保健室は職員室からちょっと離れた所にあった。「梅野先生はいりますよ」といって中へ入った。梅野は窓を開け外を見ていた。「あの日もこんな青空でした‥」そういって振り向き「長かったですわ先生、待ちました、ずっと待っていたんですよ‥」「す、すいません‥」梅野は青木に抱きついた。青木も抱き返した。「ぼ、僕も来たかった‥、でもどうしても来れなかった‥」「もういいんです先生、こうして逢えたんですから‥」暫らく沈黙が続いた。廊下で物音がしたので二人は急いで離れ梅野は窓のところに行った。吉田が顔を出し「おい、もうそろそろいいか」「あ、ああ、今行く」と顔の汗を拭こうとポケットに手をいれた。でもハンカチはいくら探してもなかった。梅野がそれを見て「はい先生」とハンカチを差出した。それから窓を閉めた。吉田が「窓が開いていたのに汗拭きかい、あ~あ、まったく、暑い暑い、早く来いよ」といって笑いながら出て行った。「行きましょう先生」梅野に手を引かれ私達は保健室を出た。懐かしい教室の戸を開けると「お帰りなさい先生!」と子供達が大声で言った。「パチパチパチ」と拍手、校長が「よく戻られた」吉田、佐藤も「待ってたぞ!」と言った。黒板にも大きな字で「お帰りなさい」と書かれてあった。涙が溢れ出た。梅野に借りたハンカチで涙をふきふき「す、すいません、こんな私のために‥」後は声が出なかった。「さ~さ、泣いてばかりいないで今日は楽しもうぜ」と吉田が肩をたたいた。机をテーブルがわりに私が席についたところで宴会が始まった。佐藤が濁酒を注ぎに来た。「さあ、飲むぞ!」子供たちと梅野は牛乳を私はコップ一杯に濁酒をつがれた。校長の「乾杯!」で宴は始まり暫しの談笑が続いた。続く。
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