随思録

日々思うことを記す。

屋久島日記 2日(火) 4日目 屋久島最終日

2010-11-14 22:44:04 | yakusima
真夜中、猛烈に喉が渇いて目を覚ます。
おそらく、登山で想像以上の水分を失っており、そこにアルコールを入れたからだろう。
民宿の自販機でスポーツドリンクを買い、飲んでから再度寝る。

朝、軽い二日酔なのか、頭痛がする。
食欲はあったので、朝食をとり、それでも8時、荷物をまとめても9時。
高速船は12時発でまだ随分時間があったが、部屋にいても仕方ないのでチェックアウトする。

まずはお礼参り。
それから地元の本屋「書泉フローラ」で雑誌「Number」を購入。
旅先では必ず本を買うが、この書店は昔のバイト先2つが合成した名前で、非常に縁を感じる。
次いで「観光センター」で、会社向けと、自分向けの土産を購入。

まだまだ時間があったので、舌の肥えている実家向けのお土産は、いわゆる“みやげもの”ではなく、地元の和菓子屋の菓子にすることにした。
益救神社通りの商店街に、和菓子屋が1軒ある。

港から近道を通っていこうとしたら、前方を歩いている人影が。
どうやら背格好からすると、若い女性のようだ。
もしかしたら昨夜話した人だろうか。
変なことを言ってしまったが、もしそうなら一言挨拶だけして、離れたほうがいいな……と追い抜きつつ横顔を確認しようとしたら、ものすごく顔を伏せていた。
それで彼女だと理解した。

「あら、偶然ですね。一緒に回りましょう」などという浅見光彦的な展開を夢想していなかったと言えば、嘘になる。
ただ、そんなわけないじゃんと、いい大人なんだから、考えるでしょう。
正直に言おう。
顔なんて覚えていなかった。
風呂上りのすっぴんと会話したので、化粧してたらまったくわかりません。

気づかないフリして追い抜きつつ、どっぷりと落ち込む。
もしあれが彼女だったとしたら、警戒されているし、かえって迷惑をかけてしまった。
なんか森見登美彦の小説にこういうエピソードあったなあ、と苦笑。

↑の法則を忘れていたぜ。

反省しつつ和菓子屋へ。
そこで土産物として出荷していない、地元の人向けの和菓子を買う。
これが本当のお土産ではないか。

目的を果たして港に向かうことにするが、土産物屋や、海岸の散策ルートなどは、実に狭いエリアにあり、何度も彼女とニアミスになりそうになる。
ここで度胸があれば、いっそ付きまとってしまうのも手かもしれないが、妙に紳士なので、フェリー乗り場の2階に隠れ時間を潰す。
高速船も、彼女らしき人物と時間帯をずらして乗船する。

ただ、あまり気にしすぎてもバカらしいので、鹿児島からは自由に行動。
遅い昼食に鹿児島ラーメンを食べてから飛行機に乗るのだ。
リムジンバス乗り場に一番近い「ガルフ」というラーメン屋を選んだのだが、これがどうもイメージと違う。
なんというか鹿児島ラーメンを標榜しているが、天下一品みたいなラーメンだった。
以前鹿児島来たとき偶然入った店は、やさしい風味の野菜とんこつで絶品だったのだが……

ともかく汗だくで満腹になったので、リムジンバス乗り場へ。
もうこのあたりで二日酔は吹き飛んでいいはずなのだが、頭痛は続く。
このときは気づかなかったが、どうやらすでに風邪をひいていたようだ。

飛行機は17時25分発なので、かなりの余裕がある。
時間をもてあましたが、空港でもお土産を買ったり本屋に寄ったりして、待ちわびた搭乗。
無事帰還した。

帰り道、ipodから流れるのはe.s.t.「Tuesday Wonderland」。



――旅を終えて。

大株歩道に入ると、屋久杉がたくさん見られる。
有名なのは大王杉、夫婦杉、メデューサ杉……

そして……倒れてしまった翁杉。

研究のため、痕がそのままにされている。
私が仕事の都合をつけ屋久島を訪れたのも、この倒木が理由のひとつだった。
「いつか」「そのうち」と思っていると、すべて消えてしまうのではないか。
そんな恐怖があったからだ。

縄文杉のデッキで男子学生2人組が、無邪気に杉を見上げ話していた。
「でけーなあ」
「絶対倒れそうもないよな~」
なぜかその言葉が心に残った。

私は、変わらないものがまだこの世には残っていることを確かめに、屋久島まで行ったのかもしれない。

屋久島日記 1日(月) 3日目 白谷雲水峡単独トレッキング

2010-11-14 22:40:44 | yakusima
7時起床。
天気は晴れ。

前日のつかれはほとんど残っていなかった。
朝から3杯メシを詰め込み、部屋に戻って白谷雲水峡トレッキングの準備。
ここで迷ったが、かさばるし、フリースは必要なしと見て置いていくことにした。
弁当も買わず、昼食は手持ちのウィダー・イン・ゼリーで済ませる。
思い切り身体を動かし続けるなら、胃にモノは入れないほうがいい。

今日はひとりで登る。
せっかくだからオプションツアーでは行かない「もののけ姫の森」の先にある「太鼓岩」まで行く、往復4時間のルートを歩くことに決めていた。

白谷雲水峡行きの路線バスは、宮之浦港から10時発。
民宿の近くにもバス亭はあるが、観光センターにレンタルしたヘッドライトを返しがてら、港まで歩くことにした。

バス亭の前で待っていたのだが、私以外に乗客が現れず、あせる。
時間ちょうどにバスが到着。
宮之浦港から乗り込んだのは私一人だったが、バス亭で止まるたびに登山客らしき人が増えていく。

バスはゆったりと白谷入口へ、曲がりくねった坂道を進む。
途中、宮之浦港を見下ろせる箇所が。
晴天と海が、まぶしい。
白谷入口のそばでは屋久猿が出て、運転手さんが停車して撮影させてくれた。

10時半ごろ、白谷入口に到着。
管理棟で300円を払い、トレッキングの開始。

母も登ったというから、なだらかな山道を予想していたら、本格的に険しい山道で驚く。
大きな岩の上を歩いたり、川を川面から頭を出した石から石へと飛び越えて渡ったり、危険な箇所もある、山らしい山だった。
最後の難所を除けば、縄文杉トレッキングのほうが勾配は楽だ。

途中、「くぐり杉」などを抜けつつ、最低限の休憩で水とアミノ酸をとりながら、まずは「もののけ姫の森」を目指す。
そして、今日も昨日に比べれば少ないが、それなりに人がいる。
どうやら一人きりで森の雰囲気を楽しむことはできそうもない。

「もののけ姫の森」までは順調で、あっけなく到着。
当然なのだが残念なことに、「もののけ姫の森」には立ち入ることができず、その手前にある小さな広場から眺めたり、撮影したりできるようになっている。
ベンチもあり、そこで休憩や食事をする人が多いようで、10人弱の人がたむろしていた。
一応何枚か写真を撮ったあと、ベンチに空きもないので、先に進むことにした。



楽しかったのは、ここから奥だ。
苔むした森の光景を、存分に楽しむことができた。
ツアー客は基本的に「もののけ姫の森」より先には来ない。
また、それなりの登山客はいたが、ペースをうまく調整して、喧騒に巻き込まれないように動いた。
縄文杉でもこれができればよかったのだが……

あと少しで太鼓岩というところ(辻峠)まで来て、休憩。
道端に腰を下ろして汗を拭き、ゼリーでエネルギー補給。
そこへ「わたしたち、山ガールです☆」という格好の20代女性3人組が通りかかって、噴き出しそうになる。
なんかもうカタログからそのまま抜け出してきた感じの。
何かの撮影ですかというくらい美人ぞろいだったが、ガイドがついていて、しかも装備の量や出現したルートからすると、泊まりらしい。
私は山の専門家ではないが、ガイドつけてまで山小屋に泊まるものなのだろうか?
ブームもここに極まれりということか。
それとも本当に取材だったのか。

辻峠から急峻な山道を登って、太鼓岩へ。
太鼓岩からの眺望は、ちょっとしたものだった。
一気に登りつくしたとこともあり、スポーツ後に近い達成感を得る。



ただそれもほんの十秒ていど。
なぜなら次の登山客が「お、ここだ」とすぐ現れるからだ。
ちなみに記念撮影のシャッターを押してあげました。

復路。
ここでもうまくペースを調整して、「もののけ姫の森」でほんの数分だが、一人になることに成功する。
写真を何枚も撮ってみるが、うまく伝わりそうもない。
ただ、少なくとも1対1で向き合えて、満足だった。
縄文杉でもこうできれば……そんなことを思った。

復路も快調なペースで飛ばし、白谷入口へ戻る。
途中、おなかが減ったので、昨日もらった栗まんを食べる。
ありがたや。

計算外だったのは、ペースが速すぎて、予定より下山が早かったため、路線バスを1時間以上待つことになってしまったこと。
まあ、待合用につくられた東屋で寝ていればいいやと隅を陣取ったら、急に寒くなってきた。
なんだか「森」というから平地のようなイメージでいたが、実は結構標高が高く、山風が冷たい。

雨具を上に着て防風するが、体温が低下していく。
いかん……こりゃ風邪引くぞ……
そうやって凍えていたが、替えのロングTシャツがあったのを思い出す。
(そうだ、汗をかいたから冷えるんだ!)
とトイレにいって濡れたアンダーシャツとロングTシャツを脱ぎ、替えのロングTシャツに着替える。

しかし、東屋に再び戻ると、先ほどよりマシになったものの、暖かくはならない。
周囲にHOTの飲み物を売っているような自販機もない。
(フリースを持ってくればよかった~)と大後悔。
山を舐めてはいかんね。
向かいでバスを待つ年配のご夫婦は、耐え切れずレイヤー用のダウンジャケットを取り出すほど。
震えながらバスをひらすら待つ。

16時に路線バスが到着。
2台立て続けにやってくるので、空いている後のほうに乗車。
民宿に最寄のバス亭で下車し、宿に戻るとすぐに風呂。
ようやく人心地ついて、食事。

この日はビールの大瓶と焼酎を許す。
明日は帰るのみなので、ともかく旅を乗り切った祝いだ。
そうやって飲んでいたら、相席の人が同じテーブルに座った。
どうやら一人旅の女性のようだ(縄文杉ツアーで一緒になった人とは別人)。
いままで一人旅同士が同席になることはなかったので、逆に気まずい。
普段ならしないが、酔いもあり思い切って話しかけてみた。

静岡から来た方だそうで、旅の目的やら、ほかの人から見た屋久島の話などが聞けておもしろかった。
もちろん名前などは尋ねなかったが、どうやら同じツアー会社で参加しており、帰りの船や飛行機は同じ便らしい。
別れ際、「明日、また会ったら話しましょうよ! 高速艇の席とか近いといいですねー」みたいなことを言い、調子に乗りすぎたかな、と思いつつも、これが一人旅の醍醐味かもしれない、などとご満悦で就寝した。

屋久島日記 31日(日) 2日目 縄文杉トレッキングツアー

2010-11-14 22:28:10 | yakusima
朝4時半。
ガイドさんの自己紹介のあと、車内灯の元で誓約書を記入。
また、荒川登山バスのバス料金(1700円)が集金される。

ワンボックスカーに乗り込んだのは、ガイドさんのほか私を含め5人。
私は助手席に。
後部座席には、若い女性が4人座った。
この人たちが今日のパーティのようだ。
女性同士で自己紹介が始まって、兵庫の女性3人組、福岡のひとり旅の女性だということを知る。

街灯もなく、深い闇の中、ライトバンは疾走する。
ガイドさんから登山前行動の説明を受けながら30分ほど走り、着いたのは荒川登山バスのバス乗り場(暗いので未確認だが、おそらく屋久杉自然館)。
縄文杉トレッキングの入り口である「荒川登山口」へ、冬季を除き一般車両は乗り入れられないからだ。
駐車場に車を止め、バス停へ。

荒川登山バス乗り場には、すでに30人ほどが列を作っていた。
最後尾に並びながらも、朝の5時に忽然と現れたこの集団に当惑する。
次々と駐車場から人がやってきて、整然と列をつくる。
集団は徐々に増え、50人ほどになったころだろうか。
クラクションが鳴り、登山バスがやってきた。
補助席までフル稼働で人を詰め込み、バスは登山口へ。

登山口に着き、バスから降りる(時計がなかったのでわからないが、おそらく5時半ごろ)。
まだ周囲は暗いが、人が行き交い、非常に活気がある。

待合室で朝食を摂る。
たぶん、20~30人が待合室で、立ったまま、あるいは床に座り込み、思い思いの場所で弁当を広げていた。
おにぎり弁当を食べようとしたら、ほかのパーティを率いるガイドさんが
「普通の弁当をいま食べるんだよ。おにぎりは食べやすいから後!」
とアドバイスしているのを聞いて、なるほど、登山弁当のほうを食べることにした。
ご飯、焼き魚、唐揚げ等々ボリューム満点。
疲れているとしつこいかもしれない。

それからトイレを済ませる。
ガイドさんからトイレはしつこく薦められる。
このあと1時間半はないそうだ。

そして準備体操(笑
これはほぼすべてのガイドが実施するようで、登山口駐車場のあちこちに輪ができて、体操が始まる。

出発。
往復10時間のトレッキング開始だ。
ただ片道5時間中、3時間は平坦なトロッコ道。
縄文杉前の2時間が登山道なのだそうだ。

天気予報は曇り。
歩き始めるとともに夜が明け始めた。
足元はなんとなく確認できるので、どうやらヘッドライトは必要なかったようだ。

女性陣は登山口の看板で早速記念撮影をしている。
(混ぜてもらって1枚。)
その際、ガイドさんから撮影の注意事項が。
一本道なので、撮影する場合は脇に避けることがマナーらしい。

登山口の入り口にいきなりトロッコの線路が現れ、どこまでも続く。
枕木を踏みながら歩くので、足の裏の負担が大きい。
ガイドさんはストックを用い、一定のペースで進んでいく。
ついていくのが精一杯なスピード。

しだいに、水墨画が浮かび上がるように山並みが明らかになっていく。
しかしながら、パーティは進み、のんびり眺めている余裕はない。
時折ガイドさんは一行を止め、屋久島の地質・気候や、屋久杉の特徴などについて解説してくれる。
それ以外は歩く。
しばらくすると枕木の上に踏み板が敷かれ、歩きやすくなっていた。



私自身はほとんど喋らなかったが、兵庫の女性3人組のリズミカルなやり取りを聞いているだけで、心が和んだ。
また、福岡の女性は話を聞くとひとり旅に慣れているそうで、私が足を滑らせるたびに「大丈夫ですか?」と声をかけてくれたり、非常に頼もしい印象。

ちなみに今回の屋久島、見たところ登山客のおよそ半分が若い女性(20代~30代)だった。
昔ダイビングや海外旅行をしていた女性たちが、最近はこういうところに旅行に来ているのかもしれない。
もっと年配のご夫婦などがたくさんいる光景を想像していたけれども、それが1/4くらいで、あとはカップルやひとり旅の男性が。
母娘らしい組み合わせもちらほら。
大学生の集団もいて、大声でクイズを出し合いながら、猛烈なスピードで追い抜いていった(女子が9割の集団だった)。

歩いていて気になったのは、人の多さだ。
50~100メートルおきくらいにグループが点在している。
たとえば三代杉など有名な屋久杉の前では、解説と記念撮影タイムが設けられるのだが、撮影の最中には次のグループがベストポジションの手前で待機している。
ウィルソン株など時間のかかる場所は、撮影の順番待ちの列が。
私自身は記念撮影などどうでもいいのだが、あとで思い出すために屋久杉や気にいった風景をコンデジで撮りながら歩く。
それにしても人が多くて落ち着かない。

休憩は一行の疲れ具合や、気温の変化を捉えながら、ガイドさんが入れていく。
ちなみに途中トイレ休憩は2回あった。
縄文杉までの登山道で、最後のトイレは大株歩道入口にある。
ここから往復3時間はトイレがないので、再度トイレに行くことを推奨される。
トイレにはもちろん、女性の長い列ができる。

ちなみにトイレのそばには大抵湧水を引いたホースがあって、そこから水を汲み飲用にすることができる。
湧き水はほかにもたくさんのところにあり、ペットボトルが1本あれば、水に不自由することはない。

難所は縄文杉手前の2時間で、大株歩道入口を過ぎてから。
ガイドさんの表現だと、地獄の1丁目~3丁目+1だそうな。
ここはたしかにいわゆるかなり厳しい“登山道”で、滑るし、上り下りが激しい。
体力的につらいという場面はなかったが、足が滑って背中から倒れたり、着地で足首をひねったりするなど、冷やりとする瞬間は何度もあった。

10時半ごろ。
昼食。
縄文杉の直前まで来ている。
登山道から外れ、休憩用に使えるスペースで弁当を使う。
ガイドさんが温かい味噌汁を用意してくれて、ありがたかった。
このあたりは標高が高いせいか、動いていないと体が冷えて、寒い。
体温調整用に用意したフリースまで着込み、4枚(アンダー、ロングT、フリース、雨具)構成で休憩。
食事を終えて、いよいよ縄文杉へ。

縄文杉の前には、櫓というか、木製のデッキが整備されており、階段を上ると縄文杉が見られる構造になっている。
デッキの入り口付近に人がたまっているらしく、まずはデッキにのぼるために、階段の踊り場で待つ。
階段を上って、デッキにたどりついた。

縄文杉は……記念撮影会場と化していた。
私は縄文杉を見たということ以上に、その光景に圧倒されてしまっていて、ぼんやりとその様子を眺めた。
たぶん、最初にバスへ乗り合わせた50人が、ほぼ同じ時刻にここへ着いたのだろう。
人があふれ、縄文杉を正面から捉えられる位置は絶好の撮影スポットとなり、順番で撮影を待つ人が並ぶ。
私たちもガイドさんに指示され、順番を待ち、全員で固まって、あるいは一人ずつ記念撮影。
撮ったらすぐに次の人に場所を譲る。
みんなはしゃぎながらシャッターを切り、デジカメはもちろん、携帯のカメラで屋久杉と自分をワンフレームで撮る。

私も笑顔をつくって撮影に参加したが、虚無感はぬぐいきれなかった。
そしてこの狂騒だ。
それでも、もしかすれば神秘的な感覚が得られるのではないかと、人々の撮影の合間を縫って、再度正面から縄文杉を見上げてみた。
しかし、縄文杉は何も応えてはくれなかった。
せめてほんの数分でも、1対1で向き合いたい……そう思ったが、ガイドさんが無情にも下山すると伝えてきた。



率直に言えば、縄文杉はただの観光名所だった。
悲しいくらい何も感じなかった。
加えて、私の体力では5時間程度の歩行では疲労困憊になるほどでもなかったので、それに伴う達成感もなかった。
準備が良すぎた。
そして、ツアーに申し込むという臆病さが祟ったということなのだろう。

帰りはただひたすら戻るのみである。
別段、苦痛となる要素はなく、ただのんびり歩いた。
おそらく、食間に摂取していたアミノ酸と、cw-xのおかげもあるだろう。
フットサルで使い込んでいる私の下半身は、10時間の歩行ぐらいでは、筋肉痛にもならなかった。

帰り道、何度も考えた。
この30日~2日という連休の取り方ではなく、別の週だったら?
ガイド付のオプションツアーに申し込まず、自力で踏破していたら?

休みはここでしか取れなかったし、オプションツアーに申し込む利点はたくさん感じられた。
単純に宿から送迎してもらえるだけでかなり助かる。
またガイドさんは大阪出身の感じのよい方で、休憩時間等も楽しく過ごすことができた。
それに実は行動食として、アミノ酸とウィダーインゼリーしか持ってきていなかったのだが、パーティの方が休憩のたび飴をくれたり、チョコを分けてくれたりと、非常にありがたかった。(とくに復路の登山バスの中で栗まんじゅうをもらったことには驚いた。10時間背負っていたのである。女子の甘味に対する執念を思い知った。)
歩いている最中も退屈しなかったし、食事もやはり一緒に食べる相手がいたほうがいいに決まっている。
ただ、私のようなタイプには、ましてや縄文杉トレッキングには、必要なかったということだろう。

16時のバスで登山口から戻り、ガイドさんに車で民宿まで送ってもらう。
和やかに解散し、風呂をすませ、食事ではグラスビール1杯だけを許し、かなり早めの就寝。

屋久島日記 30日(土) 出発当日

2010-11-14 22:24:17 | yakusima
8時5分発の飛行機なので、朝5時起きで羽田へ。
未明から台風の影響で降り始めた雨に、こうもり傘(装備品)をさす。
3泊4日分の荷物をつめたザックには、kestrel付属のザックカバーをかけてから背負う。
(早速ザックカバーが役に立ったな~)などとほくそ笑み、暗い道を歩いて15分の最寄り駅から空港に向かう。
ipodから流れるのはもちろん(?)、Weather Reportの「Heavy Weather」。

空港には余裕をもって50分前に到着。
台風での欠航を心配したが、どうやら鹿児島着の便に影響はないようだ。
どうせ荷物はザック一つ。
機内に持ち込むつもりなので、ロビーで傘とカバーを搭乗ギリギリ20分前まで乾かしてから収納し、搭乗手続きへ。

行列のできている預かり受付のカウンターを尻目に、悠然と搭乗手続きを済ませるつもりが、ザックの高さがありすぎる(55cm以上)ため、断られる。
慌てて行列の最後尾に並び、さらには出発まで15分を切っている乗客の列に案内され、3分前に手続き完了。
走ってゲートへ。
500mくらい走ったけど、息が乱れなくて、自分でも感心。
5分ちょうどにゲートへ。
私が最後かと思って座席に座ったら、後から続々と乗客が(そんなものなのか)。

機長のアナウンスによると、飛行機は通常とは針路を変え、台風を避けるために内陸部を通り、大分側から鹿児島に入るという。
JALGJ。
(また、後から現地で聞いたことには、前日(金曜)の午後は台風のため飛行機もフェリーも欠航だったとか。悪運が強い。)

鹿児島空港→リムジンバス→ロケット(高速船)の中は転寝しながら過ごす。
鹿児島も屋久島も、半袖のTシャツがちょうどいい陽気。

屋久島に着いて、まずロケットの発着場の近く、フェリー乗り場に付設されている「観光案内所」で、3日目に一人で行くつもりの白谷雲水峡の地図と、白谷雲水峡行きの路線バスの時刻表を手に入れる。
時間は宮之浦港からだと30分くらいで、泊まる予定の民宿のそばにもバス停があるという。

次に港から歩いて5分ほどの「観光センター」へ。
土産売り場の奥に、各種レンタル品が並ぶ。
ヘッドライトをレンタル(500円)。

民宿までは港から徒歩15分。
チェックインすると、縄文杉トレッキングツアーの手引書が手渡された(ガイド会社からの要請らしい)。
明日の朝食は移動中に食べられるようにおにぎりで用意され、昼食用のお弁当(別料金)も手配してくれるそうだ。
お弁当は買うのも面倒なので、宿経由で注文することにした。

部屋に荷物を置く。
2階建ての、1階の一番奥の部屋で、壁は薄そうだけど、清潔で、まだ新しい部屋だった。
一息ついても、まだ16時すぎ。
夕食は18時からということなので、周囲を探検に。



宮之浦地区は、なんというか、とてもたたずまいがいい。
海と山が近くて、川が流れ、真ん中を宮之浦大橋が繋いでいる。
橋から海を眺めたり、堤防まで行ってみたりするうちに、川向こうに鳥居を発見。
行ってみると「益救(やく)神社」という、とても歴史のある神社だった。
登山の安全祈願のためにお参りし、おみくじをひく。

民宿に戻って、縄文杉トレッキングの準備。
軍手・ペットボトルの水(500ml)は民宿近くのスーパーで購入。
この時点でガイド会社から電話もかかってきて再確認されたが、明日は朝4時20分に宿の前に車が迎えにくる。
3時には目を覚まし、装備を整えないといけない。
想定より随分早い起床だ。
逆算して、21時には就寝したいところ。

食堂にて食事。
周囲はやはり2人連れやグループが多い。
食事の味はまあまあ。
新鮮で、屋久島の名物を出してくれる(トビウオの姿揚げが出た!)。
ともかくおかずもごはんも大量。
アルコールを摂るという誘惑もあったが、一人で飲むことに抵抗があったし、酔って短い時間眠るより、素面で徹夜したほうが翌日無理が利くという経験があった。

食事を終えて、テレビを見ながら食休みを取り、共同浴場へ。
20時半には浴衣に着替え、蒲団に潜る。
隣室に人の気配はあるが、先方も明日に備えてか、この時間には静かになっている。
今朝5時起きした効用を期待したものの、乗り物という乗り物の中で転寝したため、とっくに無効となっていた。

一向に訪れない眠りを虫の声を聞きながらじっと待っていたが、途中、耐え切れずテレビをつける。
「ダイハード4.0」がやっていてもう深夜映画の時間!? と驚いたらまだ21時すぎで、実は孤独な戦いは始まったばかりだったという罠。

テレビを消し、ともかく目を6時間閉じて休めるのだ、一睡もできなくても身体を横たえて休めるのだ……と念じていたら、いつの間にか浅い眠りに落ち、何度か寝覚めながらも、3~4時間は睡眠がとれたようだ。

午前3時、携帯のヴァイブレーションとともに起床。
足首に湿布とテーピングを施し、cw-xを装着。
トレッキングパンツに、アンダーシャツ(タンクトップ)とロングT。
登山用のソックスを履き、ザックを背負う。

4時に部屋を出ると、隣室も開いた。
どうやら同じオプションツアーの参加者らしいので、挨拶。
フロントへ朝食とお弁当を取りに行く(紙袋に入っておにぎり弁当と登山弁当が用意されていた)。
部屋の鍵をフロントに預ける。

真っ暗な庭先へ差し込む車のライト。
ワンボックスカーが入ってきて、ドアが開かれた。
どうやらガイドさんがやってきたようだ。