村山談話に繋がる国会決議に反対した共産党 今では天まで持ち上げている なぜ態度を変えたのか 筆坂秀世

2015-04-28 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

戦後70年談話の核心にすべきはお詫びではない  謝罪を繰り返すよりも未来に向けたメッセージを
JBpress 2015.4.28(火)筆坂秀世
 安倍首相は4月20日、BSフジの報道番組で、戦後50年の「村山談話」に書き込まれた「植民地支配と侵略」「心からのお詫び」などの文言を戦後70年談話に入れるかどうかについて、「同じことを入れるのであれば談話を出す必要はない」との考えを示した。
 村山談話は、「植民地支配と侵略」に対し、「痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明」するというものだった。これを受け継いだ戦後60年の際の小泉談話もまったく同じ文言が使われていた。
 戦後談話というのは、10年ごとにどうしても出さなければならないというものではない。それをあえて安倍首相が70年談話を出すというのだから、当然それは、前2回のものとは違うものを出そうということなのだろう。同じものなら、出す必要はまったくないと安倍首相が語るのは当然のことである。
■世界に向けて日本の姿を発信するものに
 70年談話についての有識者懇談会の座長代理である北岡伸一国際大学学が、あるシンポジウムで安倍首相に、「日本が侵略をしたと言ってほしい」と語ったことが大きな話題になっているが、北岡氏の発言で注目すべきは、この発言ではない。「謝罪が中心に来るかどうか」に論点を据えるメディアへの「違和感」の表明こそ、注目すべき点だと考える。
 あるテレビのニュース番組を見ていると“談話を出すわけですから、中国や韓国の人たちの心に届くものにしてほしいですね”という趣旨の発言をするコメンテーターがいた。70年談話を中国や韓国の人々に向けて出すものだと決めつけている発言に、それこそ大きな違和感を抱いた。
 戦後70年という節目に出す談話なのだから、単なる過去の反省にとどまるものであってはならない。日本が戦後70年間、どういう歩みをしてきたのか、しっかり示すことが大事である。
 敗戦と焦土の中から、ここまでの経済発展を遂げるには、国民の苦難を乗り越える英知と奮励努力があったこと。また日本人の本来の精神というのは、「和を以て貴しとなす」(何事をやるにも、みんなが仲良くやり、いさかいを起こさないという精神)にあること。さらには、21世紀のアジアと世界の発展と平和に日本がどう貢献していこうとしているのかなど、世界に向けて日本の姿を発信するものにしなければ意味がない。
■村山談話につながる国会決議に反対した共産党
 4月22日付「しんぶん赤旗」は、「『(村山談話の)基本的な考え方』を引き継ぐなら、戦後70年という節目で、談話の核心部分を再確認するのが当然です。『引き継ぐ』といいながら『書かない』と断言するのは大きな矛盾です」と批判している。勝手に「お詫び」を「核心部分」にして、「引き継ぐなら書け」というのだ。
 それにしても共産党は、村山談話に高い評価を与えているようだ。だが、この村山談話につながる国会決議がある。それが1995年6月9日に衆議院で採択された「歴史を教訓に平和への決意を新たにする決議」(終戦50年決議、不戦決議とも呼ばれる)である。これに共産党は反対しているのである。
 村山談話はこの決議も踏まえて、同年8月15日に出されたものである。共産党の党史『日本共産党の八十年』(日本共産党中央委員会発行)を見ても、この決議に反対したことは書かれているが、どういうわけか今では天まで持ち上げている村山談話について、一言も言及していない。当時は、まったく高い評価をしていなかったということである。
 それが今になって、村山談話にある「植民地支配」「侵略」「反省」「お詫び」が入らなければ、談話の意味がないというのである。
 なぜ態度を変えたのか。同党の最大の売りは、有効であったかどうかは別にして、とにもかくにも植民地支配や侵略戦争に反対してきたということにある。この歴史を光らせるためには、この文言が不可欠なのである。「植民地支配と侵略戦争に反対してきた唯一の党が日本共産党です」と宣伝しているからだ。
■慰安婦問題でも態度を豹変
 このような態度の豹変は、慰安婦問題でも同様である。産党は、今でこそ河野談話を天まで持ち上げているが、談話が出されたときには、評価するどころか、「旧日本軍の関与と『強制的な状況』を認めざるをえなくなったもの」だとしながらも、「ここには重大ないくつかの問題がある」と指摘して、次のように述べている。
「第一に、・・・『強制的な状況』をいうなら、いかなる権力機関によってどのような状況のなかでおこなわれたのか、いっさいの事実が明らかにされなければなりません。・・・官房長官談話はこの点でも不十分です。
 第二に、被害者や南朝鮮政府などから事実をつきつけられ、その一部を認めざるをえなくなっても、天皇政府・軍部による国家犯罪を執ように隠ぺいする政府の態度は基本的に変わっていない・・・」
 では現在はどうか。
 「歴史の偽造は許されない――『河野談話』と日本軍『慰安婦』問題の真実」(2014年3月15日付「しんぶん赤旗」)では、「日本共産党は、日本政府が、『河野談話』が明らかにした日本軍『慰安婦』制度の真実を正面から認めるとともに、歴史を改ざんする主張にたいしてきっぱりと反論することを強く求めます。さらに、『河野談話』が表明した『痛切な反省』と「心からのお詫び」にふさわしい行動――事実の徹底した解明、被害者にたいする公式謝罪、その誤りを償う補償、将来にわたって誤りを繰り返さないための歴史教育など――をとることを強く求めるものです」と主張している。
 談話が出た時には、「不十分だ」と騒いで非難して、この談話で決着することを妨害する。「河野談話」が利用できるとなると態度を豹変させて、できもしない過大な要求を突き付ける。例えば、これ以上の事実究明などおそらく不可能であろう。またさまざまな戦争犠牲者に個人補償をやれというのであれば、国家財政は破たんする。要するに、いつでも問題の解決を困難にする要求を突きつけるというのが、共産党のやり方なのである。
 豹変した理由はいっさい語らず、自分たちだけが正義面をする、こういう存在こそが、あらゆる問題の解決にもっとも有害な役割を果たしていると言わなければならない。
■「お詫び」談話は必要ない
 戦後、70年も経過して、日本の植民地支配や侵略を「お詫び」することが、本当に必要なのか。私には到底、理解できない。一体いつまで続けるつもりなのか。
 当時の世界は、植民地支配も、侵略戦争も、国際法上の犯罪ではなかった。アメリカも、イギリスも、フランスも、オランダも、植民地支配を行い、侵略戦争を行ってきた。このことを謝罪した国などない。それでも日本は、村山談話、小泉談話で謝罪をしてきた。中国とも、韓国とも国交の正常化を図ってきた。多額の経済援助も両国に対して行ってきた。東南アジアの国々には、戦後賠償を行った国もある。
 確かに、日本が植民地支配や侵略行為によって多大の苦難を朝鮮や中国に対して与えてきたことは事実である。しかし、日本が可能な限りの償いを行ってきたことも事実なのである。
 アメリカによる原爆投下や無差別爆撃は、明らかに当時の国際法に違反するものであった。だが敗戦国であるために、その責任追及をすることはできなかった。いまさらその責任を追及しようという人もいないだろう。そのアメリカに戦後復興で大きな援助を与えられた。そして今では同盟国になっている。これでよいではないか。
 中国では、戦後70年を記念して、「反ファシズム・抗日戦争勝利」の行事を大々的に行うそうである。日本人にとっては、決してうれしいことではない。そもそも中国に戦争で負けたわけではない。アメリカに負けたのだ。まあ、それはいいとして、この行事で反日をあおれば共産党独裁政権の正統性が保たれるというわけであろう。80年も、100年も、大いに祝ってくれればよい。中国の勝手だ。だが我々は、それに付き合う気はさらさらない。

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