カラスグヮーとは塩辛のこと。カラスとは「辛す」の意。
沖縄では古くから腐敗しやすい魚介類を高温多湿から保存するための
手段として、数多くの種類の塩蔵発酵品が作られてきた。
シャコガイやカツオ、マグロの腹側などいろいろなカラスグヮーがある。
その中でも、今でも受け継がれている沖縄独特の塩辛としてスクガラスがある。
スクとは体長3センチほどのアイゴの稚魚のことで、旧暦の5月の決まった日に
大群でリーフ内にやってくる。それを文字通り網で一網打尽にする。
その光景は5月風物詩にもなっている。
このスクを自然塩で3ヶ月ほど熟成発酵させると食べ頃になる。
が、そのままにしておいてもどんどん発酵し、1年ほど寝かせると風味が
いちだんと増す。沖縄の居酒屋で豆腐を注文すると必ずといっていいほど
豆腐の上にそのままの姿でのってくる。
豆腐と一緒に食べるのが一般的だが、昔はサツマイモといっしょに食べていたそうだ。
主食が米ではなく芋であった時代、スクガラスの塩分がサツマイモの甘みを引き立てる
役目をしたと同時に、サツマイモに不足しているタンパク質をスクで補ったのである。
そのタンパク質も、発酵家庭で生成される酸素によって消化吸収されやすい形に
なっており、また頭も骨も食べるので貴重なカルシウム源にもなっていた。
市場に行けばオバァ自家製のスクが瓶詰めで売られていたが、
最近では工場で生産されるものがほとんどだ。
毎年、当たり前のようにもらっていたスクガラスも今では買いに
行かなければ手に入らない。
酒の魚にはちょうどいい。