「ふむふむふむ、はるの、によい~」
日曜の夜、久しぶりに携帯警報が鳴った。
携帯2台と、パット1台とが、これでもかこれでもか、というふうに、鳴るのだから、たまらない。
「福島沖で地震、強い揺れにご注意」とのことだった。
携帯警報がなるやいなや、おれこは「くうんくうん」と不安がり、
ぴゅいーん、と、めだかの水槽の前に移動。
その間もずっと、くうんくうん、と、泣き続ける。
こっちへおいで、といっても、めだかのそばを離れない。
「おはなみ、おはなみ~」
くうん、くうん、と泣き続けながら、
めだかの水槽をじいい、とみつめ、
水面が、ゆ~ら、ゆ~ら、と、
揺れ始めるのを確認してから、
くうん、くうん、といいながら、私たちのところにとんでくる。
なんでかわからないが、地震かそうでないかを、
おれこはきっと、『めだかの水槽の水の動き』で、確認するようになったのだろう。
おれこが家にひとりでいるときにも、地震はあるし。
小さな地震でも、大きく揺れるタイプの家なので、仕方がない。
「おれこは地震が嫌いだねえ」
「でもえらいねえ、怖がるのは正しいよ」
「そうだな、おれこはえらいね。俺はもう、地震になれちゃったからな」
実は、地震災害戦争は、慣れてしまうのが、いちばん、おそろしい。
「いつものことね」
なんつって、本能に従うスイッチが、はずれてしまうからだ。
実際、前回も大丈夫だったから今回も大丈夫なんて保証はどこにもない。
その点、どうぶつと一緒に暮らすということは、人間が忘れがちな本能を思い出させてくれる。
おれこはいのちの本能そのままの犬なので、私たち家族にとって、本当にありがたい存在だ。
この家は好きだけど、おれことしあわせに暮らすには、やや、住みにくい。
キッチンから外の景色が見えることや、夏は涼しく、冬はあたたかいのが、
一戸建てと違って心地良くて好きなのだが、いずれは大地に根を下ろした生活をするようになるのかも。
おれこと一緒に、楽しく、暮らすために。
本当は小豆島に住みたいんだけどなあ・・・。無理だろうなあ。