命に尊卑貴賤はないのだけど、
被害者が子どもや若い人だといたたまれない気持ちになる。
高齢ドライバーには悪意はないとわかっていても、
いや悪意がないだけに、余計に大きな虚無感に苛まれる。
かねてより僕は、自分の母親に、
75歳になったら運転をやめるようにいってきた。
若いころ、おふくろは、会社のトラックで配達をしていたから、
運転は上手い方だと思う。
当然ながら、僕の進言に反発していた。
それが今年のはじめ、頸椎脊柱管狭窄症を患ってしまい、
手術は成功したのだけど、手足の動きがまだ本調子じゃない。
くわえて、パーキンソン病の疑いも診断された。
ちょうど運転免許証の切替年だったこともあって、
今月、免許証を自主返納した。
おふくろにすれば、ひとつのアイデンティティを失ったようで、
忸怩たる思いがあったにちがいない。
けれど、街中に住んでるから便利がいいし、
いまの状態じゃどうせ乗れないし、
愚息、嫁、ご近所さん、お抱え運転手がたくさんいる。
かくいう僕も、おふくろ同様、運転にはわずかに自信がある。
けれど、いまは仕事以外じゃできるだけ乗らないようにしているし、
実際4年ほど前に僕は愛車を廃車にしてしまって、
今は自分の車を持っていない。
高齢者に限らず、自動車事故は他人事じゃない。
昨今の被害者のように、何の落ち度がなくても、
もらい事故で命を落とす人もいる。
結局のところ、事故を根絶するのは不可能なんだけど、
一人ひとりが減らす努力をする時代になってきていると思う。
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