衣装は見てのとおり揃えてあるから、後は良しなに。
李両はそう言って、私と撫子とを部屋から出した。どうにも、「ていよく追い出した」という表現が頭をよぎる。けれど追い出すにしては、李両は機嫌がよかった。まあいい。
扉の外で、私は立ち止まっていた。右に進んで階段へ向かうことをせずに。
番長はなにか企んでいるのではないか? と、思ったのだ。
そんな私を、撫子は不安そうに見上げてくる。背丈が、私の肘のあたりまでしかない。どう見ても華奢で小柄な、可哀想に、普通の市井の娘だ。
「翔伯さん。ご迷惑、お掛けします」
か弱い声が、私の耳に届いた。
不機嫌な顔をして、右手をあごに添えてうつむいていたのだ私は。15の娘が顔色をうかがいたくなるような、様子で。
「いや。……それよりも君の方が、難儀な目に遭うぞ?」
撫子は、弱く首を振った。「いいえ」と。訳もわからず連れて行かれるのに、しかしそれをどこか自然に受け入れている。
……不思議な、娘だ。
李両はそう言って、私と撫子とを部屋から出した。どうにも、「ていよく追い出した」という表現が頭をよぎる。けれど追い出すにしては、李両は機嫌がよかった。まあいい。
扉の外で、私は立ち止まっていた。右に進んで階段へ向かうことをせずに。
番長はなにか企んでいるのではないか? と、思ったのだ。
そんな私を、撫子は不安そうに見上げてくる。背丈が、私の肘のあたりまでしかない。どう見ても華奢で小柄な、可哀想に、普通の市井の娘だ。
「翔伯さん。ご迷惑、お掛けします」
か弱い声が、私の耳に届いた。
不機嫌な顔をして、右手をあごに添えてうつむいていたのだ私は。15の娘が顔色をうかがいたくなるような、様子で。
「いや。……それよりも君の方が、難儀な目に遭うぞ?」
撫子は、弱く首を振った。「いいえ」と。訳もわからず連れて行かれるのに、しかしそれをどこか自然に受け入れている。
……不思議な、娘だ。