改変の時 「BS日本 こころの歌」〈来栖の独白2018.4.3〉 山本周五郎著「ながい坂」

2018-04-03 | 日録

〈来栖の独白2018.4.3 Tue〉
 春。様々なものが改変の時期ということだろう。
 本日、昨夜録画しておいた筈のビデオ「フォレスタ BS日本こころの歌」を見ようとしたところ、録画欄に見も知らぬ番組名が。「恋するクラシック」とか。番組一覧を見渡しても、ない。「フォレスタ」が、ない。月曜21時からのBS日テレ[日本こころの歌]。いつもリアルタイムでは見ず、録画録音で。
 仕方なく「恋するクラシック」暫く見たが、お喋りも多く、とても堪えられるような番組ではない。消去した。
 そういえば、毎日曜日のNHKラジオ「音楽の泉」も、一昨日は違う放送だった。
 そうかぁ、4月だもの、TVだって、ラジオだって、変化するんだな。がっかり。特に、皆川先生の「音楽の泉」終了は、堪える。
 私は、「育ち」の関係(原因)で、「先生」という言葉が大嫌いで、使わないのだが(それ以上に「教え子」という言葉が、嫌い)、皆川達夫さんだけは、「先生」と呼びたい。大学の恩師であると共に、類い希な品の良さ。こういう方を、世は「紳士」と呼ぶ。私は「先生」と呼ぶ。
 フォレスタが聴けなくてがっかりした私は、録画しておいたはずと思いだして、ビデオ「おくりびと」を見た。何年も前に見て、感動したので、先日BSNHKの放送を録画しておいたのだった。
 「おくりびと」、心に響く映画。
 さっき、ふと思って弊ブログ「ブックマーク」をクリックすると、皆川先生の「音楽の泉」は存続していた。あ、そうか、4月1日は、特別番組だったのか。よかった。来週は、聴ける。
 更に、検索すると、「毎週月曜 19:00~19:54 放送 BS日本 こころの歌」、あるではないか。時刻が21時から、19時に移行したのだな。やれやれ。
 変化の季節。

〈追記〉
 本日、散歩に行く前だった。山本周五郎著「ながい坂」を読了。少しずつ、上下巻を楽しみに読んだ。三浦主水正の人生。ドラマとしても十分起伏があり、読ませるのだが、長編に似合わず、心の裡をしっかり書いている。頭の中(思考)も。

  

 不意に、「こんな小説があれば、私は生きてゆける。こんな小説世界があれば、私は生きていける」と思い、泣いた。
 私は子どもの頃から小説を読んで過ごした。私の両親は、ともに公立学校の教員だったが、父は私が生まれたときには既に結核を患って病臥の身であった。母は仕事で殆ど留守であった。学校から帰って一人の時間を、私は新聞小説を読んだり、書棚の母の本や、借りた本を読んだり、ラジオドラマ(「赤胴鈴の助」など)を聴いたりして過ごした。早熟だったと思う。小学生で「大地」や「風とともに去りぬ」などを読んでいた。
 大学の頃だったか、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」他を寝食を忘れて読んだ。生きてゆける、と思った。こんな小説がある、生きてゆける、と。
 本日、久しぶりに、山本周五郎作品(「ながい坂」は絶筆)に、似た感情を抱いた。
 全体的に重厚な、完成度の極めて高い作品だが、下巻、206ページに以下のようなヵ所がある。

 とすれば、おまえは苦しまずに死んだのだろう。そのほうがよかったのだ、小太郎、と主水正は心の中で呼びかけた。この世には、人間が苦労して生きる値打ちなんぞありはしない。権力の争奪や、悪徳や殺しあい、強欲や吝嗇や、病苦、貧困など、反吐の出るようないやなことばかりだ。そんなことを知らずに死んだおまえは、本当は仕合せだったんだよ、小太郎。
 筍笠を打つ雨の音と、早朝の空の、まだ明けきっていないような、少しもあたたかみのない非情な光とが、主水正の感情をいっそう暗い、絶望的なほうへと押しやるようであった。
「宗厳寺の和尚の気持がいまこそわかる」と彼は声に出して呟いた、「諸国を遍歴し、八宗の奥義をまなび取って帰ると、一生なにもせず、酒に酔っては寝ころんでくらした、和尚にはわかっていたんだ、人間のすることのむなしさも、生きるということのはかなさも」
 主水正はうなだれた。すると筍笠のふちに溜まっていた雨水が、しゃがんでいる彼の、眼の前へこぼれ落ちた。

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2 コメント

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有難うございます! (としちゃん)
2018-04-03 17:00:51
フォレスタの番組は、両親が大好きだったので、帰省中には 一緒にみていましたが
「恋するクラシック」は 知らなくて
どんな番組かと調べたら
第2回のゲストピアニストが 金子三勇士さんなので 録画予約しました。
田舎の小さいホールで 楽しく曲の解説をしながら 演奏してくれて、気さくな人だなあと。
ラ・カンパネラは ハンガリーでは 殆ど弾く人が居ないとか。
ガチャガチャした番組らしいので 元気な時に見ますね。(^_^)
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としちゃん コメントありがとう♪ (ゆうこ)
2018-04-03 22:24:05
 少しずつ読んでいたのに、山本周五郎さんの「ながい坂」読み終わってしまったので、「追記」を書きました。としちゃんからのコメントの後で、ごめんなさい。
>ガチャガチャした番組らしいので 元気な時に見ますね。(^_^)
 やはり音楽の番組が好いし、クラシックが楽しいです。お喋りの少ないほうがいいけど、それじゃぁ、TV局は、やっていけないのかも。
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