「9・11」は終わった 米大統領、防衛費削減へ大なた

2009-04-07 | 国際
Bloomberg 2009/4/7
 オバマ米大統領が、ブッシュ前政権時代に膨れあがった防衛費に大なたを振るう。イラク戦争やテロとの戦いで潤っていた欧米防衛産業への打撃は避けられず、激しい巻き返しの動きが予想されている。
 ≪次世代兵器に危機≫
 米防衛大手ロッキード・マーチンが生産する最新鋭ステルス戦闘機F22や同業ボーイングが開発に取り組んでいる弾道ミサイルを航空機に装備したレーザーで撃ち落とす次世代の戦闘システムが、存続の危機に立たされている。ゲーツ国防長官が米東部時間6日午後(日本時間7日早朝)にワシントンで防衛予算削減の詳細を発表する。
 オバマ大統領は2月に国防総省に対し「冷戦時代のような兵器支出を行わずに済むような防衛予算の改革」を指示。これにより、兵器購入計画の再検討が行われている。見直しの対象には、ロッキードから購入予定の大統領専用ヘリコプターや、ゼネラル・ダイナミクスが開発中の新型戦闘艦も含まれている。
 ゲーツ長官も1月、「2001年9月11日の米中枢同時テロのときに開かれた『防衛費の蛇口』が閉められることになる」との見通しを明らかにしていた。
 国防総省はオバマ大統領の指示を受け、2010会計年度(09年10月~10年9月)予算から217億ドル(約2兆1873億円)規模の防衛予算の削減を進めている。
 国防総省の広報担当者によると長官の考える見直しは「周辺部分に手を加えるような」小規模なものではなく、装備調達の仕組みや戦闘部隊支援に直接かかわる「抜本的な変化」という。
 米国ではブッシュ時代の8年間に防衛関連支出が72%増加した。これは、開発費増加やアフガニスタンとイラクの2カ所で作戦を行っていることが主因だ。防衛関連のS&P航空宇宙・防衛株指数は08年9月までに82%上昇。ロッキード株は3倍に値上がりした。
 調査会社ブロードポイント・アムテックのピーター・アーメント氏は「今やすべてが変わった。通常、予算案は2月上旬に大統領の要求を反映して編成され、その後、議会の審査を経るが、今回は前例のないやり方だ」と指摘した。
 ≪雇用に大きな影響≫
 ゲーツ長官はF22後継の多目的戦闘攻撃機、F35が本格生産に入るのを待ちながらF22を購入し続けるかどうかといった決断を下さなくてはならない。現在、情報漏れやロビー活動を抑えるため、秘密裏に兵器購入計画の見直しを行っている。
 上下両院予算委員会の仕事も手掛けたアナリストのスタン・コレンダー氏は「防衛産業のロビイスト全員が警戒態勢をとっている。防衛予算を大きく変更するのは大統領にとって危険。防衛計画はすべての分野に影響を及ぼしている」と指摘した。
 レキシントン・インスティテュートの防衛担当アナリスト、ローレン・トンプソン氏も「大幅な予算削減は、どんな内容であれ、大統領に悪い影響を与えるだろう。予算削減に注目しているのは、削減によって仕事を失う人だ」と話した。
 ブロードポイントのアーメント氏は、兵器調達における開発費用増加の多くは、軍が作業が始まった後で仕様変更を要求することが主因と指摘。一方、金融サービス会社コリンズ・スチュワートのアナリスト、ジェームズ・マキリー氏は防衛各社が開発費を安く見積もったり、兵器を大げさに売り込んだりすることが開発費膨張につながっているとの見方を示した。
 ロッキードによれば、F22の生産中止によって、全米44州の1000社、9万5000人の雇用に影響が出る。ボーイングによれば次期戦闘システムの開発中止で43州の約900社、9万1000人分の雇用が影響を受けるという。(Gopal Ratnam、Edmond Lococo)

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