落ち度があったのか責任の所在を明らかにすることが、今後の刑事弁護に生かす道につながる。
 DNA鑑定は、容疑者の特定に直結する。再鑑定ができるよう複数の試料を残すことなど保管についてのルール作りも改めて求めたい。毎日新聞2011年7月22日2時32分
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〈来栖の独白〉
 「こういう事件、裁判があったのか」という感懐。私は、つい昨日まで、この事件のことは知らずにきた。あらためていくつかの記事に目を通し、「疑わしきは被告人の利益に」の条文が頭に浮かんだ。
 犯人でない者を罪に定め(1審判決は無罪だったという)懲役刑を科すなどはあってはならないことだが、この種の事件に出会っていつも考えてしまう。被害者(女性)としては身体上のことや私生活等をここまで暴かれ世間の口の端に上ることの苦痛は決して小さくないだろう、と。記事・社説には、究極のプライバシーといえるワードがあまた躍る。同じ女性として、非常に辛い。果たしてこれ以上の捜査を被害者は望んでいるだろうか、などと意気地のない私は考えてしまう。

*「疑わしきは被告人の利益に」
 無罪推定の原則は犯罪の明確な証明があったときにのみ有罪となり、それ以外の時は無罪となることを意味すると同時に、犯罪の立証責任を検察官に負担させ、立証できないときは被告人を無罪とする原則でもある。
 無罪推定原則の法的根拠は憲法31条の適正手続き保障の規定の解釈や刑事訴訟法336条後段によるとされる。
憲法31条「何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」
 重要なのは「法律の定める手続きによらなければ」という文言である。憲法31条は”原則被告人は無罪である。しかし、例外的に法律(=刑事訴訟法)の定める手続きによれば有罪とできる”と解釈されているのである。
刑事訴訟法336条「被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪を言い渡さなければならない。」
 これは犯罪の証明がないときは無罪という直接的な規定である。無罪推定原則が刑事裁判で鉄則とされるのは、刑事訴訟法の条文があることも理由だが、それ以上に無罪推定原則が憲法上の保障を受けているためである。言うまでもないことだが、憲法上の保障は法律上の保障よりも強い保障である。
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東電OL殺害再審決定出した小川正持裁判長 小沢一郎氏の控訴審担当/麻原彰晃死刑囚 地裁裁判長も 2012-06-08 | 死刑/重刑/生命犯 問題
 【
東電OL殺害再審開始】決定出した小川正持裁判長 小沢一郎被告の控訴審も担当
産経ニュース2012.6.7 22:48
 今回の決定を出した東京高裁第4刑事部の小川正持裁判長(62)は、多数の著名事件を担当するベテランだ。昭和52年に任官し、司法研修所教官、前橋地裁所長などを歴任。平成21年の裁判員制度導入には、最高裁刑事局長として携わった。
 幼女4人連続誘拐殺人事件で20年に死刑執行された宮崎勤元死刑囚の1審では右陪席を勤めた。オウム真理教の元教祖、麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚(57)の判決公判では裁判長として死刑を言い渡した。資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で政治資金規正法違反罪に問われ、1審で無罪判決を受けた民主党元代表の小沢一郎被告(70)の控訴審も担当している。
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【東電OL殺害再審開始】「裁判所の姿勢評価」 日弁連会長が声明
産経ニュース2012.6.7 14:48
 日弁連の山岸憲司会長は7日、東京電力女性社員殺害事件の再審開始決定を受け「検察官に対し証拠開示を求め、その結果を踏まえて確定判決の誤りを是正した裁判所の姿勢を評価する」との声明を発表した。
 「裁判所から要求されるまで弁護団の証拠開示請求を拒絶した。証拠の不開示が冤罪を生み出した原因だ」と検察を批判。「本日の決定を契機に、全面的証拠開示制度の実現に全力で取り組む」とした。
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小沢一郎氏裁判 2審は秋にも開始 早ければ年内に「判決」言渡し 小川正持裁判長 2012-05-22 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
 小沢氏裁判 2審は秋にも開始か
 NHK NEWS WEB 5月22日 16時25分
 民主党の小沢元代表の政治資金を巡る事件の裁判で、東京高等裁判所は、検察官役の指定弁護士に対し、控訴の詳しい理由を書いた書面を来月20日までに提出するよう伝えました。
 これによって、2審の裁判は早ければ秋にも始まる可能性が出てきました。
 民主党の小沢一郎元代表の裁判で、東京地方裁判所が無罪を言い渡したのに対し、検察官役を務める指定弁護士は、今月9日、判決を不服として控訴しました。
 これについて、2審の東京高等裁判所は指定弁護士に、控訴の理由を詳しく書いた「控訴趣意書」を来月20日までに提出するよう伝えました。
 通常は3か月程度先になる提出の期限が早くなったことで、2審の裁判はことし秋にも始まる可能性が出てきました。
 2審の審理の具体的な予定は決まっていませんが、審理の進み方によっては、判決は早ければ年内にも言い渡される可能性もあります。
 一方、2審の審理は、オウム真理教の麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚の裁判などを担当し、最高裁の刑事局長を務めた、小川正持(おがわ しょうじ)裁判長が担当することになりました。
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小沢氏控訴審、6月20日までに趣意書提出
 小沢一郎民主党元代表(69)が政治資金規正法違反に問われた事件で、先月26日に東京地裁で無罪を言い渡された元代表の控訴審は、東京高裁第4刑事部(小川正持裁判長)で審理されることが、22日わかった。
 同部は検察官役の指定弁護士に対し、控訴の理由などをまとめた控訴趣意書の提出期限を6月20日とすると通知した。
 控訴趣意書の提出期限は、控訴して3か月前後に設定されることが多いが、今回は今月9日の控訴から約1月半と短い。
 元秘書3人(1審有罪)の控訴審は別の部で審理されるが、弁護側の控訴趣意書の提出は6月下旬以後にずれ込む予定で、元代表の公判が先行する可能性もある。
 指定弁護士は1審と同じメンバー3人が務め、主任格の大室俊三弁護士(62)は「予想より提出期限までの時間が短いが、補充捜査した上で間に合わせるよう努力したい」と話した。
(2012年5月22日22時01分 読売新聞)
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松本智津夫(麻原彰晃)被告 裁判
【「オウム教祖」判決】朝日新聞 2004/02/27
オウム松本被告に死刑判決、犯行指示認定 弁護団は控訴
 地下鉄・松本両サリンや坂本堤弁護士一家殺害など13事件で計27人を死なせたとして、殺人などの罪に問われたオウム真理教元代表・松本智津夫(麻原彰晃)被告(48)の判決が27日、東京地裁であった。小川正持裁判長は、一連の犯行について松本被告の指示だったと認定。「不特定多数への無差別テロにまで及んだ一連の犯罪は、救済の名の下に日本国を支配しようと考えたもので、極限ともいうべき非難に値する」と述べ、検察側の求刑通り被告に死刑を言い渡した。
 松本被告の国選弁護団は判決を不服として即日控訴した。
 判決は、13事件すべてを有罪と認定した上で量刑の理由を説明。「動機・目的はあさましく愚かしい限り」「弟子たちにことごとく責任を転嫁し、刑事責任を免れようとする態度に終始した」「被害者・遺族に対する一片の謝罪の言葉も聞けない」などと厳しい言葉で指摘し、死刑で臨む以外にないと結論づけた。
 主文を後に回した小川裁判長は、午前中の理由の朗読で、89年11月に起きた坂本弁護士一家殺害事件に言及した。
 教団に批判的だった坂本弁護士について「放っておけば、最終解脱者を自称する自身が打撃を受け、出馬する次回の総選挙にも悪影響を及ぼす」と考え、故・村井秀夫元幹部らに殺害を指示。横浜市のアパートに行った実行犯から、電話で玄関ドアの錠があいている状況などの連絡を受けると、「家族も一緒にやるしかないだろう」と言って一家3人の殺害を指示したと認定した。
 この後、サリン製造など教団武装化の経緯に移った。「70トンのサリンを東京に散布して首都を壊滅し、国家権力を打倒して日本にオウム国家を建設して自ら王となって支配することをもくろんだ」と動機を指摘。サリンの殺傷能力を確かめるため、オウム支部の建設に反対する住民が起こした訴訟を審理する長野県松本市の裁判所を襲うことを考え、「裁判所にサリンをまいて実際に効くかやってみろ」と幹部らに指示し、94年6月にサリンが散布された、と認定した。
 午後に入って、95年3月に東京の営団地下鉄3路線5車両でサリンがまかれ、12人が死亡、5500人以上が負傷した地下鉄サリン事件について言及した。事件2日前、松本被告と弟子たちが乗ったリムジンの車中で、間近に迫った強制捜査への対応を協議。村井元幹部が「サリンをまけばいい」と提案すると、松本被告は「それはパニックになるかもしれないなあ」と同意し、村井元幹部に総指揮を命じた。遠藤誠一被告にサリン製造を、井上嘉浩被告にも現場指揮を指示し、この時点で共謀が成立したと認めた。
 一審判決まで7年10カ月、公判期日257回という長期裁判だった。これで一連のオウム公判で起訴された189人の一審判決が出そろった。死刑判決を受けたのは12人目となった。(04/02/27 18:50)
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宮崎勤死刑囚 宮崎勤被告~家族の悲劇 被害者の陰、地獄の日々 父親自殺 改姓 離散・・・父親自殺 改姓 離散・・・


2 コメント

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Unknown (ゆうこ)
2011-07-27 06:40:35
rice_showerさん
 今回も心に響くコメント、ありがとう、です。
 どのような事象、事件に対しても、自身の感性で考えてゆく、そういう姿勢を保ちたいと思ってきました。世の中、ずいぶん変容したようでも、女性が被害者になるケースはあとを絶ちませんね・・・。
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Unknown (rice_shower)
2011-07-23 13:50:12
この事件については、桐野夏生の小説『グロテスク』、被害者と風俗店で同僚だった現ライター酒井あゆみのノンフィクション、中村うさぎのエッセイなどを読みました。(若い頃には渋谷あたりの風俗店にはお世話になった事も有り、強く興味を引かれ)
何れにも女性ならではの深い視線が感じられました。 
遺族にとっては耐えられない内容かも知れませんが、被害者は天国で「分かってくれてる.....」と感じているかも。
マイナリ受刑者に対しては、「こんな国でごめんなさい」と詫びるしかない。 彼が米国人であったなら、結果は違っていただろうに。
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