
井の頭公園の「かいぼり」作業のニュースを耳にする。
かいぼりとは、池の水を抜き、
底の泥を天日干しにする作業を数回繰り返し、
植物プランクトンの増殖を防ぎ水質改善をすることらしい。
今では生息魚の8割ちかくを占める
ブラックバスなどの外来種も一網打尽にできるという。
井の頭公園にはちょっとした思い入れがある。
中学生のころだったか、ドラマ『俺たちの旅』が再放送されていて、
なぜかその世界観に憧れて、僕は喜々として見ていた。
ドラマの舞台が、井の頭公園近辺だったのだ。
ドラマの主人公たちは、大学にはほとんどいかず、
アルバイト中心で、その日が楽しければよいという生活。
社会にアジャストできず、
それぞれに悩みを抱えながらも自由奔放に生きていた。
世間知らずの田舎のガキだった僕は、
都会の大学生ってああなんだ、
と完全にまちがった認識を植え付けられた。
東京の大学に入学してカノジョと井の頭公園でボートに乗る、
というシンプルすぎる動機で受験して、マグレで合格した。
けれど結局、ボートの夢は果たせなかった。
というより、大学時代、井の頭公園には一度も出向くことがなかった。
入学して、現実を目の当たりにして、
中学のころの瑞々しいセンチメンタリズムが失われていたのかもしれない。
かいぼり作業によって、外来種に加えて、
自転車やバイク、建築資材、プリンターなどの不法投棄物が取り除かれている。
井の頭池は、明治時代までは湧き水が出て飲み水に使われていた。
歌川広重は、その美しさを浮世絵に描いている。
いつかきれいになった井の頭公園を訪れて、
今度こそカノジョとボートに乗ってみたい。