争いの止まない街に
突然 雷が鳴った
みるみるうちに闇に包まれ
歪んだ空から
大粒の雨が降り出し
街中を叩きつける
狂気に満ちた人々のうえに
逃げまどう人々の群れに
容赦なく叩きつける雨
神の怒りに触れたのか
雨は 鋭い痛みで突き刺し
恐れをなした者達は
固くドアを閉ざし 怯え続けた
やがて
壊れてゆく心
人々の瞳には
絶望しか映らない
生きているのかさえ
解らない
何日も家に閉じ込められたアリーシャは
母の目を盗んで外へ出た
叩きつける雨の音さえ アリーシャには心地いい
走る稲妻も 歪んだ空も
アリーシャの瞳には映らない
その瞳に映っているのは
乳白色の何も見えない世界
その瞳で空を見上げ
祈りを捧げた
”天の神よ
今 私が感じているのは希望です
私の前に道が現れ
私の前に明日が生まれる
雨はいつしか太陽を誘い(いざない)
空には虹の橋が架かるでしょう
この瞳には見えなくても
心の瞳で感じます
あなたの優しさ あなたの温もり
慈悲深いお方
天の神よ
もう 争いは終わりです
空に太陽を 風になびく草花を 命に愛を与えてください
今日の日に希望を感じている私には
あなたがいつも必要なのです”
祈りを終え
歩き始めたアリーシャの肩に
優しく降り注ぐ雨
いつしか
重い雲は払われ 雨は止み 太陽が覗く
乾いてゆく土からは 命の芽が生まれ
空には鳥が遊ぶ
街には歓喜の声が上がり 手を取り 抱き合う人々
駆けまわる子供達
その中を 微笑み歩くアリーシャの姿に
誰ひとりとして気づかない
ただ 天の神が知っていること
アリーシャの祈る心が
奇跡をもたらせたことを・・・
長い文を、最後まで読んでくださって、
本当にありがとうございます
風香・・