泉を聴く

徹底的に、個性にこだわります。銘々の個が、普遍に至ることを信じて。

電信柱

2016-03-11 09:52:54 | エッセイ
2011年5月2日、宮城県の気仙沼に、震災後初めて足を踏み入れました。
無残な変わり果てた姿に恐怖を覚えた。風がとても強く、亡くなった人たちの叫びかと感じた。
そんな中で、ふと目に入った電信柱。
それは震災後に立てられたもので、とても感動した。
当時の写真を見返して、やはりこれを再掲したくなった。
いつもだったら、電信柱なんてじゃまでしかない。
景観を損なうし、早く地に埋めてくれと思っていた。
でも、被災地で見た新しい電信柱は、とてもかっこよく見えた。
私があなたたちを支えているんです、というような。
人の支えの現れとして立っていた。電信柱に人の思いが見えた。
私も、ささやかながらそうなりたい、と思った。
あれから5年。走るようになった。
走るのは、不完全燃焼から卒業するため。
全力を尽くすとは何か、知りたかった。身につけたかった。
完全燃焼すれば、おのずと明るくなる。自信がつく。
明るさが増せば、見える世界が広がる。小説につながる。
そうした好循環が生まれた。
生まれさせてくれたのは、亡くなった人たち。遺族の方たち。
精いっぱい生きなければ申し訳ないから。
だから忘れません。忘れることはできません。
2時46分。黙祷をささげます。

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