以前娘に、
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人のことなら、こんなふうに視野を広げ気づけるオトは、なんでまだ自分に向き合えずにいるんでしょうか。
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「ねぇ、オトちょっと聞いてくれる?」と、ついさっきオトの目の前であった私のザワついた気持ちをオトに話してみました。
「今さぁ、ママ、オトの目の前で電話してたやん。あれ、ネット環境が悪いから新しい会社に契約する手続きの電話やってん。
昨日までは、営業マンがざっくばらんに契約内容を話してくれて、それを理解してたつもりやってんけどな…。
今、アシスタントの若い女の子から電話があって、契約内容をずっとずっと棒読みされていた訳なんよ。
ママ、耳がしんどくてさ…。途中で訳分からないままずっと聞いていて。
契約書の文章はやっぱりそのまま読む時は、直接対面して、視覚的に文章を指し示しながら読んで欲しいと思ったわけ。
でも、このコロナ禍やろ。
電話でこういう契約内容を確認作業ってこれからありえる話なんだと思うんよね。
もしオトがネット環境のお仕事をしていて、今回のような説明をしなくちゃいけないならどうする?」
「ママ、だからイライラしてたんや」
オトは私の気持ちに敏感です。
だからこそ、私の気持ちを伝えてみたんです。
「そうやねん。時々、『あれ?営業マンから聞いていたのと違う!』って思って質問するやろ?そしたら、そのアシスタントさんは、またその該当箇所を読み直してくれるわけやねん。
文章ってまわりくどいというか
『え?どうゆうこと?要約して話して欲しい』っていう部分あるやろ?
なのに、要約せずにそのまま言って、さらにその他はいかにも『マニュアルに沿って』 話す丁寧語。
同じ答え方1つしか持っていないから、結局答えが伝わってこないし、こっちも聞く気が失せてきてん。」
するとまずオトが言ってきた言葉に驚きました。
「ママ…もしかしてママは、そのアシスタントさんと似てるんじゃない?
人を嫌に思うところって、案外自分の嫌なところだったりするやん。
ママも昔仕事をしていて、マニュアル通りにしか話せない人だったんじゃない?」
こうやって鋭い質問でオトは私に時々思いがけない風穴をあけてきます 。
「え?んーーーそうだったかな?」
そう言いながら、だんだんと蘇るのはオトを産む前まで働いていたOL時代の私でした。
いや…あの頃私は一生懸命働いていた。
営業マンと電話が繋がらなくてピンチな時も、何とか切り抜けて得意先と上手くコミュニケーションをとっていたじゃない?
そう思い出した瞬間に、また過去の自分が見えてきます。
いや…ちがう。私は物覚えが悪くて、いつも教育係の先輩にいじめられていた新入社員の頃。
わからないことだらけで、マニュアル通りにしか話せない私はそこに居ました。
仕事なんて、お金が稼げればいいと、
適当に選んだ会社に入りよく分からず研修。
興味が湧かない仕事内容に、研修内容は右から左。
配属された部署は営業。
アシスタントとして営業事務をしていました。
教育係の先輩が怖すぎて、色々相談出来ない中マニュアル通りに仕事をして電話の向こうのお客さんに何度怒られたことか。
つまり オトの指摘は合っていたんです。
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人のことなら、こんなふうに視野を広げ気づけるオトは、なんでまだ自分に向き合えずにいるんでしょうか。
『向き合ってない』と思ってしまうのは
私の目に見えないからでしょうか。
オトはもしかしたら十分に自分と向き合っているのかもしれません。
向き合えたから、じゃあ『今からすぐ前を向いて歩ける!』という
そんな単純ではないのかもしれません。
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毎日気だるく頭痛に横たわるオトを見ていると
ふと以前オトに言われた言葉が聞こえてくるようです。
「ママ…私今まですごく頑張ってきてん。だから、まだゆっくりしててもいいよね…」
今も以前も、私の心中は混沌としています。
学校へ行ってほしい。他者と関わってほしい。他の同年代と同じことをする幸せを味わって欲しい…
その一方で、人と関わる中でいじめや疎外感というしんどさしかなかったオトの辛さも感じ取れて…
2つの想いは常に私の中で渦巻いています。
「いいよ。しばらくゆっくりしていこう」
あの時、そう伝えると、
オトは安心した表情になりました。
そんな事を思い出し
『今はこれでいいんだ』
と、目の前のオトを受け止め受け入れていこうと再び腹をくくりなおします。
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ところで、話は戻りますがオトがもし仕事をしたらの話もびっくりでした。
「まず、電話で契約内容を読み上げないと行けない時は、要所要所で『ここまでで質問がないか』と聞くことが大事やと思う。あと、ここまでの内容の要約もしながら分かりやすく説明も入れたらいいんちゃうかな?」
実際できるかどうかは別として、
まずはそういうことに気づける力というのが頼もしいです。
頭で考えることが出来ても、行動にはなかなか移せない…
そんな不器用さがあるのも
オトなんだなぁと
思ってはいます。
大丈夫。
まだまだ未来はある。
人との関わりも
今じゃなくても
ゆっくり再開する日は来るはずだ。