工藤会トップの死刑判決 国には担当裁判官を守る義務がある【「表と裏」の法律知識】
2021/8/29(日) 9:06配信 日刊ゲンダイDIGITAL
【「表と裏」の法律知識】#98
特定危険指定暴力団・工藤会(北九州市)の野村悟総裁への死刑判決、田上不美夫会長への無期懲役判決が8月24日に福岡地裁で言い渡されました。
この判決の言い渡し直後に、野村被告人が「あんた、生涯このこと後悔するよ」、さらに田上被告人が「東京の裁判官になってよかったね」と発言したとのことです。この発言は担当裁判官の今後の生活の平穏を脅かしかねない非常に恐ろしいものだと思います。
なぜなら、工藤会が「神」のような存在とあがめる野村被告人らの意向をくみ、忖度し、重大犯罪を犯す武闘派集団といわれているからです。
今回の判決では、両被告人らの組員に対する明確な指示がなくとも、黙示の指示や意思疎通があったとされ、死刑判決に至ったのだと思います。
しかもこの裁判が始まった後に、工藤会系組長が、裁判の証人を脅迫したとして逮捕される事件も起きています。両被告人と工藤会組員とは、直接面会して話すことができない状況にもかかわらず、このような事件が発生したことからも、被告人らの明確な指示がなくとも、組員らが、被告人らの意思をくんで犯罪に至る組織であることを裏付けるのではないでしょうか。
このようなことを前提にすれば、野村被告人・田上被告人が明確な指示を出していなくても、2人の意思をくみ、忖度し、重大犯罪を犯すのが工藤会なのでしょう。
そんな組織のトップが、裁判官らに対して、「後悔するよ」「東京の裁判官になってよかったね」という発言をしたわけです。確かに、この発言は、事実認定を誤り、1人の人間を死刑にしたことを後悔するよ、という趣旨にも受け取られます。しかし、この発言を、「担当裁判長は東京に異動した。後悔させろ」という趣旨に忖度・曲解した組員らが蛮行に及ぶ可能性もゼロではないでしょう。
裁判官はその職責を全うし、今回の判決を下したわけですから、間違っても生命、身体や私生活の平穏が害されることはあってはなりません。警察組織など国全体に、裁判官を守る措置を講じてもらいたいと思います。
(髙橋裕樹/弁護士)
◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です *強調(=太字)は来栖
* 記事には「特定危険指定暴力団工藤会トップの野村悟被告らの判決公判に臨む福岡地裁の足立勉裁判長(後列中央)ら(C)共同通信社」の画像がありましたが、省略しました。(=来栖)
工藤会総裁・野村悟被告に死刑判決 法廷で威圧された裁判長の身は大丈夫か
2021/8/29(日) 16:05配信 NEWSポストセブン
港湾事業の利権をめぐり元漁協組合長が殺害されるなど市民が襲撃された4事件について、福岡地裁は北九州市の指定暴力団工藤会総裁の野村悟被告の関与を認め、死刑判決を下した。指定暴力団のトップに死刑判決が下されるのは初めてのことで、暴力団社会にも動揺が走っている。
『サカナとヤクザ』などの著書があるフリーライターの鈴木智彦氏は言う。
「一般市民を容赦なく襲撃する工藤会に対しては、他の暴力団からも『やり過ぎだ』との声が上がるほどだったが、実行犯への指示が認められて死刑判決が出たことに、他の暴力団トップも衝撃を受けているはず。市民に暴力を振るうことにはどの暴力団も今後は慎重になるだろうし、より犯罪が表面化しないよう地下に潜る可能性がある」
判決後、野村被告は足立勉裁判長に向かって「全部推認、推認。こんな裁判あるんか。あんた、生涯、このこと後悔するよ」と言い放ち、ナンバー2(会長)で無期懲役を言い渡された田上不美夫被告は「ひどいな、あんた、足立さん」「東京の裁判官になって良かったね」と名指しで威圧。
裁判長は毅然とした態度で2度、「退廷してください」と求めたが、報復の危険性は明らかだ。
「裁判になっている襲撃事件の一つは、工藤会を捜査していた福岡県警の元マル暴刑事が狙われたものだった。警察が相手でも容赦なく暴力行為をしてきた工藤会だけに、裁判官の身の安全を最優先する必要がある」(同前)
過去には「警察が裁判官を警護したケースもある」(警察関係者)という。司法が暴力に脅されることがあってはならない。
※週刊ポスト2021年9月10日号
◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です
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*死刑判決で裁判長に「後悔するぞ」 工藤会トップ「野村悟被告」の素顔と意外な評判 2021/8/28 デイリー新潮