「米オハイオ州で9月、薬物注射による死刑執行が失敗、執行延期」というニュースに・・・

2009-11-06 | 死刑/重刑(国際)
論説ノート:残虐な刑罰とは=伊藤正志(社会部デスク)
 米オハイオ州で9月、薬物注射による死刑執行が失敗し、執行が延期されたというニュースに驚いた。注射針が静脈に入らず、18回も注射され続けたという。地元メディアによると、死刑囚は2時間後「今、何時ですか」と話したそうだ。発言の真偽はともかく「残虐で異常な処罰」を禁じる憲法に違反すると全米で論争になっているというからただごとではない。
 残虐な刑罰といえば、江戸時代のはりつけや斬首を思い出す。世界的にも、ギロチン、八つ裂き、石打ちなど目を背けたくなるような方法で執行された時代もあった。
 戦後、日本国憲法は「残虐な刑罰」を禁じた。その定義について最高裁は「火あぶり、はりつけ、さらし首、釜ゆでの刑」などを具体的に挙げている(1948年大法廷判決)。別の判例では、刑法が定める絞首刑を「特に残虐とする理由は認められない」とする。だが、米国の多くの州では、憲法の残虐禁止規定を理由に、銃殺や絞首刑から薬物注射に移行しているという。残虐の受け止め方もさまざまだ。
 かつて、弁護士を通じて、死刑執行直後の遺体写真を見たことがある。首の痕跡以上に印象に残ったのは、長年の拘置生活で臀部(でんぶ)にできた座りだこだった。執行は当日朝、複数の刑務官の足音が房の前で突然止まることで悟る。長年座って待つ苦痛やいかに。区切りを知らされぬ「生き地獄」は残虐ではないのか。
 民主党は政策集で「死刑の存廃問題だけでなく(略)告知、執行方法などを含めて国会内外で幅広く議論を継続する」とうたう。存廃の是非を声高に主張し合うのではなく、多面的に議論する姿勢は正しいと思う。
毎日新聞 2009年11月5日 東京朝刊

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