純白のソファに身をうずめて、
チョコを肴にシングルモルトを飲みながら、
僕はTVの中の被災地の人びとを心配して目頭を熱くする。
これは偽善の涙なのだろうか?
それとも僕は、決まりきったお悔やみでも言いたいのだろうか?
確かにTV画面には悲惨な状況が映しだされてはいるけれど、
僕の部屋には、冷たい風も吹いてなく、焼け焦げた臭いもせず、
避難民の咳きもヘリのプロペラ音も聞こえてこない。
むろん、放射能の雨などとは無縁だ。
あの日から1週間が過ぎた。
あさ会社にいき、昼は資金繰りに頭を悩ませ、夜になると帰宅する。
毎食 何不自由なく食べ、毎日 熱い風呂に入り、毎晩 暖かなベッドで眠りにつく。
僕の日常は何一つ変わっていない。
そう、平穏なる残酷なクリシェ!
佐野元春が、震災から2日後、自身の誕生日に寄せて、
「それを『希望』と名づけよう」
という一編の詩をオフィシャル・ファンサイトに掲載した。
はじめて目にしたときは、震災直後ということもあってか、
僕には悲しい詩に感じた。
けれど、時間が経ち、少し平静さを取り戻して読み返してみると、
こんなメッセージに思えてきた。
下を向くな!前に進め!そして共鳴しよう!
被災地の人びとには、偽善の涙も決まりきったお悔やみも必要ないだろう。
僕にできることをできるだけできるように、ありふれた日常を楽しんでいきたい。
今を嘆き悲しむよりも、明日もっとできることがきっとある。
それを「希望」と名づけていいんだよね。
余震は続く...
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