競馬マニアの1人ケイバ談義

がんばれ、ドレッドノータス!

千可ちゃん3

2013年07月15日 | 千可ちゃん
 翌日は土曜日、千可ちゃんが通う高校はお休みです。千可ちゃんが約束の時間最寄りの駅前に行くと、オカルト研究会の4人がすでに揃ってました。
「み、みなさん、早いですねぇ」
「みんな、こーゆーこと好きだからねぇ」
 と、浜崎会長。
「あ、そうだ」
 と、千可ちゃんが入部届けの用紙を取り出しました。もちろん、千可ちゃんの署名入りです。
「会長さん、これ?」
「えっ?」
「入部届け?」
 オカルト研究会の4人はびっくりです。
「よろしくお願いします」
「あ、ありがとう」
 浜崎さんはその用紙を受け取りました。それを見てた蓑田さんは、
「こ、これでまた部に戻れる…」
 その発言に千可ちゃんはびっくり。
「ええっ?」
「あは、本当のこと言うとね、オカルト研究会はもともと部だったの。でも、4人になって部の最低人員を満たさなくなったから、仕方なく会として活動してたのよ」
 ここまでは浜崎さんの発言。ここからは福永さんの発言。
「会だと学校から活動費が出ないから、部になるとほんと助かるだ」
「あは、そうだったんだ」
 千可ちゃんはちょっと苦笑いです。
 パスが来ました。出発です。

 バスの中、オカルト研究会改めオカルト研究部は、後ろの方に陣取りました。千可ちゃんの後ろに座った浜崎さんは、なんか千可ちゃんの頭髪が気になってます。
「あなた、なんでこんなに髪の毛、短くしてるの?」
「あは、すごいくせっ毛なもので、あまり伸ばせないんですよ」
「へ~、私と一緒だ」
 と、浜崎さんは両手を後頭部に回しました。すると、なんと、美しくカールしたロングヘアが取れてしまったのです。実は浜崎さんは千可ちゃん同様ショートヘアで、ウィッグを使ってました。千可ちゃんは関心しきりです。
「ふぁ~」
「どう、羽月さんも使って見る?」
「い、いいんですか?」
「いいわよ、入部してくれたお礼に、1つ上げるよ」
「あ、ありがとうございます」
 千可ちゃんの目がキラキラ輝いてます。実は千可ちゃんは、ロングヘアに憧れてたのです。もし自分がロングヘアだったら、男の子にモテモテになれると信じてます。ま、もともとちっちゃいんだから、ロングヘアにしてもあまり意味がないと思いますが。

 オカルト研究部の5人がバス停でバスから降りました。そこはちょっとした商店街。千可ちゃんがリモートビューイングで見た場所です。が、リモートビューイングで見た光景は夜でした。と、千可ちゃんは思わず口にしてしまいました。
「今日は昼間なんですね。この前は夜だったのに」
 その一言に蓑田さんが反応しました。
「あれ、なんで夜行ったこと、知ってるの?」
 福永さんも浜崎さんも城島さんも気になってます。千可ちゃんは心の中でやばいと思いつつ、ここはごまかすことに。
「この前話したじゃないですか。夜行ったって」
 浜崎さんはさらに疑問が増したようです。
「誰が夜行ったって言ったの?」
「城島さん」
「え、私?」
 突然の指名に城島さんはびっくり。
「ほら、2日前、城島さんの家で」
 城島さんは千可ちゃんに介抱されてるシーンを思い浮かべました。
「あの時かなあ…」
「あの時ですよ」
 城島さんはまだ疑問に思ってますが、他の4人は納得したようです。でも、城島さんはあのとき「廃ホテルに行った」とは言いましたが、「夜廃ホテルに行った」なんてことは一言も言ってませんよね。

 小さい商店街を過ぎると、5人は右に曲がりました。そこから約1km。ようやく廃ホテルが見えてきました。昼間見ても何か出てきそうな廃ホテルです。
「どう、羽月さん、何か見える?」
 城島さんが千可ちゃんに問いかけてきました。
「だから、私は霊能力者じゃありませんって!」
 城島さんは心底千可ちゃんが霊能力者だと思ってます。が、ここだけの話、他の3人はかなり懐疑的なようです。
 蓑田さんがビデオカメラを取り出しました。
「よーし、今日こそは絶対幽霊を録るぞーっ!」
「ビデオカメラですか?」
 この千可ちゃんの質問に、今度は福永さんが答えました。
「この前ずーっと撮影してたんだけど、なぜか初めの部分しか映ってなかったんだ。ちゃんと録画したはずなのに」
 千可ちゃんはここでピーンとひらめきました。
「今日は私が録りましょう!」
「えっ?」
「こーゆーときは、新人が録るものですよ」
 と、千可ちゃんは蓑田さんからビデオカメラを受け取りました。そして録画方法を蓑田さんから手短に教えてもらいました。
 実はこれは、千可ちゃんの作戦です。昨日千可ちゃんが追っ払った悪霊が戻ってきているかもしれません。千可ちゃんの襲撃を隠れて交わした悪霊がいる可能性もあります。そんなのがビデオカメラに映るとまずいので、幽霊が見える千可ちゃんが悪霊を避けて撮影する気なのです。
 でも、千可ちゃんが見たところ、廃ホテルに悪霊の気配はありませんでした。5人で廃ホテルの中をくまなく歩きましたが、やはり千可ちゃんの目には、ザコ以外の悪霊は映りません。もちろん、千可ちゃんがリモートビューで見た浜崎さんの暴走はありませんでした。
 5人が廃ホテルの玄関前に戻ってきました。
「どう、何か映ってる?」
 と、福永さんが千可ちゃんが持っていたビデオカメラを受け取りました。さっそくビデオカメラに内蔵されてるミニ液晶画面で再生。それを福永さん、浜崎さん、蓑田さん、城島さんが見てます。
「今回はちゃんと録画されてる」
 この発言は福永さん。蓑田さんがそれに答えました。
「きっと何か映ってるはず。大画面のテレビで見れば…」
 ここからがすごかった。バスで来たんだからバスで帰るものと思ってたら、なんと浜崎さんがスマホでタクシーを呼んだのです。しかも2台。前の1台は福永さんと蓑田さんと城島さんが乗り、後の1台は浜崎さんと千可ちゃんが乗りました。
 車中、福永さんたちはずーっと幽霊のことを話してました。が、浜崎さんと千可ちゃんは、なぜかウィッグの話をしてました。浜崎さんと千可ちゃんは話が弾んでるようです。