2017年のGWは、仕事が忙しかったので、前もって予定を入れていなかった。
1日なら遊びに行けそうだというので、思い立って、前から気になっていた九十九里へと車を走らせた。
途中途中、休憩して、犬たちを遊ばせながら向かったのだが、思いがけず早くついてしまい、どこもまだ営業前の時間帯。
開店しているのは海だけで、犬たちを連れて九十九里浜へ。
この日は快晴で風が強く、海岸では砂も吹き荒れていた。
オレコはもちろんとっくに先に行っていて、こんちゃんはよたよたしながらついていく。
ちなみにこのころのこんちゃんの様子は・・・
『こん、さんぽ中におとうさんに会い手をなめる。(犬日誌より)』
『こんのねどこにムックのマット(マイクロファイバーのもこもこバスマット)投入。体の支えがらくになり、床ズレ防止(犬日誌より)』
『こん、フンフンくるくるまつり。何度も一緒にねようといいにくる。キャンベル(当時いたタイガースの助っ人選手)にそっくり。キャンベル、(メッセンジャーのすすめにより)グラブにスープとカタカナで刺繍する。(犬日誌より)』
『朝5時前、こんのフーンフーンに目覚め40分くらい相手する。こん、よろこぶ。なでてあげると安心して眠った。足洗うとき(足を上げて)預けてくれた。初めて!!(犬日誌より)』
犬たちは散歩から帰るとお風呂場で足を洗うのだが、2017年の5月というと、こんちゃんはうちにきてから2年と5ヶ月。
オレコはの作法はもう万事心得ていて、シャワーで洗うと、前足みぎ⇒ひだり、後ろ足みぎ⇒ひだりというふうに、足を上げて協力してくれる。
その様子を見せたことがないからか、こんちゃんは、こちらが足をつかんで、洗いやすいようにしていたのだが、この夜、どういうわけか、
「はい、どうぞ」
とでもいうように、足をあげて洗うのに協力してくれたのである。うちへ来て2年と5ヶ月。
かなり感動したので、そのときのことはよく覚えている。
しかしながら、そのあと、継続的にやってくれるようになったかというとそうでもなくて、やったり、やらなかったり。
そして痴呆が進行し、だんだんやれなくなっていった。
(おハナに砂ついておりますぞ)
この頃は検査結果が悪かったこともあって、日誌にはこんが食べたものの成分について細かく記してある。
はがしとったラベルがそのまま挟んであったりもする。
『こんが食べたあとあまえて大変だった。心配だったがよく食べた(犬日誌より)』
ほしくない、ということもあったので、よく食べたときはうれしくて、びっくりマークが連発。
『こん、さんぽいきたがり、さいそく(犬日誌より)』
『ふたりともお風呂に入れた。こんの毛がごっそり抜けた。かんたんにタオルドライ。あとはさんぽでかわかす。(犬日誌より)』
『オレコ、お父さん帰宅でハッピーの絶頂。鼻息がすごい。(犬日誌より)』
この日はひねもす、機嫌がよかったようで、どの写真を見ても、ニコニコ笑顔のオレコ&こんちゃんである。
実は天敵パート2の太郎ちゃんも一緒なのだが、ずいぶんと楽しかったんだろうねえ。
毎日のさんぽにも意欲があったころなので、おでかけが楽しかったようだ。
海岸沿いにある海の駅九十九里。
開店時間を待って、はやくも人だかりができていた。漁港直送の鮮魚、水産加工品などのおみやげコーナー、フードコートが魅力。
せっかく来たのだからと様子を見に行くと、開店と同時に人がなだれこみ、あっという間に大盛況。
あとの予定があったので、さっと見てさっと帰ろう、というつもりで入店。
以前、房総へ旅行に来たときに買ったわかめスープがとてもおいしかったので、探しに来た。
さっと見たら運良くみつけることができ、じゃあ混まないうちにとレジに進むも、既に長蛇の列。
20-30代の女性が、目から鼻へ抜けるような仕事ぶりでテキパキこなしていたから、ひとりでもうまくまわっていた。
そこへめがね+三角巾おばあチャマンが登場。
「あたし入るよ」
できる女性に声をかけ、西部劇に登場する助っ人よろしく、くるりと身を翻し、隣のレジに登場。
ちょっと嫌な予感がしたのだが、やっぱり「次のお客様どうぞ」とわかめスープを強奪され、連れて行かれる。
500円を渡すと、風のような流れでレジにお金を投入、しかしそれは悲しいかな、レジにキーを挿入すると同時で、レジが稼働するより前の出来事だった。
ブーーーーーー!!!!!
鳴り響くエラー音。さざ波のようにざわめくお客さんたち。今きて今エラーで即テンパリーヌと化したおばあチャマン(めがね+三角巾)。
(え?え?え?)
おばあチャマン、きっと全身の毛穴は全開だ。焦りながらいろんなところを押し始め、レジを破壊しそうな勢い。
行列のお客を笑顔でさばきながらも、誰にも聞こえないようにため息をつき、隣のレジからデキる女性がやってきた。
「どうしたの?」
「いや、あの、なんかブーって」
ふたつしかないレジの両方が稼働していないからどんどんお客様はたまる。
「何かさわった?」
ブルブルブルブルン!!!(首を振るおばあチャマン)
「さわってないさわってない!!!」
いいや触っている。触りまくっていたはずだ。
「お金入れたの?」
「いやーーーどうだったかなーーー」
は?
「お金頂いたの?」
「それも定かじゃない」
ハーーーーーーーーーーーーーー??????
おばあチャマン、くるりとこちらに向いて、笑顔で、
「お金、頂いてないですよねえ?」
という。これにはさすがに私もちょっと、からだの中の何かがプチンと音を立てて切れて、
「(キッパリ!)いいえ(これでも最大出力)」
と全否定。
ダメだこりゃ、と思ったのだろう。
できる方の女性が笑顔で尋ねてきたので、顛末を答えた。
「こちらに連れてこられて、500円を渡し、レジが稼働する前にお金を投入したあと、ブーという異音がしました(今もしてます)」
ハー、という、収容人数ギリギリに詰まった館内の皆さんのグレーなため息で窓ガラスが曇りそうな勢いである。
・連休なのでメンテナンスはお休みです
・すぐにはレジは直せませんそんな暇あったらお客様の会計します
・いいかみんなまだ始まったばかりだし既に大行列だが本日レジは1台だ
という状況をみなさんが一斉に把握、わたしはできる方の女性からおつりと商品を受け取り、館内のみなさんの視線を背中に浴びながら退出した。
その後のおばあチャマンの顛末についてはわからない。
気を取り直して、お昼ご飯。事前におとうさんが動画を見たりして調べておいてくれた『網元』。
なんと犬も一緒に入れちゃうのである。(外と中に犬ご一緒席がいくつかある)
犬連れの観光客向けに始めたのだろうが、店の主が犬好きなのはすぐと伝わってくる。
店内には犬のおやつがおいてあり、お水入れも(あったような気がする)。
なんとか早めに入れたけれども、こちらも繁盛店というだけあって瞬く間に大行列ができ、何時間待ちなんだろう、と心配になるほどだった。
しかもこの日は風が強かったため、火を使うので、外の席はお休み。待ち時間も丸八真綿(2倍2倍)である。
混み合っているし、びっくりするくらい広い店だし、注文したのがなかなか届かないのは致し方ない。
焼き物はすべて新鮮でおいしい上に、犬も一緒にいられるのだから、文句はない。
強風の中、浜遊びが疲れたと見えて、膝の上で骨抜きにょろ~ん化していたこんちゃん。
お水も飲みたくなーい、おやつもいらなーい、と言って心配したけれど、おかみさんがカットしてくれたワッフルをもぐもぐ。
おいしかったとみえて、おかわりまでした(オレコは言わずもがな)。
至近距離に犬がいてそわそわしたに違いないし、こういうお店には初めてだったオレコだが、状況を理解したのか、いつもなら吠えるようなシーンもぐっとこらえてお利口さんにしていた。
そしてオレコはこの日を境に、状況を考えて行動する、という高度な対応ができるようになっていく。
こうしてオレコがおとなになることで、こんちゃんも落ち着いてすごせるようになるのだった。
(思いがけず続く)