思えば、あの待っている時間が、私のこれまでの人生の中で、一番の幸せな時間だった。
そして、これまでの人生の中で、一番おめでたい時間だったのだ。
……愚かな私。
私と父は、部屋に戻って、ただ無言で待った。
私は父に話したいことがたくさんあったのだが、彼の表情は厳しく、私は声も掛けられなかった。
父は私が偉くなるのが不愉快なのだ、と、当時の私は確信した。
やがて、私と父とは、再び階段を下りる。
私の心は喜びに満ち満ちていた。
父の心は……今になっても、わからない。一体、どんな気持ちだったのだろう。幹部という立場上、引きとらざろう得なかった孤児だが、しかも質の悪い孤児だったが、……お父様、少しくらいは、心配してくださった?
階段の踊り場。岩の壁。
そして、今度こそ、岩壁は開いた。それは、人が二人ほど入る幅で長方形に切り取られて、地面に押し下がった。私と父が入室すると、再びせりあがり、元の岩壁になった。
愚かな私は、そして、祈職の存在を、知る。