抗 議 声 明
本日(2月1日)、持田孝さん(東京拘置所)、松原正彦さん(大阪拘置所)、名古圭志さん(福岡拘置所)への死刑が執行されたことに対し、強く抗議する。
鳩山邦夫法務大臣は、前回12月7日の3人への死刑執行から、わずか2ヶ月も経たないうちに就任以来2回目の執行を強行した。
就任時に鳩山法相は、死刑執行のあり方について見直す考えを示し、「勉強会」を持つなどしてきたと伝えられるが、それが、執行の責任を誰も負わない「自動的」な執行への道を切り開くものにすぎなかったことが今や明らかとなった。鳩山法相は自らが執行への「ベルトコンベア」をフル回転させているのだ。
昨年12月18日には国連総会において「死刑執行停止決議」が104ヵ国の賛成によって採択されたばかりである。死刑存置国に対して「死刑の廃止を視野に入れて、執行の停止を確立すること」を求めるこの歴史的な決議に見られる世界の流れに、日本は全く逆行している。決議に反対した54ヵ国の中でも実際に執行を行っているのはさらに少数である。この16年間にわたって死刑執行のない年を作らず、それどころか、死刑判決数、死刑確定者数、死刑執行数のすべてを急増させている日本は、もはや「死刑大国」と化しつつある。今こそ、なぜ世界の多くで死刑制度の廃止が求められてきたのかを、謙虚に受け止め、直ちに死刑執行の停止に踏み切るべきときである。
「情報公開」の波に押されるようにして、法務省は前回の執行から、執行された方の氏名を発表するようになり、それとともに「事件の概要」を公表しているが、それは死刑確定判決をなぞっただけのものであり、処刑された人たちの裁判にどのような問題点があったか、その身心の状態はどうであったか、等の、執行にあたってもっとも配慮されなければならない情報は隠蔽されている。
持田孝さんは一審では無期懲役判決だった人だ。松原正彦さんは再審請求が昨年10月に棄却されたばかりだった。名古圭志さんは控訴を取下げて死刑判決が確定してしまった人だ。死刑という極刑を求めての検察官控訴というものが果して許されるのか。死刑事件での再審の門が1986年の島田事件以来、全く閉ざされているのは、現在の再審システムに問題があるのではないか。昨年5月には、死刑事件についての「必要的上訴制度」の欠如の問題が国連拷問禁止委員会から日本政府に対して指摘されているところではないか。
法務省は、これらの問題をどう考えているのかを明らかにするとともに、なぜ、3名の死刑を執行しなければならなかったのか、一人一人について理由を明らかにすべきであるし、執行が本当に適正に行われたか否か、残酷に行われていないか、その手続のすべてについて事実を明らかにすべきである。
こうした問題点を全く無視して強行される死刑の執行は、すでに「ベルトコンベア」化されているといえる。この機械を止めよう。
死刑は、残虐な刑罰であり、民主主義の理念に真っ向から反するものである。死刑には犯罪抑止効果がないばかりか、かえって、社会の倫理観を荒廃させる。死刑に必ず冤罪があることは、免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件の再審無罪で証明されたところである。死刑は直ちに廃止されなければならない。
われわれは、日本政府および法務省並びに法務大臣に対し、今回の死刑執行に強く抗議するとともに、直ちに以下の施策を実施するよう求める。
1 死刑の執行を停止し、死刑廃止に向けて努力すること。
2 死刑に関する情報を公開すること。
3 死刑確定囚に対する処遇を抜本的に改善すること。
4 犯罪被害者に対する物心両面にわたる援助を拡充すること。
また、最高裁判所並びに全国の裁判所に対して直ちに死刑の濫用を止め、死刑判決を差し控えるよう強く求める。
さらに、昨年の「被収容者等処遇法」施行以降も、死刑確定囚の外部との交流はいまだに制限が厳しく、全く孤立の状態にいる死刑囚は数多い。各施設が「死刑に直面する者の権利」を保障することを求める。
そして根拠なき「体感不安」を煽るかのようなマスコミの事件報道について、裁判員制度の導入が予定されている今日であればなおさら、被疑者・被告人たちが予断によって裁かれることのないよう、配慮されることを求める。
2008年2月1日
死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90