『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

◆ドキュメンタリータッチの哲学性と芸術性/映画「シンドラーのリスト」:No.2

2015年01月26日 00時00分51秒 | ◆映画を読み解く

 

   映画のプロが選ぶ名作

   さて今回の映画は、2007年の『米映画協会(AFI)が選んだアメリカ映画BEST100』(※註1)では「第8位」に、また米国の一般読者投票による『歴代映画ベスト100』(実施年不明)では、「第3位」にランクインしています。ちなみに「第1位」は「ゴッドファーザー」、「第2位」は「ショーシャンクの空に」です

   なお後者は、「米国映画」だけでなく米国以外の作品も対象にしています。ちなみに「日本映画」は、「第7位」の「七人の侍」他4作品がランクインしています(※註2)。

 

  “ドキュメンタリー・タッチ” による “哲学性芸術性”

   まずこの “ 映画の特徴 ” は、「実話(ノンフィクション)」に基づく “ ドキュメンタリー・タッチ” の作品ということです。

   “ドキュメンタリー・タッチ” を貫くことによって、この映画の “哲学性と芸術性” がいっそう深まったと言えるでしょう。

  次の「3点」が、その「重要なポイント」となっています。

 

(1) 基本的には、「映像」を「モノクロ」(白黒フィルム)としている。

   いわば、第二次大戦前後の「ニュース映画」の「記録フィルム」のような雰囲気づくりに徹しています。

  しかし、“一部のシーン” 又は “画面のごく一部分” だけは「カラー映像」としているようです。

  この 繊細なカラーリング” によって映画の “哲学性と芸術性” が強調され、「第1の重要ポイント」となっています。

 

(2) ドキュメンタリー・タッチ”を貫くため、映像上の “感情表現” を極力抑えている

   この「映画」は、「アドルフ・ヒットラー」の「ナチス・ドイツ」による “ホロコースト」(ジェノサイド)すなわち “大量殺戮” をテーマに、「オスカー・シンドラー」による1,100人ものユダヤ人の救済を描いています。“眼を背けたくなるような衝撃的なシーン” がいくつもあり、人によっては “直視しがたい光景” です。

   しかし、スピルバーグ監督以下、「映画表現者(制作者)」は、「観客」に “怒り、憎しみ、哀しみ” といった “感情” を “圧しつけ” ようとはしていません。どこまでも “冷徹な第三者の眼” で “歴史的な事実” を見つめているかのようです。

   映画の撮影においても、 “実際に起きた出来事” を伝えるように淡々としています。そのため、ときには当時の「ニュース映画」の「報道カメラマン」のように、あえて “手ぶれ” のおそれある「携帯用カメラ」を使用したシーンもあるほどです。事実を記録する “傍観者の視点” といえるでしょう。

   それは、「観客」個々の “喜怒哀楽の感情” を尊重していることを意味しています。そのため観客には、 “本能的で冷静な感情” がかえって湧き起こり、それが結果として、この「映画」に対する観客自身の “主体的な想いや判断” を呼び覚ます効果をもたらしているのです。

   巧みな戦略であり、戦術です。「ホロコースト」に対するスピルバーグ監督の揺るぎない哲学と深い洞察の賜物と言えるでしょう。ここに、この映画の持つ “哲学性と芸術性” の「第2の重要ポイント」があります。

 

(3)ドキュメンタリー・タッチ” をより確実に表現するため、主人公の〈オスカーシンドラー〉以下、「中心的な俳優5人」は、総て「舞台俳優 」を起用している。

  それによって、“ドキュメンタリー性” の “説得力” をさらに強化しています。観るたびに優れた俳優の卓越した演技に惹き込まれるばかりです。何度観ても飽きることがありません。

   ここに、この映画の持つ “哲学性と芸術性” の「第3の重要ポイント」があります。

        ☆

   以上のように、この映画を “ドキュメンタリー・タッチ” に仕上げたことによって、“ 映像の哲学性と芸術性 ”とがいっそう深みを増したと言えるでしょう。

   そのことは、「優れた映画」と言われるものが “なぜ優れているか?”、また “どこがどのように優れているのか?” ということを語ることになります。次回より、「具体例」を示しながら、話を進めて行きましょう。 

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 クリック! ◆映画『シンドラーのリスト』(3時間15分13秒)の動画

  この「動画」はフルバージョンであり、画質も鮮明です。筆者が記事原稿中において告知する「カット」や「シーン」は、この「動画」の「経過時間」をもとにしています。

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  なお「カーソル」を「画面」から外すと、いつでも上記の総ての「表示」が消えます。

 

 ※註1: 「米映画協会(AFI)」に所属する監督、脚本家、俳優、編集者、批評家ら1500人が、1997年以来10年ぶりに歴代のアメリカ映画のベスト100を選出したもの。「第1位:ゴッドファーザー」、「第2位:市民ケーン」、「第3位:カサブランカ」。

 ※註2: 「乱」(74位)、「用心棒」(95位)、「もののけ姫」(100位)。

 



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