日曜日は
父の髪の毛を切ってあげる予定でした。
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そろそろ帰ろうと、帰り支度をしていると父がまた目を覚ましました。
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先週私がカレンダーに書いた文字も虚しく…
いつの間にか父は布団の中で過ごすことが多くなってしまったのです。
「わし、頭がおかしい」
そう母に言っているみたいです。
原因は『お酒』
悲しいですね…。
母も怒り心頭を通り越し
『やっぱりか』という落胆と無力感
時々来る苛立ちの中、父と同じ空間に居てはいるもののほぼ無言で過ごして居るようです。
父は恐らく肝性脳症だと思います。
まっすぐ立っていられず、
言葉は呂律が回らす不明瞭。
ご飯はほとんど食べれません。
薬も飲んでくれません。
時間の経過が分からず、今朝なのか昼なのか…夕方なのかさえも分からないようです。
そして一日の大半を眠りこんでいます。
「え?今日は仕事休みか?」
さっきまで目を閉じていた父が、私に気づき目をまん丸させて話しかけてきました。
私は、頷きました。
日曜日だと分かってないんだ…そう思いました。
「あぁ…そぉーかぁ…
髪の毛 切りにきてくれたんかぁ…」
「今日は やらんよ(髪の毛切らないよ)。
しんどいときは やめとこうね。
げんきに なってからね!」
言葉を区切ってハッキリと聞こえるように伝えました。
「うぅーん…。なんでかなぁ。おかしいねん。困ったもんだぁ…」
そう言い布団をかぶりました。
『お酒飲むからやーーー!!』と心の中でツッコミました。
暫くしたらまた目を開けて
「あ、今日は牛乳が安いんやわぁ〜…。
買いに行けてないねぇ。」
と体を起こし出したので、
「だいじょうぶ。
おかあさんが かってきてくれた。
おとうさん 寝てて。
倒れたら心配するやん。」
と言いました。
するとまた横になり布団をかぶりました。
「あぁ〜 どうしてこんな体になったんかなぁ。やっぱりぃ こないだコケたからやろぅかぁ〜。あぁ…腰が痛いわぁ…」
お父さん、お酒のせいです。
肝臓がカチカチになっているんだよ。
でも、辞めれないんだよね。
お父さんの中ではお酒こそが救世主なんだよね。
次の瞬間にはまたスースーと寝てしまいました。
母の心が心配で、
父が寝ている間母と沢山話をしました。
私と話すことで少しは気持ちが楽になってくれたら嬉しいのですが…。
話している間めーちゃんは母に抱かれて気持ち良さそうに寝入っていました。
柔らかく温かいめーちゃんの体が、
母にピッタリとひっついて
赤ちゃんのように可愛らしい寝顔を見せてくれます。
めーちゃんだけが、私や母を癒してくれていました。
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そろそろ帰ろうと、帰り支度をしていると父がまた目を覚ましました。
「めいや〜。こっちおいでぇ〜。」
そう言って布団に誘います。
めーちゃんを父の布団の中に入れてあげました。
「めいやぁ〜。離さないよォ」
なんて言って優しく抱きしめていました。
嫌がるかと思っていためーちゃんですが、案外お布団が快適だったようで、しばらく父の布団でまったりとしていました。
さっきまで
痛い しんどい おかしいとばかり
言っていた父が
優しい表情でめいに癒されている姿を見て、私と母は顔を見合わせて笑いました。
ほんのつかの間の小さな幸せに感謝をしました。
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