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都内の星空における電視観望の撮影条件(3)

2023-10-31 00:04:25 | 機材
(1)概要
 次の機材(IR850フィルタ使用)を用いた電視観望の撮影条件を検討した。

 ・撮影対象(アンドロメダ座)
  M31(アンドロメダ銀河)[15,16]
 ・機材
  望遠鏡:MILTOL 200mm F4[1-2]
  イメージセンサ:Player One Neptune-C Ⅱ(SONY IMX464 1/1.8型 2712x1538 2.9μm)[3-5]
  フィルタ:Player One IR850nm 1.25″ IR-Pass Filter[6]
  架台:AZ-GTi赤道儀化マウント[12] 恒星追尾モード、プレートソルブと同期[14]
 ・画像処理
  パソコン:WindowsノートPC(Core i5 2.30GHz 、8GB、240GB-SSD)
  イメージキャプチャ:SharpCap4.0[7] Live Stack(fits)
  画像解析:マカリ[8-9] 画像演算(左右反転、回転)、グラフ機能
  画像補正:ASTAP[10] 自動カラー補正、αδ grid処理、Deepsky annotation処理、fits→jpg変換
  画像処理:ImageMagick[11] トリミング処理、append処理

(2)スタック数と輝度ばらつきの測定
a.マカリを用いた輝度測定方法(グラフ機能)


上:マカリを用いた輝度ばらつき測定例
  ここでは、背景の(輝度ばらつき)=(輝度最大値 - 輝度最小値)とした
  上記の輝度ばらつきは、約2,000であった
下:天体(M31)の輝度測定例
  ここでの天体の輝度レベルは、約48,000であった

b.Gain固定、露出固定の場合の測定結果

M31の画像例
左 :Gain 460, Exp. 4s, StackedFrames= 15, Total Exp. 60sec
中左:Gain 460, Exp. 4s, StackedFrames= 45, Total Exp. 180sec
中右:Gain 460, Exp. 4s, StackedFrames= 75, Total Exp. 300sec
右 :Gain 460, Exp. 4s, StackedFrames=135, Total Exp. 540sec


スタック数と輝度ばらつき測定例
※輝度ばらつき(イメージセンサのノイズ成分に相当)は、スタック数の-1/2乗に比例していることがわかる[23]

c.総露出時間固定の場合の測定結果
総露出時間固定の場合に使用した撮影条件



M31の画像例
左からGain 460, 420, 380の場合の順で配置
※Gainの低い方が低ノイズの傾向がありそうである


スタック数と輝度ばらつき測定例
※総露出時間固定の場合は、ノイズに相当する輝度ばらつきは、ほぼ一定となった

d.都内の星空の輝度成分の推定

都内の星空の輝度成分推定値
※上記の測定結果より、都内の星空における、背景光、ノイズ、天体、それぞれの輝度成分を推定した
 都内の星空においては、背景光の成分は、IR850フィルタを使用すると、使用しない場合の約1/3程度に低減した[29-30]。
 IR850フィルタを使用しても、背景光の成分はノイズ成分より約6倍程度大きいため、イメージセンサ冷却によるノイズ低減効果は限定的と予想される。

(3)まとめ
MILTOL200mmとNeptune-C Ⅱを用いた電視観望(Electrically-Assisted Astronomy:EAA)の撮影条件を検討した。
その結果、都内の星空においては、次の撮影条件が有効と考えられる。
 ・背景光を低減するために光学フィルタ(IR850)を適用し、その効果を確認した。
 ・ノイズと同等レベルの暗い天体を撮影する場合は、スタック数を増やし、ノイズを低減する手法が有効である。
 ・暗い天体を撮影する場合は、必要以上にGainを上げず、露出時間を長めに設定したほうが、低ノイズの画像を得やすい。

参考文献:
(1)MILTOL 200mm F4レンズ
(2)テレスコープ 200mm F4レンズキット
(3)Neptune-C II USB3.0 Color Camera (IMX464)
(4)SONY IMX464LQR
(5)Player One - Cameras and Astrophotography
(6)S-series IR850nm 1.25″ IR-Pass Filter
(7)SharpCap
(8)すばる画像解析ソフト-Makali`i-配布サイト
(9)マカリ:Makali`i 超入門編(マニュアル)
(10)ImageMagick
(11)ASTAP, the Astrometric STAcking Program
(12)AZ-GTi赤道儀化マウント-goo blog
(13)WindowsPC環境におけるプレートソルビング(10)-goo blog
(14)WindowsPC環境におけるプレートソルビング(11)-goo blog
(15)アンドロメダ銀河-Wikipedia
(16)MILTOL200mmとNeptune-C Ⅱを用いた直焦点撮影(188)-goo blog
(17)WindowsPC環境におけるオートガイド-goo blog
(18)WindowsPC環境におけるオートガイド(2)-goo blog
(19)ASI462MCの”Gain”の数値はいくつで使うのが最も効率が良いか
(20)ASI462MCが、単位時間当たり最高のパフォーマンスを発揮するGain数値は!?
(21)惑星撮影の条件設定を考える(拡大率vsゲインvs露光)
(22)CMOSカメラのカタログ値の読み方
(23)実画像のノイズ評価(その1): 各ノイズの貢献度合-ほしぞloveログ
(24)実画像のノイズ評価(その2): 露光時間の決定-ほしぞloveログ
(25)実画像のノイズ評価(その3): 信号について-ほしぞloveログ
(26)ドライブレコーダーに搭載されているSONYのイメージセンサーごとの特徴
(27)渡邉 耕平 著、”電視観望実践ガイドブック Ver 1.1”、サイトロンジャパン発行、2021年11月17日第二版発行.
(28)渡邉 耕平 著、根本 泰人 監修、”月・惑星撮影 実践ガイドブック Ver 1.0”、サイトロンジャパン発行、2023年6月24日.
(29)都内の星空における電視観望の撮影条件-goo blog
(30)都内の星空における電視観望の撮影条件(2)-goo blog

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2 コメント

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Re:Unknown (KIMUKAZU)
2023-10-31 14:42:58
comet3 様
コメント、ありがとうございます。
ご指摘の点につきましては、ブログ参考文献[29]に測定点を増やした類似事例(UV IR-CUT)があります。
総露出時間固定の場合、スタック数を増やすためには、露出を短くし、Gainを増加する必要があります。
Gainを増加すると1shotの電気的ノイズも増幅されるため、スタック数を増加しても、スタック後のノイズは一定になるようです。
光学フィルタ(QBPⅢ、IR850)を適用した場合でも、上記の傾向は同様と考えています。
返信する
Unknown (comet3)
2023-10-31 13:35:27
興味深く拝見させていただいております。
総露出時間固定の場合、スタック数を増やすと読み出し回路の電気的ノイズが減るように思うのですがそのような傾向は無いでしょうか。
(読み出し回数が多くなれは平均化されて回路のランダムノイズが減る)
もう少しデータ点数を増やせたらわかるような気がします。
露光時間の関係で難しいでしょうか?
返信する

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