ゆらぎつつゆく

添島揺之歌集。ツイッター感覚で毎日つぶやきます。色調主義とコラボ。

命なき

2017-11-23 03:06:00 | 添削


殺してもしづかに堪ふる石たちの中へ中へと赤蜻蛉 ゆけ    水原紫苑


難解だ。

意味がとれないこともないが、疲れる。

石は痛みを感じない。それを感じるようなものにしているのは、それは石ではないものが石になっているということか。

解しすぎだろう。おそらく作者はそこまで考えてはいない。

シュールとかいうものはごまかしと逃げを誘発する。
やるべきではない。


命なき石を殺めて茜散るゆふべの夢のまんじゅしゃげかな    揺之







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光来る

2017-11-22 03:05:51 | 添削


光年のしずかな時間草はらにならびて立てる馬と少年    井辻朱美


女の痛い性欲がにおう作である。

女性にも性欲はあるが、それははっきり言ってあからさまには出すべきではない。

女性の美を損なうからだ。

性欲で動くのは男の方がよい。


光来る遥かな星のささやきを野辺に並びて君と聞く夜    揺之






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相坂の

2017-11-21 03:05:47 | 資料


At Meeting Hill
Should the barrier be true,
Then
On parting, ever
Would I hold you here!

相坂の関しまさしき物ならばあかずわかるる君をとどめよ    難波万雄


逢坂をMeeting Hillと訳してある。それがおもしろい。

Barrierは関所のことだ。

英語の情感はなかなかわからないが、男女の別れのことではないことは、何となく伝わってくる。

男女の別れならば、外国人もまた違う感じで訳すだろう。


ふたたびのあふせのかたにくれなゐの色こききぬをきみにむすびき    揺之






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黒髪の

2017-11-20 03:05:36 | 添削


その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春の美しきかな    与謝野晶子


晶子はあまり好きではない。
人口に膾炙しているので、本歌取りなどには使うが、意趣はつたないと思う。
評価されているほど高くはない。

若さゆえの奢りを美しいというのは、高い心とは言えない。
若い頃の奢りは、苦いものである。
おそらく作者はそのことをあまり知らないのだろう。


黒髪の長きをことにたよりては花の時をぞあだに捨てぬる    揺之






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多いものは

2017-11-19 03:05:39 | 資料


またルイス・キャロルに興味を持った。長い詩なので以下は抜粋である。


男をば 憐れと思い
されどまた 苦き口調で
女言う 「多いものは少ないものよりも多うございますわ」

男答えて 「それは疑うべくもなく重く
数うべくもなく遠きいにしえよりの
真理です わざわざ言うまでもないのでは――」


この部分が決まりきった男女のすれ違いのようで面白い。
女は当たり前のことを重いと思っている。
男はそれは当たり前で特に重いと思ってはいない。

こういうすれ違いが時に苦いことになったりするのだが。


ゆふにじをともに見むとてわれをよぶ妹がかなしきさいはひの窓    揺之






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我が恋は人知るらめや敷妙の枕のみこそ知らば知るらめ

2017-11-18 03:05:52 | 古今抜粋

我が恋は人知るらめや敷妙の枕のみこそ知らば知るらめ    よみ人しらず


「敷妙の」は「枕」にかかる枕詞である。
枕詞は定型詩の中で重要な役割をする。
長い時の中で自然に凝りかたまってきた露玉のように美しい。

だれかわたしの恋を知っているか。知りはすまい。枕などのみが、知っているなら、知っていることだろう。

忍び隠している恋は苦しい。たれを思っているのか。思うことすら許されない人かもしれない。


敷妙の床に伏しつつかの人を夢に見む門くぐるもあへず    揺之





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年代記に

2017-11-17 03:07:15 | 添削

年代記に死ぬるほどの恋ひとつありその周辺はわづか明るし    上田三四二


字余りもこうなると重い。

歌としては崩れてくる。

破調ともいいがたく、歌いあげられている情感も平凡というより弱い。

作者は大病を患ったそうなのでそれゆえに人生が暗かったのだとは思うが。


死ぬるほどこひせし君を花に見てわれは病む手を伸ばしかねつつ    揺之






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もうゆりの

2017-11-16 03:05:44 | 添削

もうゆりの花びんをもとにもどしてるあんな表情を見せたくせに    加藤治郎


字足らずは好きではない。

字余りにはその余分な長さに情を含ませることができるが、字足らずは何かに何かが届かずに、情が落ちる感がする。

交情のあとの描写のようだが、ヘタだと感じる。


しらゆりのたふれしものをあはれみてなほさむとする君をまた欲る    揺之






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われよりも

2017-11-15 03:07:17 | 添削

われよりもみな遠き空見つめをりこの一群の自衛隊員    荻原裕幸


自衛隊というものを侮蔑する心には、男らしさというものへの嫉妬という、苦いものが含まれている。

若者はそれをごまかすとき、夢のような高い精神性を設定したがる。

それはときに、あとでかなり滑稽なことになる。


つはものの見る空あをくかなしくもなすべきことはなさざるを得ず    揺之





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袖ひぢて

2017-11-14 03:05:45 | 資料

Once I wet my sleeves
Scooping water
It’s frozen now
On this first day of spring,
Will the wind melt it, I wonder?


袖ひぢてむすびし水をこほれるを春立つけふの風やとくらむ    紀貫之


歌は人の憂いも時がくれば溶けてくるということを、春に託して詠ったものだ。

実際は人間の憂いはそんなに簡単に溶けはしない。

だが繰り返し春が来るたびに、溶けるような気がして、人は歌に詠うのだ。

その心は外国人でも同じなのだろう。


国境に割られし人の声ありて割るかたのなきその心かな    揺之






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