日米同盟の強化と日米安保堅持の必要性を国民に説明する努力

2010-06-24 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

日米同盟の強化に努めよ
日本経済新聞 社説 2010/06/24Sat.
 1960年に当時の岸信介首相とアイゼンハワー米大統領によって署名、改定された日米安全保障条約は23日、発効してから50年を迎えた。
 改定によって、米国による日本の防衛義務が初めて明確に定められた。それから半世紀がすぎ、日本を取りまく情勢は様変わりした。
 北朝鮮は核兵器を開発し、中国の軍拡が加速している。テロの危険も絶えない。日本はこうした脅威に対処していくためにも同盟を強める努力を続けなければならない。
 具体的に何をすべきか。まず必要なのは、日米同盟を国民がみんなで支えていく体制を整えることだ。
 現在、在日米軍基地は面積の7割以上が沖縄県内に集中している。菅直人首相は23日の沖縄訪問で、基地負担の軽減を約束した。そのためにも米軍普天間基地の移設問題を早く解決し、約8千人の米海兵隊員のグアム移転を実現すべきだ。
 沖縄は紛争の火種がくすぶる朝鮮半島や台湾海峡に近い。同県に多くの在日米軍が駐留するのは戦略上、やむを得ない面がある。
 その一方で、日本全体が同盟の恩恵を受けている現実に目をつむるわけにはいかない。米側は沖縄からの訓練の一部移転などには応じる姿勢をにじませている。他の自治体は積極的に受け入れ、沖縄の負担を分かち合う必要がある。
 しかし、それだけでは十分ではない。同盟を強化する目的は何か。首相はカナダで予定されるオバマ米大統領との会談で、まずこの点をしっかり確認してほしい。
 50年前に日米安保条約が改定された当時は、米ソ冷戦のまっただ中だった。89年にベルリンの壁が崩れ、91年にはソ連が消滅し、冷戦は西側の勝利で終わった。
 それでも、在日米軍が必要なのはアジアになお安保上の火種がくすぶるからだ。緊張する朝鮮半島への対応が当面の課題だが、長期的には、軍事力の増強を伴う中国の台頭が大きな変数になる。
 菅政権はこうした情勢を踏まえ、日米安保体制をなぜ堅持しなければならないのか、国民に分かりやすく、何度でも説明してほしい。政治の指導者がその努力を怠れば、同盟への世論の支持は揺らぎかねない。
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発信箱:自分の頭で考える=滝野隆浩(社会部)
 修学旅行で沖縄を訪れる高校生が多いという。地域別の行き先では28.5%でトップ、見学先も人気ベスト8のうち6カ所が首里城公園など沖縄県内だ(日本修学旅行協会調べ、08年度)。昨秋来の鳩山由紀夫前首相の“迷走”もあって、「事前学習で普天間飛行場移設問題を話してほしい」と高校から出張授業の依頼をよく受ける。
 先日行ってきた聖学院高校(東京都北区)は20年前から、沖縄平和学習を実施してきたというから頭が下がる。専門家とは言えない私は、琉球処分や戦前・戦後の島の歴史、日米安保条約や抑止力の話などを自分なりに勉強し、分かりやすく話そうと試みた。約200人の無口な高2男子たちに、わずか1時間で何が伝わるのだろう。最後は「沖縄で戦争体験を聞きながら、自分の頭で考えて」ともっともらしく締めくくる。汗でびっしょりになった。
 そのあと、10人が残って座談会に。うち何人かは、春の連休を利用して「下見」にも行ったのだという。みんな真剣でまじめだ。「ぶっちゃけ言いますけど……」。ある生徒が訴えてきた。「僕は広島にも行きましたけど、原爆を落としたアメリカが許せないという気持ちが強くなりました。だからアメリカに頼らずに、自分の国は自分で守るってのが正しいと思います!」
 荒っぽい訴えではある。嫌米感情が自主防衛の過剰強化、ややもすれば核武装論にまでつながる恐れがあるし、また近隣諸国のまなざしも心配だ。ただ、若者は沖縄や広島に赴き自分で話を聞き、悩み、真剣に考えたのだ。ひるがえって日米同盟の有用性を信じる私は、基地の町や被爆地の人の痛みを本当に共有しているのか。初めから「米軍なしでは無理」と決めてかかってはいなかったか。自分の頭で考えるべきは、私のほうだった。
毎日新聞2010年6月23日
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日米首脳会談 再出発へ課題は重い
毎日新聞社説2010年6月29日
 「日米両国の安全だけでなくアジア太平洋地域の平和と繁栄にとっての礎でもある日米同盟をさらに深めていこう」。こうした認識を菅直人首相とオバマ米大統領が確認し合った。普天間問題の処理という重い課題は残るが、関係修復へ日米首脳が出発点に立ち戻ったことをともかく歓迎したい。
 思い返せば、念願の政権交代を果たして初訪米した鳩山由紀夫前首相と、オバマ大統領が同盟関係の強化を確認したのは昨年9月だった。「日米同盟は日本の安全保障の基軸だ」と強調する前首相に、大統領は「今日から長い付き合いになる。その中でひとつひとつ解決していこう」と応じた。
 あれから9カ月。日米関係は普天間問題で揺れ、同盟深化どころか首脳会談さえまともに開けない異常な状態が続いた。それだけに、菅、オバマの両首脳には再出発の確認の場となった今回の首脳会談の重みを認識してもらいたい。
 菅首相はオバマ大統領との会談に向け、日米同盟に関する共通認識を持つことと、個人的信頼関係を築くことに期待を示していた。
 日米同盟に関しては「過去50年以上にわたりアジア太平洋の平和と安定の礎として不可欠な役割を果たしてきた」(首相)、「今後50年も素晴らしい歴史を築いていけることを確信している」(大統領)との認識を確認し合った。11月の横浜でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際に訪日する大統領との間で日米安保の新しい意義付けや経済、文化なども含めた同盟深化の具体策をどう練り上げるかが課題となる。
 日米関係修復への大きなハードルは言うまでもなく普天間問題だ。沖縄県名護市のキャンプ・シュワブ周辺への飛行場移設を盛り込んだ先の日米共同声明は、代替施設の位置と工法の検討を8月末までに終わらせることを明記している。
 菅首相は共同声明に基づき移設実現に真剣に取り組む考えを大統領に伝え、それに先立つ記者会見では米軍基地の有無が日米のイコールパートナーシップ(対等な関係)に直結するとは考えていない、と語った。米側への配慮も込めた発言だろう。
 しかし、鳩山内閣が地元の頭越しに米側と合意したことに地元の反発は激しく先の見通しは立っていない。処理を誤れば前内閣の失敗を繰り返すことにもなりかねない。
 首相にまず求められるのは前内閣が県内移設に方針転換した事情をていねいに説明し、地元との信頼関係を築くことに全力を尽くすことだ。オバマ大統領も理解を示したように、両政府は沖縄の負担軽減にも真剣に取り組む必要がある。
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日米首脳会談―「同盟深化」も、沖縄も
朝日新聞社説2010/6/29Tue.
 日米関係もまた再スタートである。 
 菅直人首相とオバマ米大統領が初の首脳会談を行った。両氏は「アジア太平洋の平和と安全の礎」として日米同盟の重要性を確認し、首相は9月の国連総会時に訪米する意向を表明した。
 米海兵隊普天間飛行場の移設問題は、鳩山由紀夫前首相の稚拙な運びによるところが大きいとはいえ、歴史的な政権交代によって生まれた内閣を崩壊させる引き金を引いた。
 日米関係の大局からみて、一基地の問題が両国関係全体をぎくしゃくさせ、日本の首相交代にまでつながったことは、双方にとって不幸だった。
 だからこそ、両首脳とも今回の会談を、信頼関係を築き直す第一歩と位置づけて臨んだに違いない。
 首相は鳩山前政権下で結ばれた日米合意の履行を約束し、大統領も「日本政府にとって簡単な課題でないことは理解している。米軍も地域に受け入れられる存在であるよう努力したい」と応じた。
 大統領から首相の訪米を要請したのも、前首相との間で機能不全に陥った首脳外交を立て直す狙いからだろう。
 しかし、普天間移設を実現する政治的困難さは何ら変わっていない。
 沖縄の民意の大方は、日米合意に盛り込まれた名護市辺野古への移設に反対している。菅政権が合意に従い、地元の理解抜きでも、8月末までに滑走路の場所や工法を決めた場合、県民の反発は一層強まるだろう。11月の県知事選で県内移設反対派が当選すれば、実現はさらに遠のく。
 首相は移設と並行して、沖縄の負担軽減に全力を尽くすことで地元の理解を得たい考えだ。今回、大統領にも直接、協力を求めた。
 しかし、首相にはさらに踏み込んで欲しかった。沖縄の厳しい現状や日米安保体制を安定的に維持するためにも沖縄の負担軽減が欠かせない事情を、もっと率直に語れなかったものか。
 短時間の初顔合わせとはいえ、無難に調え過ぎた印象は否めない。難しい課題を脇に置いたままで日米のあるべき首脳関係を築けるとは思えない。
 両首脳は「同盟深化」の議論を続けることでも一致した。テロや核拡散、地球温暖化、大規模災害など、地球規模の新たな脅威にどう対応するかが中心となろうが、米軍と自衛隊の役割分担の見直しに発展する可能性もある。
 首相は大統領に「日本国民自身が、日米同盟をどう受け止めるか、将来に向かってどういう選択を考えるか、もっと議論することが重要だ」と語った。沖縄の基地問題についても、大きな文脈の中で打開策を考えたい。
 同盟深化と沖縄の負担軽減を一体的に考えるために、国民的な議論を始めなければいけない。首相にはそれを主導する責任がある。
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日米修復へ言葉より行動を
日本経済新聞 社説2010/6/29
 壊れかけていた日米関係を修復する出発点に立った。27日の菅直人首相とオバマ米大統領の初会談の成果はこれに尽きるだろう。
 会談でのやり取りをみると、両首脳は米軍普天間基地問題で広がった傷をふさぎ、ひとまず関係の修復を演出した。
 首相が日米同盟を「アジア太平洋地域の平和の礎」と強調すれば、大統領も「米軍基地が日本国民に受け入れられるよう努力したい」と応じた。
 似たような光景は鳩山前政権でも見た。鳩山由紀夫前首相は昨年9月に大統領との初会談で協力をうたい、11月には「トラスト・ミー(信用してほしい)」と普天間問題の解決を約束した。
 ところが、実際には決着を先送りし、迷走を極めた。この言行不一致ぶりが日米の信頼を損ない、関係を冷え込ませたのである。
 「離米路線」の誤解を招いた鳩山氏に比べると、首相は日米基軸をより鮮明に打ち出し、険悪だった空気は和らぎつつあるようにみえる。
 それでも普天間問題のトゲが日米関係に刺さったままの現実は変わっていない。鳩山前政権のてつを踏まないためにも、首相に求められるのは解決に向けた行動だ。
 日米は8月末までに普天間の代替施設の工法や位置を詰めることで合意している。それを受け、大統領が来日する11月までに事実上、決着させたい考えだ。
 沖縄県名護市辺野古周辺に移設する日米合意をめぐっては、地元の反対が強い。首相は沖縄側の理解を得ないまま、「問答無用」で移設を進めることはないと約束している。
 とすれば、菅政権は今から沖縄側と水面下で接触し、どうすれば協力してもらえるのか、真剣に着地点を探るべきだ。
 時間は長くない。11月の沖縄知事選が近づくにつれ、地元の説得が難しくなるとみられるからだ。
 首相は9月の国連総会に合わせて訪米する意向を大統領に伝えた。それまでに代替施設の工法・位置をきちんと詰められるか。
 これがまず、「日米基軸」という掛け声がどこまで本物なのかをはかる試金石になる。


1 コメント

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日米経済新聞社どの江 (古井戸)
2010-06-24 12:43:44
米軍が日本に駐留しているから中韓が軍備を増強するのだよ。日本が憲法にしたがって非軍備をつらぬき、自営のための最低限の軍備(現在世界5位ですよ、軍事費は)に抑えれ、安保廃棄し、中国と不可侵条約を締結すれば、軍備など不要になる。そも、中国と戦争でもできると思っているのが大間違い。米国でも太刀打ちできないし、戦争になれば日本国民の生活はどうなるのかシミュレートしたことでもあるのか?
1 日本は憲法を遵守し、対外戦争は一切しないことをあらためて世界に宣言し、軍事道威名は結ばないことを誓う(ゆるされるのは不戦条約のみ)
2 核兵器はもたないのはもちろん、核兵器を使用した國は、先制・報復にかかわらず、被使用国に対して無期限、無制限の賠償義務・原状回復義務を負うべし、と宣言し、核・非保有国同志で連帯し、保有国を封じ込めること。
3 日本に核が使用されたら?2の賠償を相手に要求し、日本は一切軍事的報復はしない。やられっぱなしで構わない、と宣言する。

これ以外に何ができるか。何もする必要はない。
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