派遣法見直し=正社員化によるコスト増を警戒・逆に雇用機会が失われる・今が規制強化のタイミングなのか

2009-10-08 | 政治
労政審 製造業派遣禁止を議論 雇用とコスト バランス探る
FujiSankei business-i 2009/10/8
 労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の職業安定分科会が7日開かれ、新政権が掲げる製造業派遣の原則禁止など規制強化をめぐる議論がスタートした。厚労省は年内に労働者派遣法改正案をまとめる。社会問題化した非正規社員の雇用の安定化が狙い。ただ、経済界は正社員化によるコスト増を警戒しているほか、「多様な働き方が制限され、逆に雇用機会が失われる」との懸念も強い。禁止の例外などで弾力的な制度にできるかが焦点となりそうだ。
 長妻昭厚労相は同日、「派遣労働者の雇用環境に大きな変化が生じている」などとして、派遣の在り方について議論するよう同審議会に諮問した。
 今後は同分科会の労働力需給制度部会などでも議論し、年内にも結論を取りまとめ、来年の通常国会に労働者派遣法の改正案を提出する方針だ。
 民主、社民、国民新党は連立与党は、(1)製造業派遣の原則禁止(2)契約期間の短い「日雇い派遣」の禁止(3)派遣会社に登録して仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ「登録型派遣」の原則禁止-で合意している。
 焦点である生産ラインなど製造業への派遣は、小泉純一郎政権時代の構造改革の一環として、2004年の法改正で解禁された。しかし、昨秋以降の経済危機では、自動車や電機メーカーなどが相次いで、派遣を中心とした非正規社員を大幅に削減し、“派遣切り”として社会問題になった。新政権は、製造業派遣を構造改革による格差拡大の象徴と位置づけ、規制強化を打ち出した。
 民主党では、経済界などに配慮し、製造業派遣に禁止の例外となる「専門職」を設ける方針。具体的には、図面などの設計や特殊な製造技術を持つ労働者を想定している。
 ただ、この日の会合でも、経済界の代表から「雇用の悪化が製造業派遣の禁止に即つながるのか疑問を感じる」との意見が出るなど、反発は強い。
 実際、規制強化の“副作用”がすでに出始めている。自動車や電機各社では、景気の底打ちで生産は回復傾向にあるが、コスト増への懸念から採用拡大には慎重なままだ。
 稼働率上昇に対応した人員確保では、規制強化を念頭に派遣社員ではなく、直接雇用の期間従業員で対応しているが、採用増は限定的で、グループからの応援で対応する企業も目立つ。「規制強化で雇用が硬直化すると、景気回復局面でも採用増に波及しなくなる」(エコノミスト)との指摘は多い。
 人材派遣業界も、「専門職を設けても、登録派遣を禁止すれば、大量の雇用が失われる」(大手)と警告する。
 このため、経済界としては今後の議論で「専門職」の適用範囲をできるだけ広くするよう求めていく考えだ。
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派遣法見直し、審議始まる 使用者側、規制強化に猛反発
asahi.com 2009年10月8日20時0分
 労働者派遣法の抜本改正に向けた労使の議論が7日、厚生労働省の審議会で始まった。鳩山政権は、仕事がある時だけ雇用契約を結ぶ「登録型派遣」や製造業への派遣を原則禁止し、安定雇用への転換を目指す。厚労省は年内にも労使の合意を得たい考えだが、規制の強化に使用者側の反発は強い。
 派遣法の見直しでは、民主、社民、国民新党が9月9日、法律名を「派遣労働者保護法」に改めるとともに、日雇い派遣や登録型派遣、製造業派遣を原則として禁止することで合意し、連立政権の政策合意に盛り込んだ。厚労省の集計では、昨年10月から今年12月までに失職する非正社員23万9千人のうち、約6割にあたる14万2千人が派遣社員。不安定な働き方への批判の強まりを受け、3党は大幅な規制の強化を打ち出した。
 7日の審議会で、長妻昭厚労相は「派遣切りが多く発生し、社会問題化するなど雇用環境に大きな変化が生じた」と指摘し、派遣労働者の雇用の安定のために必要な事項の検討を求めた。今後は3党の合意内容を踏まえて議論が進む見通しだ。
 民主党はマニフェストで、派遣法の改正時期を明示していない。だが、連立パートナーの社民党などは早期の改正を求めており、厚労省は年内に審議会での合意を経た上で、来年の通常国会に改正案を提出することを目指す。
 ただ、労使の隔たりは大きい。労使は昨年9月、派遣法の改正は日雇い派遣の原則禁止にとどめ、登録型派遣の規制などは引き続き議論することで合意した経緯がある。麻生政権は昨年11月、日雇い派遣禁止を柱とする改正案を国会に提出したが、衆議院の解散で今年7月に廃案になった。雇用情勢の変化や政権交代があったとはいえ、使用者側には一足飛びに「禁止」に踏み込むこと自体に異論がある。
 企業経営への影響を懸念する声も強い。この日の審議で、使用者側からは「コスト増で国際競争力が失われれば、製造拠点の海外移転に拍車がかかる」「地方の製造業は自前での人集めが難しい。製造派遣が禁止されると人を雇えなくなる」といった意見が相次いだ。
 労使の裁定役である公益委員からも疑問の声が上がった。東京大学の岩村正彦教授は「いまが規制強化のタイミングなのか不安を持っている。製造業派遣を禁止すれば、企業は正社員を雇うようになるのかも見えない」と指摘。放送大学の宮本みち子教授も「中長期的にみると、製造業の派遣をどうするかという問題だけの議論でいいのか」と話し、有期雇用や請負など非正社員全体を見据えた議論の必要性を強調した。(林恒樹)

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