電気自動車がもたらすチャンスと挑戦

2009-06-29 | 社会
日経新聞 社説1 電気自動車がもたらすチャンスと挑戦(6/29)
 地球温暖化対策の切り札として、電気自動車が注目されている。三菱自動車が軽自動車をベースに開発した電気自動車「アイミーブ」を来月発売するほか、日産自動車も来年、商品化に踏み切り、2012年には米国でも量産を始める計画だ。
 世界に目を転じても、米国や中国の新興企業が次々に電気自動車市場に名乗りを上げている。
 電気自動車の最大の魅力は、二酸化炭素(CO2)排出量の少なさだ。走行時の排出はゼロ。日本エネルギー経済研究所の試算によると、発電の過程で出るCO2を含めても、1キロメートル走行当たりのCO2排出量は57グラムにとどまる。ガソリン車の176グラムやハイブリッド車の94グラムに比べて格段に低い水準だ。
 クルマの脱ガソリン化が進めば、日本経済の石油依存度は低下し、エネルギー安全保障上の効果も期待できる。石油が再び高騰した場合の打撃も小さくてすむ。
 ただ本格的な普及には課題も多い。1つの障壁は価格だ。三菱のアイミーブは補助金を利用した実質価格で約320万円する。ベースになったガソリン車の「アイ」は100万円台前半であり、かなり割高だ。
 もう1つは1回の充電で走れる連続走行距離。ガソリン車は1度満タンにすれば、500キロメートル前後から1000キロメートル近く走るが、アイミーブは160キロにとどまる。少し遠くまでドライブするには不安な数字だ。
 こうした課題を克服し、ガソリン車やハイブリッド車と正面から競争できるようになるには、電池の技術革新が欠かせない。
 コストの引き下げには、電池の量産技術の確立がカギを握る。走行距離を伸ばすためには、現行のリチウムイオン電池を上回るエネルギー密度の高い新型電池の開発が課題だろう。高密度電池にありがちな異常発熱などのトラブルを抑え、安全性を確保することも大切だ。
 電池の進化は一朝一夕には進まない。自動車会社や電池メーカーに加えて、大学や政府傘下の研究所を含めた官民の息の長い取り組みによって、電池の技術革新で世界をリードする必要がある。
 電気自動車の台頭は、自動車産業の競争の構図を一変するかもしれない。エンジンの生産には巨額の投資を要する鋳鍛造設備と熟練技術が必要だが、電気自動車は電池さえ調達できれば比較的簡単につくれる。
 自動車市場の参入障壁は低くなり、新たなライバルの登場は必至。「世界最強」とされた日本の自動車産業にとっても、大きな挑戦である。
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〈来栖の独白〉我が家では今週、ホンダのインサイトを購入する。インサイトは40リッターで800キロ走る。満タンにして出発すれば、郷里まで充分に往復可能だ。

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