子供の頃、祖母がよく昔話を聞かせてくれた。
編み物をしながら、まるで見てきたように話しをしてくれる。
それが何よりも楽しみだったときがあった。
ときには昔話と思って聞いていたら、それが近所のオバチャンの話しである
こともあった。
散歩がてらに家の近くの史跡や御嶽をまわっていると、
そこに伝わる伝説や昔話しがある。
通り池の伝説や東平安名崎に伝わるマムヤの話しのように
伝わる話しの中から当時の生活が見えてくることもある。
旧平良市役所向かいに旧の第二庁舎がある。
その敷地内にひっそりと隠れるように
「尻間御嶽」がある。
昔、下里村に住む「こいとの」は、子供がほしくて、
日夜神仏に祈っていた。そのかいあって、女の子が生まれた。
「まんなふ」と名付けて可愛がっていたが、
まんなふが七歳のときに母が死んでしまった。
こいとのは後妻を迎えたが、この女は心根が悪く、
ある日、まんなふを誘い出して山の洞窟に投げ入れる。
まんなふは洞窟のツタに引っかかって、七日七晩泣いていると
天から神様が降りて来て、まんなふを抱いて昇天し、
再びまんなふを連れて下界に降り
「親類と中違いをし、先祖を敬うことを怠るものは
神剣を持って罰する」と戒め、再び昇天した。
こうしてまんなふを神司として建てられたのが尻間御嶽だそうだ。
宮古島の昔話や伝説には、よくこの後妻、後添えが登場する。
決まって意地の悪い悪女として登場してくる。