ユニークな研究に贈られるイグ・ノーベル賞 2023.9.25.

2023-09-25 | 文化 思索

中日春秋
 2023年9月25日

 『暗夜行路』などの作家、志賀直哉は濃い味が食べ物のお好みだったようだ。嵐山光三郎さんの『文人悪食』に教わった。「たいがいのものは塩辛くないとうまくない」が持論だった
▼濃い味が好まれる東北の生まれというのも関係があるか。関東、東北の人間は関西の人よりも2割、多く働くため、その分、塩分が濃くなると主張し、関西の薄味は「活動しない人」の味覚とまで決めつけていたらしい。今なら、関西方面で「なに抜かしとんのや」の声が上がるだろう
▼当時としては88歳と長寿の作家だが、塩分の取り過ぎが体に障るのはいうまでもないだろう。高血圧や心臓病にもつながりやすい
▼「小説の神様」に特別なお箸を1膳、進呈したくなる。ユニークな研究に贈られるイグ・ノーベル賞。今年の「栄養学賞」に明治大の宮下芳明教授と東大大学院の中村裕美特任准教授による、味を変える箸の研究が選ばれた
▼微弱な電流を通した箸を使って食べ物を口に運ぶと感じる味を変化させることができるそうだ。20年近く続く研究で、既に減塩した食べ物でもちゃんと塩味を感じる装置も開発している
▼イグ・ノーベルとはノーベル賞と英語の「ignoble(不名誉、不誠実)」を組み合わせた造語だが、塩の摂取量を減らし、健康を増進する名誉ある研究だろう。体重増に悩む身は甘さを強く感じるフォークが欲しい。

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です


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