成年後見、親族らに代わって自治体が申請 2017年度 都道府県で最大6倍差

2019-05-06 | Life 死と隣合わせ

成年後見、自治体が申請 都道府県で最大6倍差

   2019年5月6日 朝刊

 認知症や知的障害などで判断力が不十分な人の財産管理や生活を支援する成年後見を巡り、親族らに代わって市区町村長が2017年度に利用を申し立てた件数は、人口当たりで比べると、都道府県間で最大約六倍の差があることが厚生労働省の調査を基にした分析で分かった。

 申し立てが適切に行われていない自治体では、独居の高齢者らが消費者被害に遭ったり、福祉サービスを利用できていなかったりする恐れがある。政府は権利擁護の観点から成年後見の利用を促しているが、自治体による取り組みの差をどう埋めるかが課題になりそうだ。

 成年後見は家庭裁判所に利用を申し立てる。親族が申立人になることが多いが、身寄りがなかったり親族が虐待したりしている場合、首長が申し立てることができる。

 厚労省調査は、全千七百四十一市区町村について一七年度の首長申し立ての件数を調べた。全国で七千三百三十六件あり、対象者は84%が高齢者、残りが知的・精神障害者だった。

 これを基に共同通信が総務省の人口推計などを使って都道府県別に高齢者と知的・精神障害者計十万人当たりの件数を算出すると、宮崎県が最多で四三・〇件。次いで岡山県(四二・四件)、東京都(三七・三件)と続いた。最も少ない栃木県(六・八件)と最多の宮崎県では六倍強の差があった。

 全体の43%に当たる七百四十一自治体では件数がゼロだった。申し立てが低調な理由には、制度に関する職員の知識不足や、自治体側の手間、費用負担が生じることがあるとみられる。

◆活用すればメリット

<成年後見に詳しい上山泰・新潟大教授の話> 首長申し立ては同じ都道府県内でも市区町村によって差があると思うが、平均値で約6倍も開きがあるのは、合理的な理由があるとは思えない。「そういうニーズはない」と言う自治体もあるが、支援すべき人の存在に単に気付いていない可能性も高い。親族の有無の調査などが必要なため、手間がかかることが職員の心理的なハードルになっている。ただ、うまく活用すれば、家族による虐待の防止や、生活困窮者が地域で暮らせる共生社会づくりの手段になる。そうしたメリットがあることを知ってほしい。

<成年後見> 認知症や知的・精神障害などで判断能力が不十分な人に代わり弁護士や司法書士、親族らが預貯金の管理や福祉サービスの手続きなどを支援する制度。2000年に導入され、利用者は18年末時点で約21万8000人。家庭裁判所が申し立てを受け後見人を選任する。弁護士ら専門職の場合は利用者が月数万円の報酬を支払うのが一般的。身寄りのない単身高齢者の増加に伴い、市区町村の首長申し立ては年々増えており、18年には利用が決まった件数全体の21%を占めた。

   ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です

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