ウィニー逆転無罪 金子元助手=ユーザーは適切な使い方をしてほしい

2009-10-09 | 社会

大阪高裁が2009年10月8日に言い渡した控訴審判決は一転無罪となった。その判決要旨
 【ほう助の成否】
 (1)ソフトについて検討
 ウィニーはP2P技術を応用したファイル共有ソフトであり、利用者らは既存のセンターサーバーに依存することなく情報交換することができる。
 その匿名性機能は、通信の秘密を守る技術として必要にして重要な技術で、ダウンロード枠増加機能などもファイルの検索や転送の効率化を図り、ネットワークへの負荷を低減させる機能で、違法視されるべき技術ではない。
 したがってファイル共有機能は、匿名性と送受信の効率化などを図る技術の中核であり、著作権侵害を助長するような態様で設計されたものではなく、その技術は著作権侵害に特化したものではない。ウィニーは多様な情報交換の通信の秘密を保持しつつ、効率的に可能にする有用性があるとともに、著作権の侵害にも用い得るという価値中立のソフトである。
 (2)ほう助が成立するか
 ネット上のソフト提供で成立するほう助犯はこれまでにない新しい類型で、刑事罰を科するには慎重な検討を要する。
 原判決は、ウィニーは価値中立的な技術であると認定した上で、ホームページ上に公開し不特定多数の者が入手できるようにしたことが認められるとして、ほう助犯が成立するとした。
 しかし、2002年5月に公開されてから何度も改良を重ね、03年9月の本件に至るが、どの時点からどのバージョンの提供からほう助犯が成立するのか判然としない。
 利用状況を把握することも困難で、どの程度の割合の利用状況によってほう助犯の成立に至るかや、主観的意図がネット上において明らかにされることが必要かどうかの基準も判然としない。したがって原判決の基準は相当でない。
 被告は誰がウィニーをダウンロードしたか把握できず、その人が著作権法違反の行為をしようとしているかどうかも分からない。価値中立のソフトをネット上で提供することが正犯の実行行為を容易にさせるためにはソフトの提供者が違法行為をする人が出ることを認識しているだけでは足りず、それ以上にソフトを違法行為のみに使用させるように勧めて提供する場合にはほう助犯が成立する。
 被告はをネットで公開した際、著作権侵害をする者が出る可能性を認識し、「これらのソフトにより違法なファイルをやりとりしないようお願いします」と著作権侵害をしないよう注意喚起している。
 また、被告は02年10月14日には「コンテンツに課金可能なシステムに持ってゆく」などと著作権の課金システムについても発言しており、ウィニーを著作権侵害の用途のみに使用させるよう提供したとは認められない。
 被告は価値中立のソフトであるウィニーをネットで公開した際、著作権侵害をする者が出る可能性は認識していたが、著作権侵害のみに提供したとは認められず、ほう助犯の成立は認められない。
 【結論】
 被告にはほう助犯の成立が認められないのに一審判決がほう助犯の成立を認めたのは刑法62条の解釈適用を誤ったもので、検察官の所論は理由を欠き、いれることはできない。よって被告は無罪とする。【共同通信2009/10/08 12:52】
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「無罪主張悪あがき」NHK記者、ウィニー開発者に
 ファイル共有ソフト「Winny(ウィニー)」を開発し、著作権法違反に問われ、8日の大阪高裁判決で逆転無罪となった元東京大大学院助手に対し、NHKの記者が「無罪主張は悪あがき」などとした上でインタビューを要請する手紙を出していたことが明らかになった。
 NHKは同日、弁護団に「不適切な内容だった」と謝罪した。
 弁護団事務局長の壇俊光弁護士によると、手紙は1審公判中の2005年、当時、NHK京都放送局に勤務していた20代の記者から送られた。内容は、「弁護側が的外れな見解を繰り返している」と弁護方針を批判した上、「インタビューに応じて動機を正直に話せば、世間の納得は得られる」と求めていた。壇弁護士は6日付の自身のブログでこの経緯を明らかにし、「露骨な弁護妨害」と批判した。
 記者は、別の部署に異動しているため、現在の上司が弁護団に対して謝罪に訪れたという。
(2009年10月9日03時04分  読売新聞)
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NHK記者が公判中のウィニー開発者に手紙「無罪主張なら減刑ない」
産経ニュース2009.10.9 09:54
 ファイル共有ソフト「winny(ウィニー)」の開発をめぐる著作権法違反幇助(ほうじょ)罪に問われ、2審の大阪高裁で8日、無罪判決を受けた金子勇・元東大大学院助手(39)に対し、NHK京都放送局の司法担当だった20代の男性記者(現在は他部署に転出)が平成17年、1審・京都地裁での公判中にインタビューを申し込む際、「インタビューに出て本音をさらせば執行猶予がつくのは間違いない」などとする内容の手紙を送っていたことが同日、わかった。
 金子元助手の弁護人の壇俊光弁護士は「露骨な弁護妨害」と批判。NHKは事実関係を認め「取材活動として不適切だった」としている。
 壇弁護士によると、手紙は平成17年の京都地裁第8回目公判の後、金子元助手の自宅に届いた。将来の著作権のあり方についてNHKのインタビューに応じてほしいという取材依頼だったが、その中で「動機を正直に話せば、世間の納得は得られるはず。仮に有罪判決になってもインタビューに出て世間に本音をさらしたことで執行猶予がつくのは間違いありません」「逆に無罪を主張し続ける限り、減刑の余地はなく、実刑になる可能性も否定できません」などと記していた。
 壇弁護士は「この手紙で金子氏と私の信頼関係が揺らぐことはなかったが、同じことがほかの事件で起こったらどうなるか。被告は動揺すると思うし、こうした取材手法は一般的にはやめるべきだ」と批判。
 これに対し、NHK広報局は、記者がこうした手紙を送った事実を認め、「著作権などの問題について金子氏に直接取材するためだったが、弁護活動などに触れた部分は取材活動として不適切だった。弁護団にはNHKとしてすでにおわびした」としている。
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ウィニー開発者、逆転無罪 著作権違反ほう助認めず
中日新聞2009年10月8日 夕刊
 ファイル共有ソフト「ウィニー」を開発、インターネットで公開して映画やゲームなどの違法コピーを助けたとして著作権法違反ほう助の罪に問われた元東大助手金子勇被告(39)の控訴審判決で大阪高裁は8日、罰金150万円とした1審京都地裁の有罪判決を破棄し、逆転無罪を言い渡した。
 小倉正三裁判長は「著作権侵害を主な用途として勧めウィニーを提供したとは認められず、ソフトの公開はほう助に当たらない」との判断を示した。
 ファイル共有ソフトを使った著作権侵害をめぐり、開発者本人が刑事責任を問われた初のケース。金子被告は一貫して無罪を主張し「技術開発の現場を萎縮(いしゅく)させる」と1審判決を批判。高裁の判断が注目されていた。
 小倉裁判長は判決理由で、まず著作権侵害ほう助罪の成立について「提供したソフトの主な用途が著作権侵害だと容認した上で提供しなければほう助に当たらない」と判断した。
 さらに「ウィニーそのものは価値中立のソフト」と認めた上で「金子被告は公開時に著作権侵害をする人が出る可能性を認識、容認していたが、違法ファイル交換をしないよう注意喚起もしていた」と指摘。違法行為を積極的に勧めて提供したものではない、と認め、ほう助罪の成立を否定した。
 ウィニーは2002年に金子被告が公開。無料で、操作性に優れていることなどから人気を集め、現在でも1日当たり約20万台のパソコンで使われているとされる。
 金子被告はウィニーをホームページ上で公開し、03年9月に群馬県高崎市の男性ら2人=有罪判決確定=が映画などを違法にダウンロードできる状態にするのを助けたとして起訴された。
 06年12月の京都地裁判決は、「ウィニーが著作権侵害に広く利用されていると知りながら、公開を続けたのはほう助に当たる」と判断。検察、弁護側双方が控訴していた。
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中日新聞【社説】
ウィニー裁判 無罪判決は出たけれど
2009年10月9日
 ファイル共有ソフト「ウィニー」の開発者が逆転無罪となった。判決は開発者の創造性に一定の理解を示した。一方で違法コピーのはんらんは続いており、何らかの歯止めのルールが必要だ。
 元東大助手の金子勇被告が開発したウィニーは、サーバー(ネットワークの中心となるコンピューター)に依存しないで利用者が互いに情報を交換できる新しい技術を応用している。専門家によると、ウィニーはこの分野の新ソフトとして高く評価され、インターネット電話や動画配信などへの応用が期待できるという。被告を有罪とした京都地裁判決も応用可能で有意義なソフトと認めている。
 焦点は、金子被告がウィニーをホームページ上に公開したことをどう判断するかだった。多くの利用者が画像や音楽などの違法コピーに利用。一審は悪用を容易にしたと認定し、著作権法違反ほう助で有罪とした。
 しかし、大阪高裁は悪用する人間が出ることを認識しているだけではほう助に当たらず、悪用を勧めて提供する場合に限ると、ほう助の成立要件を厳格に判断した。一審の有罪判決には各界から「ソフト開発を萎縮(いしゅく)させる」などの批判があり、高裁が技術開発の自由に配慮したといえそうだ。
 だが、ウィニーによって何が起きているかをみれば、放置していい事態でないことも明らかだ。
 著作権団体の調べでは、ネット利用者のうち一割がファイル共有ソフトを利用。ウィニーで流通したファイルのうち48%が著作物で、そのうち97%が著作権者に無断で流出させたものだった。
 また、ウィニーを通じコンピューターウイルスに感染して起きる情報流出も深刻。昨年度は流出事件の37%を占め、神奈川県の県立高校の全生徒十一万人分の個人情報が漏れたケースもあった。
 著作権法は、著作物を無断でネットに流すことを禁止しているが、実際に摘発される例は少なく、年間三、四件のペースにとどまっている。無法状態がいつまでも放置されてはなるまい。
 ソフトの開発と公開に関してのルールづくりも検討したい。何よりも開発者自体が社会的責任を痛感してほしい。影響がはっきりするまで公開を限定するような慎重さが求められる。金子被告は「どう使うかは自由だが、ちゃんと使ってほしい」と述べている。利用者は著作権の重要性をいま一度理解すべきだ。

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