食道がんと闘う自然爺の活動

自然の中での暮らしに憧れ、自作の山小屋を起点に自然と戯れていたが、平成21年10月、食道・胃がんが見つかり手術。

『夢追人、恵曇(えとも)のイカ釣り』

2013年06月11日 18時00分04秒 | 趣味

仕立船のリスクは大きい。波浪注意報が出ない限り雨が降っても

少々波があっても出港する。場合によっては波浪注意報が出てなく船長の判断で

『今日は止めならんかね、海は荒れちょおで』と進言してくれる船頭がいる。何回か

お世話になった恵曇港の富士丸の船長がそうである。『折角来ただけん、行かい』

とだれかが言う。大体にそんな時には誰も反対はしないが弱い人は一抹の不安を

抱きながらの出発になる。

例え、船が出てから五分後に酔い帰港したとしても契約は成立するので返金され

なくても文句は言えない。しかし、気の毒がつて半額程度返してくれる良心的な船

頭も居る。船頭の進言を断わり出た日にはそれなりのお裁きを受けることになる。不

思議と船が走っている時は酔わない。沖に出るときマストにしがみついていないと振

り落されそうになったり荷物はゴロゴロ転げ回ったりする。船が波の頂上に乗り上げ

た次の瞬間、宙に浮いた船は下の支えがなくなりドスンと落ちる、その衝撃は尾底骨

を直撃する。魚は釣れない。船酔いしないため早目に食べた軽食や何もかも海の中

に、出るものがなくなり緑色の胃液が出てくる。陸が恋しい。

こんなにも人が苦しんでいるのに『行こう』と言った奴は船酔いを知らぬ男、『帰ろう

か』の言葉はなく、ひたすらに釣れない釣りに精を出している。誰だ、こんな奴を誘っ

たのはと恨めしく船辺にしがみつく。またゲロが出てくる。『もう、絶対に船には乗らん

ぞ』心に固く誓う。

さて、イカ釣りのきょうは快晴でベタ風の絶好のコンディション、一時間あまりの所でイ

カリを降す。船に弱いと言うとパラシュートアンカーを打ってくれる。船の揺れをとる為

に船の回りに落下傘のようなものを張りめぐらす。船頭は船の集魚灯に明かりをつけ

た。海面から七~八メーター下まで見える、下からはどんな風に見えるのだろか。

ポッカリと楕円の光をイカが見ているに違いない。

月夜の海は明かりが分散して少々の明かりでは効果がないそうだ。仕掛けは電気浮

木に似たゴンガラで明かりがつくようになっており、それを垂らし、糸を上下に動かし

みを感じたらスムースに巻き上げる。上げたらスミをかけられないようにソッと生簀に

れる。上手、下手はゴンガラの動かし方にあるのだろうが余り大きな差となっていな

ったような気がする。

皺の中まで日焼けした老船頭が使い古したまな板の上でイカ刺しを作ってくれる。不

揃いの素麺のようなイカ刺を山盛りにこさえて呉れる。透明に近い白で、甘みがあり口

の中で吸盤が吸いつくようだ。これは確かにうまいどんな信用出来る魚屋が『きょうのイ

カは生きがよく極上ですよ』と言っても、これに勝るものはない。

船頭は餌用のイカも切ってくれていた。

『これをつけて、置竿にしとけ鰺が釣れる』

イカを釣りながら傍らでは鰺釣りをする、結構、結構。

船辺の竿がカタカタと鳴った。急いでリールを巻く、強い引きだ。鰺に違いない。ゆっ

くりと確実に巻き上げる、三十センチは越す大鰺だ。刺身にもできる。船はイカと鰺の大

漁を土産に灯台の灯りを目指して動きだした。生きのいいイカはお手製の塩辛と洒落

てみょう。腹を開け丁寧に内臓を取り出す。墨袋を破らないように取り黄色の内臓だけを

分けておく。ゲソと切リ身の水をよく切りビンに入れ先程の内臓を破りかき混ぜる。

塩を入れ更にかきまぜ密封して冷蔵庫の中に入れて塩を回らせる。凡そ十日もすれば

自家製の塩辛の出来上がりだ。この間、辛抱よく待ち決して開けてはならない、と凝り性

のご仁の言葉。食べてみて未だ生臭みがあればもう少し時間をかける。


『夢追人、磯から沖へ、仕立船』

2013年06月10日 18時00分32秒 | 趣味

  大社のイサキ

趣向を変えて仕立て船で冲に出てみると別の釣りの世界がある。時期によって獲

物は違うが六月ころから十月一杯までは仕立てることができる。出雲は神々のふる

里、出雲大社のお膝もと大社町では梅雨時のイサキ、真鯛が狙い目。大社港は昔

々、出雲神話に登場する国譲り交渉の場とされた稲佐の浜(いなさのはま)の東側に

ある。

午後六時、出航する。定員は五〜六人で、船ならと淡い期待を胸に冲に出る。一時

ほど沖に出て船頭が魚群探知機をかけ群れを探し始める、私たちは試合開始が

近いことを知り一斉に竿の準備に取りかかる。餌の青虫をつけ船頭の合図を待つ。

無口そうな船頭は『やらっしゃい』とぶっきらぼうに指示した。リールをフリーにして糸

を出す、錘は二十号の重いものだが底の潮流は速く錘は船底から遥かに離れた方

向に流されている。底に着いたら少し巻いて当りを待てと船頭が声をかけた。何回も

そうする内に、ガツンと大きな当りがきた。リールを巻き、竿を上げまた巻く。ポイントに

当たったらしい、四十センチ程の形のいいイサキが上がってきた。仲間も後でリール

を巻き、満足そうな顔をしている。小さくても三十センチ前後のイサキがクーラーに投

げ込まれる。この日は大量で二十本近くのイサキを釣り上げた。

午後十一時を過ぎると船頭が『上げて、終わりだ』。

ご満悦の皆みなは不平もいわずサッサと支度を済ませた。釣りとは別に船の灯りに寄

ってくる魚を捕るのも仕立て船での楽しみだ。飛魚は出航の際、船と並行してまるで

『どうだ』と言わんばかりに飛んでみせる、その距離は優に百メーターはあろう。その飛

魚も灯りにつられ羽根を広げたままでゆっくりと泳いで船辺に寄って来る。それをタモ

ですくい捕る。この方法で十そこらは楽に捕れるがバタバタすると船酔いのもとになる

ので弱い人にはお奨めできない。

船酔いには屈辱的な思い出がある。友人たちと初めての仕立船で鯛を釣ろうと張り切

て出掛けた。この時は、知り合いの紹介で頼んだ船長さん、『多少の時化はあるが船

いは大丈夫か』と聞かれ、『敵を知り、己を知れば百戦して危うからず』の諺を知らな

俄釣師は『大丈夫です』と自信たっぷりに応えてしまった。湾の中を走っている時は

ノープロブレム、外海に出てみると船長のお言葉通り、海には大きなうねりが。

逸る心と共に釣りの開始。暫くすると隣の奴がゲーゲーやり出した。釣りはと言えば波が

大きく、底を取るのが難しいものの何とかなりそうと、やる気は満々。しかし、余りにも音

沙汰がないから、念のために上げてみると案の定、餌を盗られている。アタリが分からな

いからどうもカワハギの仕業らしい。何度かやっているとガツンと大きなアタリがあり、下

へ下へ抵抗する魚を巻き上げると30㌢弱の立派な鯛が釣れた。よーし、餌をつけて頑

張ろうと下を向いていたら、急にゲーと私も始まった。そういえば、多少なりとも頭が痛い

ような、むかつくような気分ではあったが船酔いを認識するようなものではなかったから、

安心していた。一度、ゲロするともう止まらなくなり、胃液が出尽くしても、ゲー攻撃は手

を緩めない。結局、4人全員が討ち死にとなり、出発から1時間ほどで帰港と相成った。

史上最短の船釣りだとか、根性なしと不名誉な言葉を頂き、その上に可愛そうだと船賃

を半額にしてくれた。

船を降りても揺れは収まらない。帰りの車の運転はゆっくりと注意深く、模範生のようだっ

た。こうした時の決まり文句『もう、2度と船釣りには行かない』


『夢追人、コメサ、アオザネ、ハブナガ、クロ』

2013年06月09日 18時00分04秒 | 趣味

クロ (クロアイ)は四季を通して釣りの対象になるが私が釣るのはこの時期なのでこ

こで紹介させて頂く。鱸は出生魚で名前も有名だがクロにも出生魚としての名前が

ある。小さい五~六センチほどのものをコメサといい、アオザネ、ハブナガ、クロ (ク

ロヤ)となっていく。

旬は梅雨時の"梅雨グロ"、冬の"海苔グロ"と呼ばれる。島根半島は岩海

苔の産地である。冬が厳しければ厳しいほど良質の岩海苔が育ち、荒れる日本海

の波が静まった時を見計らって岩海苔を摘む。昨今の一次産業は海苔摘みに限ら

ず後継者不足で岩海苔を採るのも老人の姿が目立つ。岩海苔はクロも好んで食べ

る為、針に海苔を巻いて釣る。

私のクロ釣りは本格的なものではない。梅雨の旬、冬の旬には出かけない。簡単に

釣りの出来る防波堤か危なくない岩場を選んで出かける。

岩場では岩に波が当り白い泡と潮流が交叉する場所にジャンボやオキアミを蒔餌

し魚を誘き寄せ安心させ餌を食べさせる。クロは警戒心の強い魚で目は抜群に

いい。引きは強く大きいものはおいしい魚だ。

ハリスは一号以下の細いものを使い、餌を浮かせるようにするため、あまり重いオモ

リをつけない。魚になったことのある太公望の報告だと、重い錘を付けると糸が垂直

に張り、それを嫌うのだと言う。目のいい、警戒心の強い魚には共通しているらしい。

近年の釣りにはオキアミ(南極オキアミ)は欠かせない。オキアミは南極の唯一の量

産品だろう。クジラの好物でクジラが食べ切れないで、その上に人間が捕っている

のだからどれ位、生息しているのか想像できない。オキアミの食料品としての研究

は遅れており摺り身にして混ぜて使用されている程度と聞く。身が柔いため捕った

らすぐ鮮度が落ちるのでボイルし冷凍にして日本に運ぶ。

遠い南極で捕れたオキアミが日本の片田舎で釣りの蒔餌で使われているとは馬鹿

げているやら、もったいないやら。

蒔餌をし、そこに糸を垂れると小さいものは直ぐに浮きを沈めるが手の平を越すよ

うなものは、たまにしか引かない。しかしクロの引きは面白くチヌ(黒鯛)竿を弓成り

にさせ釣りの醍醐味を満喫させてくれる。海の中では多少灰色がかったクロは釣

り上げると、墨汁よりも濃い真っ黒になる。料理はこれといったものは知らないが腹

を開けると磯臭い臭いがし途端に食欲が落ちる。

地元の漁師は小さいものをブッ切りにして食べるとおいしいと教えてくれたが試し

たことはない。本格的に狙えばチヌ同様にその引きの魅力に取り付かれ虜にな

ってしまうだろう。


『夢追人、海の青、緑のサヨリ』

2013年06月08日 18時10分40秒 | 趣味

鉛筆みたいだったサヨリは三十センチ余のものが混じる様になり群れを作り水面をゆ

うゆうと泳ぐ。その群れはグリーンベルトのように見える。サヨリの口は長いくちばしが

下側に延びその上にある。餌はジャンボを一つ選び(一センチ位で爪楊枝の太さ)小

さな針につける。針が見えると近くに来ても餌を食べないことから目はよさそうだ。エサ

をすーっと引くようにすると追い掛けて来てパクッと食いつく。

そこですかさず合わせないと餌を吐き出す、針を察知してのことだろう。このタイミング

が悪いと見ながら釣ることは出来ない。浮木をつけて浮木下、二十センチで釣る方法も

あるが餌を追わせた方が圧倒的によく釣れる。餌つけの面倒なことはこの上なし。辛抱

が先か釣りが先か。波止場などに居付いたものはまき餌などにつられて近場に寄って

来るので、それを釣り上げる。外海では回遊してきたものを、同じく撒き餌をして逃がさ

ないようにする工夫が必要になる。

行けばクーラー半分から一杯は釣れるが閉口するのは竿や手に小さなウロコがかさば

るほど付き、終いにはバリバリ剝れるほど付き、独特の臭いもする。それは洗っても取れ

難く厄介だ。刺身、お婆ちゃんが得意にしていたサヨリに味噌を挾んで焼いて食べる方

法、そして吸いものが代表料理。妻は近所に配った残りを開きにして薄塩をかけ干物に

していた。豊富にあるから出来ることであって、買ってはできないことだ。買えばいが、

釣りに行けば安いコストで沢山釣れる、採算のとれる数少ない魚の一つだ。


『夢追人、ネズミ取りとヒラメ』

2013年06月07日 18時00分11秒 | 趣味

この屈辱的な出来事と初めて釣ったヒラメは私の釣り史上、忘れられないものであ

る。七類港では鰺釣りが盛んで沢山の人が興じている。私は朝、早くから精を出し

てマアマアの成績を上げていた。隣の人が釣った一番小さな鰺を餌にヒラメ釣りを

していたので私も真似してやってみた。鰺の尾に針をつけて一メーター程の所に

錘をつけて底で泳がせる。それを置き竿にして鰺を釣る。どれ位たったのだろうか、

竿をチョンチョンとつつき始め、やがてググッと引き出した。隣のご仁、『慌てるな、

もっと持ち込んでから』とアドバイスしながら、私の動きを監視している。穂先が水面

に着くようになると『よーし、合わせて』と再び指示した。

手応えは十分、重い、しかし他の魚と違って引くと言うよりは、ただただ重い。水面

に顔を見せると立派なヒラメで刺身にも十分過ぎる。

これは、大儲けと!。帰り支度も軽快になる。何て単純な男だろう。関街道は車も少

ないしルンルンで帰ることができそうだ。すると二人の学生が車に乗せて欲しいと合

図していた。どうせ方角は一緒だし丁度、気分もいいとこだから乗せてやるか。

ブブーッとアクセルを吹かし加速していた所、横目に見えたものは紛れもなく速度

違反取締りのレーダーではないか、もしかして・・・もしかして。それは、もしではなか

った。

『あー、一寸出過ぎていますな。あそこに乗って』とバスを指差す。

レーダーのプリンタ—が打ち出した紙を見せられる『五十五キロですな、ここは四十

キロだから』『これ、郵便局でも銀行でもいいから納めるように、気をつけて運転して

くださいよ』

馬鹿野郎、取っ捕まったのに気をつけろだと、こっちとら動転してそれどころじゃな

いわい、糞ったれ、ババタレ、何で俺だけなんだ、一杯一杯俺よりスピ—ド出してい

るのが居るだろう、そ・い・つ、を捕まえろ。

車に戻ると、学生が気の毒そうな顔をして『スピード違反でしたか』と尋ねる、

『大したことはなかったよ、ハッハッハ』と見栄を張る。

心の中は『馬鹿たれ、聞きたくもないスピード違反なんて言葉を言うな』と罵る。それ

から沈黙の時間が過ぎ学生が言う場所で降ろしてやった。そこに着くまでの間、速

度を守りながら走る私を尻目に沢山の車がビンビンと追い抜いて行く。

世の中の矛盾を感じながら我が家に着きホッとする。しかし、本日の収支は六千円

の反則金と、このヒラメどっちがどうだろう。

迷える子羊よ,神に縋りなさい


『夢追人、鰺と外道のボラ』

2013年06月06日 18時00分29秒 | 趣味

初秋といえども残暑の残る頃、小鰺が釣れだす。小型で料理するといっても南蛮

漬けにするしかない。鰺は擬似針で釣る。一番下に網カゴをつけ、糸の途中に七

〜八本の擬似針をつける。カゴの中に蒔餌のジャンボ(網蝦の冷凍したもの)を入

れ、竿を上下させるだけで子供でも楽に釣れる。我が家の娘もよく連れて行った

が結構釣っていた。

鰺は引きが強い。顎がすぐに切れてしまうため強く持ち上げると皆外れてしまうの

でゆっくり丁寧に上げる。蒔餌が落ちるので周りにサヨリが寄って来る。本格的な

秋になる頃は三十センチ位になるだろうが今は二十センチの鉛筆みたいなものだ。

境港の通称、カニカゴは鰺釣りの家族連れをよく見かける。ここでは外道のボラが

鰺の仕掛けにかかり大騒ぎとなる。五十センチを越すような大物が食いつき竿を

面白いように曲げる。もったいのは、鰺の仕掛けを切られることでワンセット三百円

ほどの損失になる。

鰺は朝早くか、夕方によく釣れる。擬似針の釣りは五目釣りとなりカマス、力ワコが

釣れるので飽きることはない。

秋が更に深くなると美保湾で本格的な鰺釣りができる。こちらは夜釣りでカーバイ

トを集魚灯に使う。緣日の昔懐かしい臭いのする、あのカーバイトだ。小岩みたい

なカーバイトを下の缶に、上の缶には水を入れる。水の落ちる量をネジで調節しガ

スがたまったら火をつける。ボッと赤びた火が点く。ロープで吊るし海面スレスレの

所に置く。鰺は回遊魚で回ってくると左から右へバタバタと釣れだす。それを繰返

し、一旦去るとみんなが釣れなくなり、その一時に呆けているといくら頑張っても釣

れない。鰺は目がいいので糸は細い方がよく擬似針はサバか力ワハギの皮を使い

蛍光塗料で細工してあるものがいい。しかし、本物の餌に勝るものはなく面倒がら

ずに餌をつけていたので他人よりもよく釣れた。

大きさは塩焼きに丁度いい、二十五センチ弱のものと形が大体揃っていた。

ボラとなれば七類港でボラ専門にやったことがある。ボラにはソウ力ンボラと真ボラ

がおり真ボラは食べられるがソウカンはまずいと敬遠される。引きも味と同じでソウ

カンはどんなに大きくてもドテッと上がってくるのに対し真ボラの引きは強い。

ボラには歯がない為、餌は泥と一緒に口にし餌だけを残し泥を吐き出す。冬には

脂肪が目につく為、目が悪くなると言う。七類港は梅雨開け前はボラ釣り専門の人

で賑わう。外海に面しているので境水道のボラよりズッときれいだ。

歯がない為、ボラは釣餌も舐める感じで食べる。その為、浮木を引かないし当りが

判らない。隣の人は次々と釣り上げるのに私はいつも空振り、餌も同じ、仕掛けも

同じなのに何故もこう違うの?。

調べてみたら『ボラは餌を舐める、浮木に微かな変化があれば合わせる』とあった、

いくら待っても浮木を引き込むことはあまりなさそうだ。そういえば、浮木を持ち上げ

たリ、横にしたりしていたがあれが当りだったのだ。また、ボラ釣りの名人は『気配

で釣る』と難しいことが書いてあった。ここでは餌にイワシの切り身をつけそれを蒔

餌にも使用していた。お手本の通りにやってみたら、本当にその通りでみるみる上

達した。常連のお馴染みさんが、そっと教えてくれた。

『餌はな、ボラの切り身に砂糖をまぶして冷凍したもんがええで』それは事実でよく

釣れた。最初は近所の人に分けてあげていたが、やがては配る所も减り、遂には

釣ったものを放して帰るようになってしまった。


『夢追人、日吉津の岩ガキ』

2013年06月05日 18時00分43秒 | 趣味

海に潜ると言えば日吉津の岩ガキを忘れることはできない。カキは冬が旬である

のに対し岩ガキは夏が旬である。テトラポットに自生したものだが大きいものは二

十センチ余あり幾重にも折り重なるようについている。ドライバを用意したところで

手に負える相手ではない

大型のバールを準備し先の平べったい方を使い底から起こす要領で採る。殻を

割ってしまっては台無しだ。カキを起こしにかかると、おこぼれ頂戴とばかりに小魚

が群れくる、カキとカキの間に住むゴカイや微生物を食べにくる。失敗して殻を割

ると待ってました、とばかりカキの身を食べる。久々の御馳走というのだろう。

ポリバケツに山盛りの岩ガキは山の里に着く。炭火を起こし七輪の上で焼いて食

べるのがー番うまい。酢ガキにしても頂けるが私はあまり好きでない。

火が通ると少し口を開ける、ドライバを差し込みこじ開ける。中には海水が煮えてお

り丁度いい塩味をつけてくれる。

潜った後の快い疲れは生ビールとカキによって暫し癒される。家の狭い庭にゴザを

敷きビアガーデンが開店する。通りかかる親しい人に声をかけ酔った勢いで御馳走

を振る舞う。この場所はいつ行っても、誰からも文句を言われることはないから、欲し

いだけ採って持ち帰っていた。2~3年通ってから後、いつものように沢山のカキを

採り持ち帰り、焼いて食べようとしたらガソリンを呑んでいたのか、その臭いが強烈。

とても食べられるようなものではなかった。

たまたま、その時だけのことかどうかは分からないが、それ以来行く気がしなくなり足

が遠のいてしまった。

海は人々に沢山の潤いを与えてくれる。ふと南の空を見上げると夏を象徴するサソ

リ座に天の川が空を飾っている。

次は何をしょうかなー。


『夢追人、モズクとウ二』

2013年06月04日 18時00分00秒 | 趣味

加賀の潜戸から東に行くと美保関町に法田という小さな漁村がある。車で山裾まで

行き山肌に作られた小さな畑を横切り一山越えると波音が聞こえ出す。岩場ながら

泳ぎにも格好の場所がある。小さな入り江は岩が作ったプ—ルのようで多少の波が

あっても、その岩で波は遮られ子供の遊び場に格好の場所。

子供たちを何度か連れて行ったが私はその間にモズク採りに精を出す。海草に絡

みついたモズクを丹念に採り、また潜る。幾らでもあり、私だけしか知らない穴場の

ようだ。帰リは十五分ほどの山越え、モズクの重いことを考えると気が重くなる。

モズクはゴミや他の海草と選別するのが面倒臭い。が自分の採ったものだから自分

で始末するしかない。モズクには細い絹モズクと太い男モズクがあり、細い方が味

が絡み易いから美味しく感じるが、モズク本来の味は太い方が濃い。ここのものは

太いものだったから、ごみ掃除が少しだけ楽だった。

いつ行っても好きなだけ採れていたモズクがある日、根こそぎ無くなっていた。子供

たちの自然プールには天草がたくさんあり、その一角にモズクが共生していた。天

草とりの漁師がこの浅瀬まで船をつけて採ってしまっていた。翌年からは少々早く

行ってもモズクの姿を見ることはできなくなった。

しかし、ここには馬糞ウニが多く、そこそこのサザエと第二の海産物がある。小型ナ

イフ、モリ、スプーン、ザル、タッパーウェアーの小道具があると便利だ。イガ対策と

してモリを使って採ればいい。ウニはナイフで半分に割る。我々が食べるのは卵巣

の部分になる。ウニは雌雄同体で仮に雄であっても卵巣を持つ。割ったものをスプ

ーンの反対側で中をそぎ取る。ザルに入れ殻の残りや臓物を洗い流す、身は少な

いので相当量ないと食べるまでいかない。

成程、ウニが高い訳だ、こんなに面倒では少々の値段では割に合わない。側で子

供がせがむ、あっという間になくなる、サァもう一度潜るか。


『夢追人、暑さ凌ぐ素潜りは貝採り』

2013年06月03日 18時37分08秒 | 趣味

夏本番を迎えると暑さを我慢していることはない。海に行こう。暑さ凌ぎ、貝採りの

一挙両得となる。今年の夏は連日、猛暑が続いているが例年はいくら暑いといっ

ても一時間も潜れば二度と潜る元気がなくなり、ガタガタと震えがくるようになる。

ここは好場で岩場が続き冲合、百メーターほど歩いて行ける。途中の三ケ所は数

メータ泳がないといけない場所があり、遠くからこの岩場を眺めると南洋のトロピカ

ルな雰囲気を感じる。先端に迪り着くと大小の岩が波に洗われている。耳栓をし

て水中メガネをかけ大きく息を吸ってから潜る。

岩場はウ二、鋭った岩で足を怪我するので運動靴の軽いものと軍手は必需品。

それにアワビを起こすぺグも必要になる。

サザエは深く潜れば大きいものが採れるが壺焼きにする位のものなら手の届く所

でも採れる。海中に潜る、といっても一メーター位だろうが海草をかき分けると、ち

ょこんとサザエがいる。息の続く限りそこら中を探す、上手くすると一回の潜りで三

〜四個は採れる。また、潮通りのいい場所はサザエの棲家でもあり周囲の状況を

見ながら潜り決して無理をしてはいけない。岩場の波は気紛れで思わぬ方向から

寄せることがある。

三年前はサザエが異常繁殖した。夏本番になると海水浴客が増えサザエも段々

と少なくなっていくが、その年はよく潜る友人と三十分ほどで五十ケを楽に採れた。

この他にアワビ、トコブシも採れるが数は少ないし、アワビはせいぜい十センチもあ

れば大物。トコブシは6~7cmくらいのアワビと同じ格好をしたものだ。小さい貝だが一

応、刺身にして食べると食感はアワビと同じ。本格的な中華料理店ではトコブシを

使った料理をメニューとして揃えているが、一般的な所ではお目にかかれないから、

高級食材の下の部類に属すのかもしれない。

岩場にはべべ貝、ニナ貝と小さな貝がありニナ貝は塩茹でにしマチ針で身を取り

出して食べるとシッポの苦味が何ともいえず子供でもその苦みには抵抗がないらし

く次から次へと手が出る。以前は大きなものが沢山採れていたが、近年はスーパ

ーでも売られるようになり、海でも小さいものしか見られなくなった。

これと逆にムール貝、当地ではイ貝は潮通しのいい岩場、養分の多い船着場など

にビッシリとくっついている。残念ながら大きなものは簡単な場所ではとれないが、

4~5㌢のものを汁の出汁にすると美味しい『潮汁』ができる。

変わったものではフジッボで(鷹の爪みたいな貝)潮通りがいい岩の間におり、それ

を先の鋭い刃物で採りだし塩茹でにする。形はグロテスクだが磯の香りがプ—ンと

漂い中々の珍味である。


『夢追人、名人芸 鮎釣り』

2013年06月02日 18時20分45秒 | 趣味

夏を飾る魚は何と言っても鮎に勝るものはない。春先に途中の堰堤を越えなが

ら、遡上して来た鮎は夫々が自分の縄張りを持ち一国一城の主になったのだ。

鮎の解禁の日は待ちかまえた大公望たちがドッと繰り出し川は一日中、大賑わ

いになる。哀れな一国一城の主は自分の縄張りを侵す者には容赦しないで立

ち向かう習性があり、その習性を逆手にとったのが『友釣り』である。この習性は

簡単に見ることが出来る。国道五十四号線を南に行った所に木次町がある。そ

こで友人と川に潜り鮎の習性をこの目で見た。

一〜二メーター四方の陣地の中をくるくると廻りパトロールする。外部から他の

魚が来るとその魚をめがけて体当たりする。そして棲家だろうかそこで暫くジッと

してから同じことを繰り返す。鮎の主食は川苔で岩に生えているヌルヌルした感

じの苔だ。岩の苔の状態を見ればその縄張りの中に鮎がいるのかどうか判断で

きる。新しい食み跡(はみあと)があればその住民は達者で古ければ誰かの腹の

中という訳だ。

食み跡は横に筋を引いたようなものが幾筋もある。いい苔のある所には威勢の

いい鮎がいることになる。自分の食い扶持がなくなれば外のいい場所に映らなけ

ればならないが先人が居ればそれを追い出すしかない。そこで闘いが始まり勝

た方が居住権を手にする。総じて黒い岩の多い所は鮎がおり釣場探しの一つの

目安になる。友釣りはオトリ(無理矢理、他人の住居に連れていかれ闘いをさせら

れる)となる鮎の鼻に輪を通しそこに道糸をつけ、更に引掛け針をつけた糸を尾

の近くに止る。鼻は痛いし、尾の下の方は痛いしその上、望む訳でもないのに闘

いまで強いられ、とんでもない役目を仰せつかる。オトリの鮎は自分の意志で動く

のではない為、衰弱が激しく上手な人ほど一匹のオトリで多く釣る。釣れた鮎は次

のオ卜リになるが、針の掛かり場所によっては使えないのもある。掛かり場所が悪

く元気のないもの、頭に掛かり即死のものと、こればかりは釣り人には選択の余地

はない。上流から泳がせて当たりを待つ。鮎のいる所に行けばその答えは明白だ、

攻をした鮎は待ちかまえる針に突進するのだから一たまりもない、大体が頭から

尾に向けて体当たり攻擊する。ガツンとくる当たり、掛かったのが判らない小さな当

たり、熱練した人はどんな小さな当りでも見逃さない。釣りの中で熟練と技術の面

からいえば、鮎の友がけは間違いなくトップレベルであろう。素人でも釣れないこと

はないが釣果は歴然としている。流れの見方、鮎のいそうな場所の見方、オトリの

泳がせ方、取り込み、何れを比較してもその違いが大きく釣果が差となって表れ

る。友人に連れて行って貰った時も、私が十数匹、釣る間に四,五十匹は釣って

いた。川底は角がゴツゴツしていたであろう石が長年の流れで角を丸く削られ、そ

の上に苔が生えていて、とても滑りやすい。滑り止めのついた靴か草鞋を履かなけ

ればならない。長尺の竿を操り上流からゆっくりとオ卜リを泳がせ当りを待つ、川の

中では死闘が繰り広げられているだろうが外界は至って静かで、せせらぎを耳にし

ながら何と優雅なことか。人は罪作りだ。川蜻蛉が水辺を舞い、色鮮やかな川蝉が

低空飛を披露してくれる。そんな情景の中でウットリしていると強い当たりが鮎釣り

していることを教えてくれる。これは結構な引きだぞ、注意してと・・。流れの急な所

は踏ん張りがきかずバランスを崩し流されてしまうことがある。竿を立て自分の方に

鮎を誘き寄せる、これが難しいのだ、二匹の鮎は夫々が違う方向に引っ張るし流れ

はあるし。

やっとの思いで手繰り腰からタモを取リすくう。手にとるとブーンとスイカともキュウリ

とも似つかないような香りがする。

漁を終え、帰り支度をする。鮎の持ち帰りには秘訣がある。クーラーの中に水を入

れ氷水を作る、出来るだけ冷たい方がいい。その中に鮎を入れると変色しないで

綺麗な色のままで新鮮な鮎を持ち帰ることができる。

鮎は、塩焼きが一般的で蓼酢で頂くとおいしい。これも天然ものは脂が少なく身も

締まっており美味だ。砂地に生息する鮎は砂を嚙んでおり腹わたを食べるとザリつ

とくるので岩場のものがいい。鮎は生き延びても尾花が穂を出すころ、川を下り待

ち受ける粢にかかってしまう。人が放ち再び人に捕らわれる。哀しき柳葉よ。

 


『楽符が読めない人のためのソフト』

2013年06月02日 18時18分58秒 | 趣味

私め、音楽は好きなのに楽譜を見てもどのようなリズムなのか、それすらもイメージ

出来ない楽譜音痴である。自分の知っている曲でも楽譜に従って弾いていくと、そ

れらしくなるであろうが、そこに問題があるから、曲がベターッとなってしまう。

だから余り知らない曲でも、ある程度は知っているはずなのに、全く違う曲のように

なってしまうので、何とかしなければと手を尽くしてきた。

ハンディータイプのシーケンサーのようなものは、楽譜を入力すれば伴奏をつけて

くれる優れもの、製造中止の中古品をオークションでゲット。勿論、値段は論外の

安価。1台目は未だ慣れない内に音が歪み使い物にならなくなり、2台目をゲットし

たが音符入力が面倒で練習の途中。

PCのフリーソフトで簡単に音符入力でき、再生してくれるものを探してみた。該当

のソフトは幾つかありダウンロードして使ってみたが、どれも結構面倒で私のように

簡単に・・・なんてものには出会いがなかった。そうする内にカワイ楽器の体験ソフ

トに行き当たり、そいつをダウンロードし15日間体験してみた。入力方法は今まで

のものの中では一番簡単だし再生のスピードを可変できるから、難しい所ではス

ピードを落として聞けば分かり易い。

グレードがあり私には楽譜をスキャナー処理してくれる機能は不要だから、一番安

価なスコアメーカー7パレットで十分のようだ。

体験を済ませたらダウンロード版を購入してみようと考えている。


『夢追人、ウナギ突き』

2013年06月01日 16時47分24秒 | 趣味

  夏

見た鰻が頭から離れない。鰻を捕るには、つけ針をしておく方法があるので人の

少ない大橋川の方がよさそうだ、三十本ほど、つけ針を作ってやってみたが徒労

に終わってしまった。待つのではなく、こちらから仕掛けてみよう。ウナギを探し出

してモリで突けば捕れるかもしれないと思い立った。丁度その場所は岩の下が砂

地っぽいので外れてもモリ先端を痛めることはなさそうだし。岸辺から中を照らし覗

き込む、ユラユラと陽炎のような流れに鰻を発見した。

岩の間から頭をチョコンと出している。すぐに明かりを消してモリのゴムを一杯に絞

り見定めておいた場所を再び照らし、ゆっくりと鰻の上に運ぶ。『名無さん』とモリを

放つ、ズバッと当たった瞬間に鰻が暴れそこら中は濁り何も見えなくなる。流れが

濁りを流し元の姿を取り戻すと頭の近くにモリの刺さった鰻が見えた。鰻は岩の中

に残された身体に渾身の力を振り絞って岩肌に踏ん張って外には行くまいとして

いる。引っ張っても一向に動かない。時折、岩の中の身体が濁りを送り出してくるだ

けの膠着状態が続いた。シビレを切らして無理して引き出そうと引っ張ると皮一枚

の状態で突かれていただけだった為、そこが切れて姿が見えなくなっていた。

モリが身体の中心近くに刺されば少し時間はかかるがウナギは体力が無くなり穴

から引っ張り出すことができる。中心を狙っているつもりでも命中率は低い。また別

の場所では持ち上げようとして外れてしまったりして中々うまくいかない。そこでモ

リをもう一本使用するようにしたら、ほぼ完璧になった。一の矢の後に二の矢を放

ち捕獲を確実にする。つまりモリを2本つかう。例え最初のモリのささり具合が悪く

も、濁りが流され鰻を確認できれば2本目のモリを打ち込むことができ、ゲットできる

確率はぐんと増す。この方法で大きいものは八十センチ近いものを捕ることがあっ

た。天然物の鰻は脂が適量で養殖物とは比べものにならない。大きさでいえば五

十センチ級が一番おいしい。持ち帰り、長い板の上にキリで頭を刺し新聞紙で身

体を押さえ背中から包丁を入れて三枚におろす容量で骨を外す。慣れないと肝

心な身が骨につき骨の蒲焼きを頂かなければならなくなってしまう。

毎晩のように大橋川畔に通っていたが、この辺りで自殺者が上がったと聞いてか

ら気持ち悪くなり行く気がしなくなった。


『夢追人、宍道湖の手長蝦(テナガエビ)』

2013年05月31日 17時49分10秒 | 趣味

 

境水道にはしばしのお別れで水の都は松江市の宍道湖に戻ってくると、もう手長

蝦が捕れる時期だ。宍道湖は周囲47Kmで広さは全国7番目の湖で大橋川を通じ

て中海、、鱸釣りで通う境水道に繋がり日本海へと出る。汽水湖だから海の魚、淡

水魚が混じり合い、ここで獲れるスズキ、モロゲエビ(ヨシエビ)テナガエビ、ウナギ、

アマサギ(ワカサギ)、 シラウオ、コイ、シジミ(ヤマトシジミ)を宍道湖七珍味という。

しかし、モロゲエビの漁は殆どなく庶民の間ではテナガエビを代品として扱ってい

る。スーパーなどでも手長蝦は売られているがモロゲエビは見かけることは殆どな

い。エビタモの網はテグスで出来ていて直径が十センチ程の小さいもの。店では

この網の部分しか売っていないので細い竹に一メーターの柄をつける。天気のい

い風のない穏やかな夜にサーチライトを持って湖岸からそーっと湖底を照らして

みると、そこら中に手長蝦を見つけることができる。岩の上で光を受けた眼がキラリ

と赤い色で光る。

蝦を捕るには静かに蝦の後からタモを持込みかぶせて捕る。蝦は後方への瞬発力

は強く速い速度で逃げる為、前からタモを入れると絶対に捕れない。要領さえ覚え

ればいくらでも捕れるようになる。波があるといくら光を当てても蝦が見えにくいので

穏やかな日でなれければならない。

大きいものは胴体が十センチ近くにもなり、まるでザリガニのようにも見える。色は黒

くなりみるからに不美味そうで実際に食べても殻が堅く味は落ちる。その場所で捕り

つくしたら次の場所に移動していく。人がどの辺で捕っていたのかよく見ておく方が

いい、人の後に行くと逃げた蝦が未だ岩の上に戻っていない。

手長蝦と言うだけあって手は長く大きくなればなる程、胴体と手のバランスが合わな

くなるみたいだ。長さが五~六センチ位のものが一番おいしい。残酷ではあるが鉄

板を熱くした上に生きたままの蝦を乗せ、塩コショウをまぶす、身体が朱色になった

ら食べ時である、殻のまま食べられる。

食べて美味しいものを捕ればいいのに、それを忘れて捕る時は大きいものにこだわ

ってしまう。湖底に眠るボラや鮒達が眠りを妨げられ迷惑そうに場所を移す。時には

ウナギが岩の間から顔を視かせている。本職の漁師は直径、五十センチ、長さ一メ

ーター余の芝を束ねたものを幾つもロープでつなぎ湖底に沈めておき朝、それを上

げる。芝の間に手長蝦、鰻が入り込んでいるのでそれを捕る。ヌカ団子をマキエにし

釣る方法もあるが大方の人はタモで捕っている。


『夢追人、甲イカ、青手カニ』

2013年05月30日 18時57分13秒 | 趣味

端境期の甲イカ

鱸釣りが下火になると私はちょっとした端境期を迎える。境水道の反対側、美保

湾は甲イカとダンダラ(イシダイの子供で七つの縞模様がはっきりと見えるので七

縞とも呼ばれる)のシーズンになる。水道に屯していた大公望は一斉に美保湾に

移動してこちらの釣りに精を出し始める。

ゴンガラと言われる魚の形をした擬似を使うのだが後端には針がつけられており

魚と違えて来た甲イカがそこに掛かる。釣り方は簡単で、遠くまで投げてはゆ

っくりとリールを巻き続ければいい。ゴンガラは魚が泳いでいるように見せないと

イカは寄っては来ないからシャクリながらこの仕草を繰り返す。

甲イカが掛かるとジンワリと重くなり、まるでビニール袋か雑巾を掛けたような感じ

になるが引きはない。そうすると今までとは巻き方を変えなければならない、つま

り針には外れ防止の掛かりがないのでスムースによどみなく巻き取るのがコツで

ある。しゃくったりすると折角の獲物が直ぐに外れてしまう。足元まで来たら慎重

に吊り上げ一度、地面に降ろす。するとそこで墨を吐くがこの墨は衣服につくと

落ちにくく厄介なことになる。甲イカは身体の中に発泡スチロールのような軽い

サーフボード状の甲を持っており別名モンゴルイカとも呼ばれ大きいものは五十

センチ近くまで成長する。食べるには手頃な三十センチ以下のものが釣れ、刺

身よりも塩焼きか煮付けの方がおいしい。身体の割には、手は短くズングリムッ

クリしており、釣りたては背中の色が頻りに変わる。興奮しているのか相手を威

圧しているのか。

甲イカシーズンの陽は柔らかくポカポ力と気分もよく何と長閑な釣リだろう。しか

し釣れない時はこんな馬鹿々しい事はない。餌は木切れで作った擬似、甲イカ

以外には何も釣れないので楽しみは少ない。

美保湾の春の風物詩の一つである。

 

横泳ぎの名手、青手カニ 

また、境水道に戻ってみる。夜になると青手蟹が捕れる。大きめの柄の長いタ

モを用意して岸壁の明かりの下で蟹を待つ。青手蟹は瑭泳ぎの名手で流れが

あろうがお構い無しでスイスイと達者な腕前を見せてくれる。タモの気配を察知

されると見事に方向転換、気持ちのいいスピードで逃げ箸にも棒にもかからな

い。予め進むと思われる所にタモをつけておき多少の角度と深さを調整する位

で構えていないと捕らえることはできない。側面からすくうことなどとてもできるこ

とではない。深さの目測を誤るのが一番の敗因である。

普通、蟹といえば、岩場で波に洗われながら岩の間をチョロチョロしているが青

手蟹は中々、手強い相手だ。今日の収穫は青手蟹、カラッと唐揚げにすれば

殻まで食べられる、塩茹でも身がビッシリとありオツなものだ。餌は要らないし体

力,時間だけが原価の安上がりな遊びだ。


『夢追人、鱸釣りと陣痛』

2013年05月29日 18時05分09秒 | 趣味

次女がこの世に生を受ける前夜、正確にいうと昭和四十八年五月十八日、未だ境

水道は鱸狙いで頑丈な人は釣りをしていた。この日は潮の止まりが遅く夜半前に好

調期がきた。特筆する釣果を上げたのではないが中々、潮が止まらずイライラしなが

ら待った記憶がある。というのは、妻の陣痛はいつ始まってもおかしくない状態だっ

た。父母が手伝いに来てくれているので気楽に出かけられた。潮が止まり凡そ一時

間は粘ったと思う、午前様を過ぎぼちぼち翌日の心配をする時刻になった。急いで

帰り支度をし家に着いたのは午前二時過ぎ、明かりをつけると妻が目を醒ました。

『どげな?』

『ウン、まだええみたい』

『えーか、今日はな遅いけん、陣痛はいけんで』

『そげなこと言ったって』

と、短い会話をして深い眠りについた。熟睡すると短時間でも随分寝たような気に

なるが、その時も同じで妻の起こす声で目が醒めた。

『お父さん、陣痛がきた』

『えー、こげな時間に』

こればかりは、薬を飲んで頑張れと言う訳にはいかない。未だ夜も明けぬ午前五

時、車を飛ばす。

『痛たたっ』と苦しそうな声を出す。

『頑張れよ』の励ましは母と私の声。

だれも居ない日赤病院で急患受付を探す。

陣痛が来たのでと説明するのに手際が悪く診察の段にならずイライラさせられた

が、ようやくのことで分娩室に入った。後は母が見てくれることになり私は家に帰

り再び眠りについた。寝たのも束の、母からの電話があり出産したものの臍の

緒が首に巻きつき酸欠で出てきたため顔は紫色で、目には充血みたいな跡があ

る。命には別状はないとのことだった。男か女かと、えらく気にする人もいるが私

は絶対に女の子だと思っていたし、名前は既に決めてあったので男の子と聞いた

ら驚いたかもしれない。

これっぽっちも男の名前を考えていなかつたから・・・

波瀾万丈の半日であったが、今日からは家族が一人増え四人になった。

 

イカナゴで小物釣り

大物は期待できないがもう一つ面白い釣りをしよう。連休を過ぎてしまうと境水道

にイカナゴの群れが発生する。大きさは三~四㌢の細長いドジョウの小型みたい

な魚。小さいが色々な魚からも好物にされている哀れな魚だ。イカナゴの脂をイカ

の短冊につけて鯛釣りをすると余りにもよく釣れるので瀬戸内海の鯛漁では禁止

されていると聞く。イカナゴは蒸して食すと美味だと母からも聞いたことがある。身

が細いのでこれ専用の網を作る。子供の昆虫採集用の目の詰んだ網を買い、網

けを外し腰の強い八番線で輪を作り網を縫いつける。

古くなり使わなくなった竿をその柄にして網を取り付ければ完成。イカナゴをすく

い上げポリバケツの中に生かしておきこれを餌にしてセイゴ(二十五センチ前後の

もの)を釣る訳だ。餌採りで楽しみ更にセイゴを釣り楽しむことができる。口に針を通

し軽い錘を着けて流れの中をゆっくりと引き(この動作をサビキと言う)イカナゴを泳

がせる。竿は振出しでリ—ルなどは不要で二・五間もあれば十分である。スーッと流

すと穂先がククッと軽く引き込まれる、これは挨拶みたいなもので充分に食いつい

てはいない、イカナゴを引っ張っていると思えばいい。引く方向に送り込み食べや

すい状態にしてやる、辛抱との闘いになるが十秒ほど待っても拉致があかないこと

だってある。

ここぞと思うタイミングで合わせると穂先を水中に持ち込まんとする勢いで引く。その

感触を楽しみながら釣り上げていくのだが合わせが早過ぎて随分と失敗した。この

時期はメバルの旬になる時期でもあり当地ではタケノコメバルがこの餌に食いつき

セイゴと半々の釣果となる。この釣りはことの外、気に入りしばしば東の空が白むの

をみた。夜は冷え込みが残っているのでアノラックとセーターは必需品であることを

付記しておく。


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