郵便不正、「自立支援法成立のため」 逮捕の係長が供述
障害者団体向け郵便料金割引制度の悪用事件で、厚生労働省係長、上村勉容疑者(39)=虚偽有印公文書作成・同行使容疑で再逮捕=が、団体の証明書を偽造した動機について「当時、検討していた障害者自立支援法成立への調整のため、国会議員からの依頼に対処する必要があった」などと供述していることが15日、捜査関係者への取材で分かった。
捜査関係者によると、上村容疑者が証明書を偽造したとされる2004年6月ごろ、当時、直属の上司に当たる障害保健福祉部企画課長だった現雇用均等・児童家庭局長、村木厚子容疑者(53)=同容疑で逮捕=から「議員案件のため、正規の手続きを経ずに証明書を発行するよう指示を受けた」などと上村容疑者が供述していることも判明。
厚労省関係者によると、村木容疑者はこのころ、同法案の成立に向け、国会議員への調整などに追われていたという。 (NIKKEI NET 07:49)
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日経新聞 社説1 郵便不正を生んだ厚労省の罪の重さ(6/16)
障害者団体に適用される郵便料金割引制度悪用事件の捜査が重大な進展をみせている。この制度を使う際に必要な証明書の偽造にかかわったとして、大阪地検特捜部が5年前に担当課長を務めていた厚生労働省の現職局長を逮捕した。
逮捕された雇用均等・児童家庭局の村木厚子局長は容疑を全面否認しているとされるが、当時の部下や、偽の証明書を受けた「白山会」(旧「凜の会」)関係者の証言などを踏まえて特捜部は立件は可能と判断し、逮捕に踏み切ったとみられる。
同省の組織的関与をうかがわせる展開だが、現段階ではあまりにも謎が多い。幹部職員があからさまな公文書偽造にくみしたとすれば、背景にはいったい何があったのだろうか。一部では政治家の働きかけを指摘する声もある。検察当局による全容解明はもちろん、厚労省による徹底した内部調査を求めたい。
この事件は、障害者団体なら郵便料金が格安になる制度に活動実績もない白山会が着眼、そこに企業も群がって食い物にした構図が鮮明になっている。白山会の定期刊行物を装って広告代理店が大手家電量販店などのダイレクトメール(DM)を大量に発送し、当時の日本郵政公社の幹部らも不正を黙認していた。
一連の不正で支払いを免れた郵便料金は立件された分だけで約20億円に上り、全体では100億円に達するという。いわば官のずさんなチェック体制と相まって続けられてきた巨額詐欺というのが実態だろう。
そうした犯行に欠かせないのが厚労省発行の証明書だった。効力の強いこの書面によって制度悪用の条件が整ったのだから、逮捕された局長らの容疑は不正のお先棒担ぎどころではない。文字通り「お墨付き」を与える行為だったことになる。
省内では証明書の発行は「議員案件」として扱われていたとされる。また、白山会の代表は「厚労省への働きかけを国会議員に頼んだ」と話していたという。きわめて重大な疑惑であり、こうした点の解明なしに捜査の着地はありえないだろう。
障害者団体向け郵便料金割引制度は、台所事情の苦しい多くの団体の活動を支えるために設けられた福祉政策の一環だ。こともあろうに障害者福祉を推進すべき立場の厚労省幹部が、その悪用に深く関与していたという今回の容疑は同省への信頼をさらに突き崩すことになろう。
厚労省では汚職事件を含め職務に絡んだ不祥事が途切れなく起きている。今度こそ、その病根を断ち切らなければ組織の明日はない。
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〈来栖の独白〉怒り心頭に発す! 怒りに震える。