血筋的にもおそらくギャンブル体質じゃない。
そんな僕だが、大学時代、人並みに雀荘に入り浸っていた。
先輩に引きずられていっていたというのもあるけど、
真夏などは避暑地としての雀荘は大負けさえしなければ
コスパが高かった。
下手なりに麻雀に興味を覚えた。
そんなとき読んだのが、阿佐田哲也の『麻雀放浪記』だった。
当時は映画化もされて、話題にもなっていた。
死ぬほど時間のあった大学生だった僕は、
退屈しのぎにこの本を手にした。
ピカレスク・ロマン
「悪漢小説」といわれているジャンルの本を初めて読んだ。
麻雀(についての)小説というよりも、登場人物の魅力に圧倒された。
小説に登場する人たちはおしなべてアウトローであり、アウトサイダーである。
しかし彼らには彼らのフィロソフィーがあり、
愚直なまでに自分のルールを守って生き、そして死んでいく。
架空とはいえ、戦後のある時期の青春群像の一面を穿っているのではないだろうか。
今般、たまたま書庫でみつけ、ひさしぶりに読んでみた。
大仰にいえば、ピカレスク小説の枠を飛び越えて、
日本における娯楽小説の最高峰の位置にある作品ではないかと再評価した。
今の日本には、こういう硬派な小説はすでに絶滅してるんじゃないかな。
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