『共謀罪』不安報道考 「戦争法案」といわれた安保法制や「平成の治安維持法」といわれた特定秘密保護法の時の大騒ぎに酷似

2017-02-06 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

  

産経ニュース 2017.2.4 15:00更新
【「共謀罪」不安報道考】「話し合っただけで罪に問われる。それが共謀罪の本質だ」との社説を掲載した新聞に見解を聞いてみた!
 居酒屋で同僚に「上司を殴る」などと相談しただけで処罰される-。いわゆる「共謀罪」をめぐってはこんな誤解がまことしやかに語られてきた。政府は「テロ等準備罪」と名称を改め、今国会で提出を目指している。テロ組織に対応する国際条約の締結に欠かせないためだが、一部メディアは相も変わらず、戦前の治安維持法を引き合いに「内心の自由を脅かす」といった批判を繰り返す。適用対象を暴力団など「組織的犯罪集団」に限定して明文化。もはや誤解の余地はないにもかかわらず、である。(社会部 大竹直樹、今仲信博)
■パレルモ条約
 「このままパレルモ条約を締結できなければ、日本は国際社会で取り残されてしまう。条約に入るメリットは大きいのだが…」。ある法務省幹部の弁だ。
 パレルモ条約-。テロや組織犯罪に対応するため、2000年11月の国連総会で採択された「国際組織犯罪防止条約」のことだ。翌12月に署名会議が開かれたイタリア・シチリア島の都市名から、パレルモ条約という通称でも呼ばれる。
 この条約の批准の条件。それが「共謀罪」など国内担保法の整備だった。すでに北朝鮮を含む187の国・地域が締結。各国が協力し、犯罪収益のマネーロンダリング(資金洗浄)といった組織犯罪と対峙(たいじ)する態勢を構築する中、日本は先進7カ国(G7)で唯一、条約締結に至っていない。国連加盟国ではイランやソマリア、南スーダン、コンゴ共和国なども同様だ。
 「条約を締結できなければ、2020年東京五輪・パラリンピックを開催できないと言っても過言ではない」。安倍晋三首相は1月23日、衆院本会議の代表質問で、こう強調した。
 犯罪のグローバル化が進み、国際社会との緊密な連携は急務のはずだが、未締結のままでは、国際社会がテロの事前情報を得ても日本側が受け取ることさえままならない。
 「共謀罪」の創設を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案は、捜査当局の拡大解釈による人権侵害や不当逮捕につながりかねないとして野党が反発し、これまで3回廃案となっている。
 「条約に批准してようやく(テロ対策の)スタートラインに着く」(法務省幹部)が、日本はまだ、そのスタートラインにすら着いていないのが現状だ。
■条約のメリット
 法務省関係者は「パレルモ条約に加盟すれば、捜査共助や犯罪人引き渡しの条約を結んでいない国に対しても捜査協力を依頼できるようになる」と説明する。
 捜査共助は国同士が犯罪捜査を協力し合う制度だ。「刑事共助条約」を締結した相手国であれば、法務省を通じて現地の捜査当局に捜査協力を依頼できる。
 具体的には、容疑者の人定や犯罪に利用された金融機関の口座照会、関係者の所在確認を依頼することも可能になる。例えば、平成23年に発覚したオリンパスの損失隠し事件では、東京地検特捜部が刑事共助条約に基づき、米司法省に捜査共助を要請している。
 ただ、日本が刑事共助条約を締結しているのは米国、韓国、中国、香港、EUとロシアのみ。それ以外の国であっても、外務省を通じた外交ルートを利用して協力を依頼することは可能だが、必ずしも協力が得られるとはかぎらない。
 相手国に逃走している容疑者の引き渡しを取り決めた「犯罪人引き渡し条約」に至っては、日本は米国、韓国の2カ国としか結んでいない。そうした中、「パレルモ条約に入れば、外交ルートを経由せず相手国の捜査機関と直接、迅速なやり取りができる」(法務省幹部)という。
■「不安あおる」報道
 《話し合っただけで罪に問われる-。それが共謀罪の本質だ》
 東京新聞1月14日付5面に掲載された社説「共謀罪 内心の自由を脅かす」はこんな文言で始まり、《合意という「心の中」を処罰する共謀罪の本質は極めて危険だ》と指摘している。
 これに対し、ある法務省幹部は「不安をあおる間違った解釈だ」といらだちを隠さない。
 《普通の会社員が処罰対象になる可能性があります》
 《上場企業の役員らが、業績不振による株価下落を防ぐため、利益を上乗せした有価証券報告書を作成することに合意し、部下に虚偽の報告書作成を指示したとします。その後、「やっぱりやめよう」と指示を撤回したとしても、同法(金融商品取引法)の有価証券報告書虚偽記載の共謀罪で処罰される恐れがあります》
 東京新聞1月10日付3面の「新共謀罪を考える Q&A 経済犯罪も処罰の対象」には、こんな記述もあった。
 法務省幹部は「一般市民や一般企業は犯罪成立の要件を満たさない」と明確に否定するが、産経新聞の取材に東京新聞の編集局、論説室は「紙面に掲載している通りです」としている。
■厳しい要件
 政府資料などによれば、適用対象はテロ組織や暴力団、薬物密売組織、振り込め詐欺集団などを想定した「組織的犯罪集団」に限定すると明記されている。重大犯罪の計画だけでなく、凶器の購入資金や化学物質の調達など具体的な「準備行為」を行った場合に限定しているのだ。
 これらの要件を満たすのは、例えばテロ組織構成員らがテロを計画し、化学物質を調達した場合。あるいは暴力団組員らが対立組織の幹部を射殺することを計画し、拳銃購入のための資金を用意した-といったケース。テロ等準備罪には次に挙げる3つの厳しい要件を規定しているためだ。
 (1)「重大な犯罪」の実行を目的とした組織的犯罪集団によるもの
 (2)具体的・限定的な計画(合意)の存在
 (3)重大な犯罪を実行するための準備行為
 日本ではこれまで「居酒屋で『上司を殴る』と相談しただけで処罰される」といった誤解がまかり通ってきた。野党は今も、「不安に思う国民が多い」(民進党・蓮舫代表)、「基本的人権を侵害する悪法だ」(共産党・小池晃書記局長)などと反発しているが、「実際に適用される局面は非常に狭い」(検察幹部)のが実情だろう。
■「政権へのレッテル貼り」
 東京新聞の人気コーナー「こちら特報部」(1月19日付)には、《共謀罪「一般人は無関係」と言うが…治安維持法も同じ論法》という見出しが躍った。
 戦前の治安維持法を引き合いに出すこうした記事について、麗澤大の八木秀次教授(憲法学)は「『戦争法案』といわれた安保法制や、『平成の治安維持法』といわれた特定秘密保護法のときの大騒ぎと似ている。毎回、『オオカミが来るぞ』と騒いでいる」と指摘する。
 八木教授は「テロ等準備罪はテロ組織を取り締まるもので、左翼を取り締まるものではない。構成要件を確認せず、とにかく安倍政権に対してレッテルを貼りたいという気持ちが前面に出ている」と手厳しい。
 その上で、「日本国内にも(パレルモ)条約の対象となるような組織はあり、このまま法整備が進まなければ国際的な非難を浴びることになる」と話す。
 テロ等準備罪の対象犯罪は、当初の676から大幅に削減し、300以下とする方向で調整されている。
 外務省側は条約締結が困難になる可能性があるとして絞り込みに慎重姿勢を示し、過失犯など50罪以上を除外する案も検討された。だが、少数の削減では公明党などの納得を得るのは困難とみられ、法務省側は300以下まで削減しても条約締結は可能とみている。法務、外務省などで調整し、今国会に提出する方針だ。
 テロの脅威が増す中、3年後には2020年東京五輪・パラリンピックを控えている。条約締結に向けた法整備に、もはや一刻の猶予も許されない。

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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