「雨のことば」霖雨 雨濯 小糠雨 驟雨 片時雨 翠雨 篠突く雨 簷雨・・・

2020-06-27 | 本/演劇…など

『週刊現代』2020.6.13・20日号

「雨のことば」辞典

霖雨(りんう)
 何日も降りつづく長雨のことをいう。
 「霖霪(りんいん)」「雨霖」とも。
 春の長雨が「春霖雨」、秋の長雨が「秋霖雨」。「霖」は、3日以上降り続く雨のこと。

雨濯(うたく)
 

 梅雨どきの大雨。
 また、雨が強く降り注ぐこと。
 梅雨どきは日本も中国も長雨の降る季節で、その雨が、雨濯。
 また濯枝雨(たくしう)は木の枝を濯(あら)うようにして降る大雨。

小糠雨(こぬかあめ)
 細かい糠のように降りかかる雨。煙るように、空中をただようように静かに降る雨。
  大原や雉子(きじ)なくあとの小糠雨  巌谷小波(いわやさざなみ)

驟雨(しゅうう)
 夏のにわか雨。夕立と同義だが、夕立が庶民的であるのに対して、驟雨には文語的な語感がある。
 暑い昼下がりにざあっと降って あとに涼を残していくので、人々に喜ばれる。
  短夜(みじかよ)の雲の帯より驟雨かな  野沢節子

片時雨(かたしぐれ)
 片方の空からは時雨が降り、他方では日が射しているような状態。
  片しぐれ杉葉かけたる軒暗し  泉鏡花

翠雨(すいう)
 青葉をぬらして降る雨。「緑雨」「若葉雨」とも。
 春の若葉は日ごとに緑が濃くなる。その葉をぬらす雨が「酔雨」。
 雨に洗われた葉には、すがすがしい輝きがもどる。

篠突く雨(しのつくあめ)
 篠竹の束を突くように、強く激しい雨。土砂降りの雨。
 「篠衝雨」とも書く。篠竹は、細い竹あるいは笹のこと。
  スカールに篠つくとなりにけり  堀柿堂

簷雨(えんう)
 軒端(のきば)にしたたる雨。「檐(えん)雨」とも書く。「簷」「檐」は、のき、ひさし。

銀竹(ぎんちく)
 光線を浴び、光り輝いて降る雨。
 強い雨脚に雲間からの光が当たり 輝いているようすが、まるで銀色の竹のようだというのである。
 また大雨を形容することば。

玉水(たまみず)
 家の軒や木の枝葉から雨滴がしたたり落ちること。 また、その雫。

牛脊雨(ぎゅうせきう)
 夏の雨のひとつ。
 夏の雨の代表的なものに夕立がある。夕立は積雲や積乱雲から降る。積乱雲などは、そのできる範囲が限定されるため、雨域と晴域がはっきりと分かれる特徴を持つ。
 そのため牛の背を分けて降るようなことが生じる。
 牛の背の片側には降って、もう一方の側は濡れていないという状況になる。
 そのような状況を牛脊雨といった。沖縄県宮古島に
「夏の雨は牛の片方には降らない」と伝わる。

催花雨(さいかう)
 菜の花の盛りのころ、しとしとと降る春雨。菜種梅雨(なたねづゆ)と同意。
 「催花」とは花が咲くのを促し、せきたてること。
 「催花」が「菜花」に通じるところから「菜花雨」と表記することもある。

秧針の雨(おうしんのあめ)
 稲の苗に降りかかる雨。
 「秧針」は稲の早苗のこと。田植えのころに降る雨をいい、梅雨を指す。

秋黴雨(あきついり)
 梅雨どきのような秋の長雨。「秋入梅」とも書く。
 秋は爽やかな季節だが、長雨が降る時季でもある。
   秋黴雨まろべば机のうら寒し  草村素子

寒の雨(かんのあめ)
 寒の時期に降る雨。1年で最も寒いときに降る雨。寒のころは気温の低下も激しく、降り出した雨が雪に変わることが多い。
   うつほどに藁(わら)の匂ふや寒の雨  金尾梅の門

狐雨(きつねあめ)
 日が照っている空から降る小雨。
 「天気雨」「狐の嫁入り」と同意。狐は人をだますという言い伝えから出たことばとされる。
   小米花(こごめばな)濡らしてゆくや狐雨  川瀬一貫

霽雨(せいう)
 雨が上がって晴れること。
 「霽」は、晴れる、の意。

出典
 倉島厚・原田稔 編著
『雨のことば辞典』(講談社学術文庫)

 ◎上記事は[『週刊現代』2020.6.13・20日号]からの書き写し(=来栖)


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