父親になるヨン様に贈る「俳優復帰への勧め」
昨年、女優のパク・スジンと結婚したペ・ヨンジュン。
このほど、パク・スジンが妊娠したことが伝えられた。
ペ・ヨンジュンが父親になるわけだ。
吉報を聞いて思ったのは、
「生まれてくる我が子のためにも俳優に復帰したらどうですか」ということだった。
ペ・ヨンジュンの主演作は2007年12月に撮影を終えた『太王四神記』以来、
まったくない状態だ。他には、自ら企画した『ドリームハイ』に
ゲストのような形でわずかに出演したのみ。
かなり長い年月の間、彼は俳優ではなく経営者として過ごしてきた。
「もう俳優はやめてしまったのか」
そう思われても仕方がないブランクだ。
しかし、彼は出演作がない間にもファンに対しては「
新しい作品でご挨拶したい」と言ってきた。
俳優として活動する意欲を失ったとは思えない。
あれほど、演技することに全身全霊を傾けてきた彼なのだから……。
思い出すことがある。
ドラマ『冬のソナタ』の撮影が終わった2002年3月からしばらく後のことだ。
休養を取ったペ・ヨンジュンは、念願だった映画の主演作の検討に入っていった。
オファーが数えきれないほどあった。
しかし、ペ・ヨンジュンはそれらには見向きもしないで、
むしろ新鋭の監督に自分を売り込んだ。
その末に出演したのが『スキャンダル』だった。
ペ・ヨンジュンが扮したのは浮気者の退廃貴族。
それまで演じてきた役とあまりに違うので、周囲は大いに戸惑ったのだが、
ペ・ヨンジュンは意に介さなかった。
「私は挑戦してみたかったんです。その気持ちが強かった」
この言葉の中に、ペ・ヨンジュンの役者魂が込められている。
似たような役を断り、俳優として勝負に出たのである。
『スキャンダル』の撮影前にペ・ヨンジュンは30歳になった。
『冬のソナタ』の成功によって、自信らしきものも芽生えていた。
「私は演じ切れないキャラクターはないと思っています。
たとえ私が経験していないことでも、間接的な体験はできます。
その体験を通して自分の内面でキャラクターを作っていくことは可能でしょう」
こう語った彼は、朝鮮王朝時代の退廃貴族を演じることに幸せを感じた。
撮影用に髷(まげ)を結うことはあまりに痛くて苦痛だったが、
それ以外は“未知なる荒野”を開拓するような充実感を味わった。
「俳優の利点は、自分を変化させることができることではないかと思うんです。
自分の中に潜む何か……。誰にでも多面性がありますが、
それを演技として表に出し、より自分を高めることができます」
幸いに、『スキャンダル』の演技がとても好評だった。
俳優として自信を深めることができたペ・ヨンジュン。
その頃に驚くべきことが起こった。日本で『冬のソナタ』が爆発的な人気を得たのである。
もはや、韓国だけで知られる俳優ではなくなった。
彼の名声はアジア各国に広がり、過去に例がないほどのトップ俳優として崇められた。
ただし、恐ろしいほどの重圧がのしかかってきた。
人気を得た責任感で夜も眠れないほど苦しむようになった。
彼自身は雑誌上で不眠を告白したこともあったし、
実際に公の場でやつれた姿を見せることもあった。
トップ俳優の宿命とはいえ、毎日の重圧は私たちには想像もできないほどに違いない。
しかし、ペ・ヨンジュンはただ嘆いているだけではなかった。
迷っても、かならず足を前に出し続けているのである。
何よりも、彼を支えているのは「1人ではない」という連帯意識である。
ファンの存在は、それが重圧となることもあるが、
究極的には「お互いに支えあう」関係を生み出している。
ペ・ヨンジュンは、2010年12月14日に
東京ドームで行なわれたイベントの中でこう語っている。
「どんなに辛くても苦しくても、お互いに慰めあえばそれを乗り越えることができますし、
お互いが手を取り合えば大きな夢に向かっていくことができます。
愛というのは、そのような力があるものだと改めて思いました。家族のみなさま、愛しています」
この言葉には、孤独と苦しみを乗り越えたペ・ヨンジュンの心情が込められていた
人は誰も、与えられた境遇の中で生きている。
それは、自分の努力だけでは変えられない絶対的な力によって支配されている。
だからこその「境遇」なのだが、そこでジッとしていても何も変わらない。
境遇を認めたうえで、同じ時代を共有する人たちと連帯すれば、
少なくとも考え方はガラリと変わる。
そして、ここが大事なのだが、「考え方が変われば間違いなく人生が変わる」のである。
そんなペ・ヨンジュンの興味は、「人間の未来」に向けられた。
それは、次の言葉からも明らかだ。
「子供たちの教育と地球環境に関心を持っています。
子供たちというのは、未来をつくる存在ですから、
たくさん学べるような条件や環境を作っていきたいと思います」
こう述べたペ・ヨンジュン。
子供の教育に強い関心を持っている彼が、今度は我が子を授かろうとしている。
このタイミングでぜひ勧めたいのは、
自らの俳優魂を子供に見せてほしいということである。
父親になるというのは、男にとって非常に大きな転機だ。
「果たして、自分は立派な父親になれるのか」
そういう不安から始まって、
「とにかく子供に恥ずかしいと思われないような堂々たる人生を歩んでいこう」
と思うに至るはずだ。
堂々たる人生とは何か。ペ・ヨンジュンの場合は、
俳優として素晴らしい作品を見せてあげることも、子供への大きな愛情となるだろう。
生まれてくる我が子のためにも、父親ペ・ヨンジュンの俳優復帰を望みたい。
「愛してる韓国ドラマ」ウェブサイト
文=康 熙奉(カン ヒボン)