あれは天皇の玉音放送の三日前の事だった。その日私は夏風邪をひき熱が高く学校を休んでいた。「先生、青木先生今日お休みか?」「おう、なんか風邪をひいたみたいだ」「ふ~ん」その時、保健室の梅野先生がちょうど通りかかり「私が帰りに寄ってみてみますから心配しないでね」と子供の頭をなでながら微笑んだ。梅野先生は綺麗な女性でマドンナ的な存在である。「えっ、俺もなんか熱がありそうなんだが‥」「えっ」と吉田先生の額に手を当てて「熱なんかありません!」と吉田は怒られた。「ちぇ、梅野先生は青木のことになると一生懸命になるのにな~」生徒達がそれを見て「あ~、吉田先生焼持ちやいてら~」「何~、ませ坊主、待て~」校長も用務員もそれを笑顔で見て「またやってるな」そんな和気あいあいの学校である。互いに独身の佐藤と吉田は「梅野先生は俺たちには見向きもせず、新任の青木の野郎にご執心かい、羨ましいこった」すると校長が「さあさあ、授業が始まりますよ」と笑いながら二人を嗜めた。その時、空襲警報のサイレンがけたたましく鳴った。続く。
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