沖縄のお墓は、日本の一般的な墓に比べて非常に大きい。
沖縄には風葬するという文化があったので、大きさが必要だった。
お墓に対する考え方も本土とは異なる。立派な家を作っても、墓が
みすぼらしいと人々に嘲笑されたり、墓を作る前に住宅を建てたりすると、
これまた世間から後ろ指をさされたという。
沖縄の人にとって墓を作るということは何よりもまして大切な
こととされていた。
ところが不思議なことに、これほどの思いをこめて作ったはずの墓を
前にした沖縄の人は、畏れと親しみのいりまじった奇妙な感情を見せる。
むやみ墓に近づこうとはしないし、夜に墓の話しをすることは
タブーとされている。かと思えば晴明や十六日には門中一同墓の前に
集まってピクニック気分で持ちよった重箱料理に舌鼓をうち酒を酌み交わす。
その光景はとうていお墓にたいする畏れや恐怖心など感じられない。
沖縄では亡くなった人の霊は、この世の住居近くに作られた墓を
住処として供養を経て祖霊へと変化し、やがて祖先(神)へと移行するまでの
あいだ墓にこもっていると考えられている。
そして子孫の生活を守護してくれつと信じられている。
ところが一方では、それにたいする儀礼を怠ったりすると祟りが
もたされると信じられている。沖縄の人は古来より墓作りに対する儀礼を
大切にしてきた。本土から沖縄に移住してきて
「お墓がなくてよかった。」と思うことがよくある。