泉を聴く

徹底的に、個性にこだわります。銘々の個が、普遍に至ることを信じて。

締め切りの月

2007-12-01 12:24:00 | エッセイ
 早いもので、今年ももうあと一月になりました。
 風邪がはやっているようですが、みなさまお元気でしょうか?
 私は一月生まれということもあり、冬が好きです。身が引き締まる。頭も冴える。寒いからこそ、人と共にとる暖が、なによりいとしく感じる。
 最近は飲み会ばかりでした。先日はまったく思いがけなく、勤め先の上司に誘われ、行ったこともない某スナックに連れられ、泉谷しげる、同僚と三人で熱唱していました。それも貴重な経験。違う同僚には、「勇気あるね。よく帰ってこれたね」とも言われましたが、なんとかなるものです。その時その時の自分の足元さえ押さえていれば。といっても、帰りはかなりの千鳥足で、カラオケの悪夢(久々のカラオケは、まったく下手くそだった・・・)にうなされ、練習するように歌っていましたが。
 十二月は、今年一年の締め切り。だから飲んで忘れるという人も多いのでしょうが。
 そして、僕にとっては、今年の十二月は特別な月でもあります。というのは、一月から書き始めた小説の締め切りに定めたからです。ちょうど丸一年、あんなに没頭したカウンセリングから嘘のように遠のき、読み、書いてきた一年。朗読にも挑戦した(これからもまた)。様々な出会いと別れがあった。それでも、やっぱり、最も身近にいたのが、本であり、おのずから始まった、何度も書き直した手書きの原稿。だからそれを終えるのが、さびしくもあります。あんなに苦しかったのに、ゴールが見えると名残惜しくなる。でも、締め切りがないと終わらない。終わらないと、新たに始まらない。締め切りは、一種の死でしょう。人はいつか死ぬ。期限付きの存在。だからこそ、今できることを完遂しようとする。私を作り上げようとする。その営みは普遍で、誰にでもその力が備わっている。期限がなかったら、出来事も成立しない。出来事が自分を作り上げる。だから期限がないと、いつまでも同じままで、要するに成長しない、次のステップに行けないということになる。
 小説を仕上げることが、今の僕にはどうしても必要。それは今までを整理し、次に行くためです。そしてそれは、確かに達せられてきている。僕がそうやってきた小説が、いざみなさまの前に出て、どんな働きをするのか。やはり、びくびくしないわけにはいきません。
 そんな締め切りの月に入ったわけですが、今日は休みで、人と会う約束もなく、天気もよく、空は青く高く澄み渡り、とてものんびりしています。
 こんな日も必要ですね。人と会ってきたことを、働いてきたことを点検し、明日に備えるためにも。
 でも、やっぱり、書くんでしょう。原稿用紙に向かう時間。それはカウンセリングの一時間にも似て、幸せを感じるときでもあります。苦しいけど、やっぱり楽しくて、それと取り組むことで自分に、他者に、世界に触れたと実感する。
 好きこそものの上手なれ!

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2 コメント

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Unknown ()
2007-12-02 02:07:42
勇気って……。
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勇気 (きくた)
2007-12-02 23:44:34
そうですよ。
あの面子は、確かに勇気がいると思います。
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