■こならの森133号■1999.5発行
表紙 「こならの若芽」
C・o・n・t・e・n・t・s
■こならの森6月号■
3p としこの巻頭詩「かたつむり」
4p-7p JC・ルネッサンス
8p ヤンバル・お店紹介『ホップの森 』
9p 誕生しました 萩原忠之さん&みゆきさん
10-11p ショート「謎」
12-13p 駅舎問題
14-18p 特集 行楽情報
19p 現代国語 たま
20-21p 協賛店・MAP
22p 辛口映画評「 」
23p 書評「 」・絵本紹介「 」
24-25p クイズ/タウン情報
26-29p インフォメーション98
30p こならの森から「春も本番~」
■■■■■■
【本文抜粋記事】
JC・ルネッサンストーク
とちのみ学園長 高沢 茂夫さんより、21世紀を迎えようとしている今、福祉と地域とのかかわりあい、福祉のこれからについて、お話をうかがいました。
■PROFILE
高澤 茂夫(たかざわ しげお)
1949年 佐野市生まれ。
~福祉の専門性を追求していく~
・兵藤 最初に、とちのみ学園についてお話ください。
・高澤 とちのみ学園は、現在、知的障害者更正施設で定員80名の全寮制の施設です。開園は、昭和34年、知的障害児施設として発足し、昨年、40周年を迎えました。栃木県内では、3番目に歴史のある施設となっております。当時は、障害者に対しての理解も少なく、開設者は大分ご苦労されたと聞いております。施設も時代のニーズによって少しずつ変化しておりまして、昭和30年代になると、知的障害児、成人施設とできてきました。しかし、社会の高度化、生活レベルのUPなどにより養護施設の役割が見直され、児童施設も、養護学校が確立し、また施設に対する親達の考え方の変化、それに加えて少子化も関係し、全国的には定員割れを起こした施設も出てきました。
この学園も40年近く児童の施設として運営してきましたが、この問題の他に入所児童の重度化、滞留化の問題が起きまして入所している方達の入れ替え、すなわち、回転が減ってきました。20年位前ですと、成人になれば親元に帰るか、成人の施設にいくか、或いは社会人として自立するという形でしたが、実社会へ自立していく人達は、年々少なくなり、卒園をすると代わりに重度の人が入所してくる。成人の施設はどうかというと、家庭でも受け入れられないという理由で、20歳迄しかいられない児童施設に、40歳を越える人達がでてきて、平均年齢も上がってしまいました。
実質的には成人施設と同じになってしまった、また、施設内を活性化させる事もあり、建物を改築したのを契機に2年前に成人の施設に移行しまして、現在に至っております。現在、80名の利用者の内、71名が重度認定を受けた重度者です。
・兵藤 とちのみ学園ができた頃のからの時代背景をお聞きしましたが、現状の問題点についてお話ください。
・高澤 福祉の分野にも、大きな変化が起こっています。1つには民間企業が参入し、競争の原理が働いてくる。そういう中で、「福祉の専門性とはなにか?」という事についてあらためて考えなければならない。福祉の専門性を追求する訳ですが、それ以前にフィロソフィーの問題、自分なりの哲学、人生観を持っていなければこれからは勤まらないと思っております。二つめの問題点として、労働時間短縮の問題があります。こういう施設というのは、どうしても時間短縮が難しい。人を扱う仕事であり、全寮制で24時間お世話しなければなりませんから、時間短縮を行うと、どうしても手薄になってしまう。時間短縮されて手薄になった部分をどのように補っていくかということも大きな問題です。そこで、NPOやボランティアの必要性がでてくる訳です。その中には、とちのみ学園として、どのようにボランティアを育成していくかという事があり、それがとちのみ学園だけですとなかなかボランティアが育成できないので、一番良いのは地域をあげてのボランティア組織の構築になります。そういうものに我々も援助もしていかなければいけないし、逆に援助をしてもらう、ということになります。
・兵藤 互いが違いを認め合いながら、互いの善意が生かされる地域社会を私たちも創っていきたいと思います。
~21世紀への大きな変革の波~
・兵藤 今、ビッグバンといわれるように、世の中の仕組みが大きく変わってきていますが、福祉の分野において、今後、変化していくだろうと思われることにはどんなことがありますか。
・高澤 今、まさに福祉にもビッグバンが始まっております。福祉というものは、弱者救済という考え方から始まっていますから、その心は、当然、永遠に変わらないとは思いますが、ややもすると「やってあげる」という意識、イメージが強いようですが、これからは、そんな考えではやっていけませんね。福祉施設も転換期にきております。まずは、介護保険の導入に伴って、大きく措置という考え方、形態が変わってきます。知的障害の施設もいずれ同じように変わるということになるでしょう。形態が変わるということは、今後は個人対個人の問題になってくる。要するに、「あなたは弱者であるからここに行きなさい、お金は出すから」と上から与えられる形態から、「自分で選んでここに来ます、ですから私にこれだけのサービスをしなさい」という形態になってきます。自己決定であり、自己で責任を持つということが、大きな変化かと思います。これからの施設というのは、まず、お互いが対等である、ということが前面に出てくると思われます。
・兵藤 どのようにでしょうか。
・高澤 措置制度が廃止され、契約制になります。しかし、障害を持った人達が対象ですから、それらの下支えがなければ機能しませんね。下支えとなる権利保障としてのアドボカシーサービス(代弁サービス)が必要となってきますし、その一つに成年後見制度という新しい制度ができました。いくら対等だからといっても、知的に障害がある人や、痴呆性老人の方達は正当な契約が出来るのか、というような問題がある。民法の中で禁治産者、準禁治産者制度というのがあります。この人達は意志決定が難しいとされ、強制的に後見人や代理人がいて、この人の財産などについても自分では勝手に出来ないという状況があります。それらを踏まえた上で、幅をもう少し広げて、お互い対等な立場でいくという流れの中で、介護保険と同時に成年後見制度も法制化されてスタートされるということになります。
後見人には、法的な後見人と契約上の後見人という2種類がありますが、すべて契約というもので成り立っています。施設を選ぶ、サービスを選ぶなど。たとえば、この人に合ったサービスは何なのかということを、対象者と後見人が話し合いながら選び、契約を交わし、その後、適正なサービスができているかどうかを後見人がチェックをする、という制度に変わってきます。では、お金がない、解らないという人はどうなのかとなりますと、契約された後見人ではなく、法的に制度として後見人をつけることができるようになります。自分で選んだ後見人や、法的な後見人が十分な働きをしていない場合には、やめさせることもできます。後見人は、法務省の管轄になりますが、それとは別に、厚生省の管轄で、地域福祉権利擁護事業制度という、日常的な身の回りのお世話をしてあげる制度もスタートします。ですから、2つの制度が同時にスタートすると思われます。その制度の中には、後見人や、世話人が適正な働きをしているかという検査をする機関を作りまして、弁護士や医者や福祉士などの専門性を持った後見監査人といわれる方たちが、総合的な判断をし、罷免にすることもできるようになります。後見監査人については、現在、弁護士会等でもやろうということで動いているようです。
・兵藤 人の人としての根源を見つめ直すこととなりますね。
・高澤 そうですね。「対等な立場」を維持するということが、21世紀の福祉施設の流れになると思います。ある意味では厳しく、また、ある意味ではあたりまえのことですね。施設として考えると、民間企業も参入してきますし、競争原理、市場原理の導入があります。そんな中で、我々としては、ヒューマンサービス業として、徹底して利用者の要求に沿ったサービスの提供を一人一人が考えていかなければいけないと思っております。また、情報の開示ということも重要になります。それは、どの程度のサービスがこの施設にあるのか、どういった財務管理がされているのかなどについても、施設を選ぶ場合には必要な情報となります。ですから、我々の学園でもインターネットなどを使用して、こういったサービスをしていますというようなことを公開する事が最低の条件になると思います。アメリカなどでは既にそういった状況になっています。福祉関係の職員も、もともと善意の心を持っているからこのような施設に就職するわけですから、そういった心はあたりまえのことですね。前にも述べましたフィロソフィーにも関係しますが、根本にある人間性をどう考えるか、或いは、人権感覚をどう捉えるか。そういう人こそが施設に入らなければダメになってしまう。ゆくゆくはサービスの低下になり、潰れていくということですね。~地域住民との福祉の輪を広げたい~
・兵藤 施設を利用する側の意識の変化を何かお感じですか。また、知的障害者の方達に地域住民が接している状況を見て、園長先生はどう感じていらっしゃいますか。・高澤 知的に障害を持った方の大半は、出産前後に何らかの要因により障害が出たと言われてますが、昔は、家族に障害を持っている人がいると恥であり、表には出さない。また、施設に入所したとすると、出来るだけ遠い所という考えがあったようです。ここ15年位前からは施設にいられるのであればなるべく近い場所を、また、親が元気な内は手元に置いておきたいという考え方に変わってきております。我々のような学園には入所させないで、手元に置いて養護学校に通わせる、ゆくゆくは入所の施設にお願いしたい、というように親達の考え方が変わってきております。
施設の人達も、在宅の人達も、ひとりの地域住民でありますから、皆で支え合っていかなければいけない、という考え方が必要かと思います。まだまだ浸透したかということについては疑問がありますが、それが、ノーマライゼーションの理念でもあると思います。(若者ばかりの世の中は、非常に活発かもしれないが、普通の社会とは言えない。社会には、子供もいる、赤ちゃんもいる、老人も数パーセントいるのが普通です。一定の率でいろいろな人が存在して社会を形成していることが、ノーマルな社会ですね。その中に障害者もいる―それが地域社会というものです。)ですから、私達が地域で暮らしていく為にはどういうことをしなければいけないのか、どういうことをしてもらいたいのか。健常者も障害者も同じなんですね。障害を持った人達が地域で暮らしていく為に、我々も特に意識なく接し、援助することが必要かと思います。 地域というものに対して、いかに我々がお手伝いをしていくのかということが問われますし、施設のこれからの課題でもあります。そういったことが地域の流れかと思います。今迄施設は、利用している人達の生命の保障、健康の維持、安全しか考えていなかった。今後はそうではなく、健常者も含めた地域の人達と共にいかに幸せに暮らすか、人作りの中で我々のするべき事は何か、障害を持った人も成すべき事は何かということについて、もっと地域の人達も交えて考えていかなければいけないと思います。
・兵藤 具体的な取り組みについてお聞かせ下さい。
・高澤 この4月12日からレスパイトケアということで、障害児の学童保育を始めました。これは、地域の障害を持った学童保育として考えた場合には、保護者の方達が、一日中、大変な苦労をされていますから、一時、預けることで休息をしてもらいましょうということが、レスパイトの主旨となっております。さらに、子供達にも情緒の安定と創造性を育ててもらおうということで始めました。これは、佐野地区だけではなく、安佐地区が対象となっております。この事業が定着しますと、ここを核として、衛星のように各所にグループホームを作っていく。グループホームとは、障害者の下宿のようなものですが、地域の2~6人位でアパートとして暮らし、我々がサポートをしていくということを考えています。当然、我々が援助をするけれども、我々の援助だけではどうにもならないので、より身近にかかわる町内の方や近所の方にも目を向けていただく、しかし、逆に彼らも、隣近所の人達に対し、お手伝いをしますよと。そして、少しずつ福祉の輪が広がっていくというように、1~2年後には作っていきたいと考えています。それから、人に優しい町づくりを推進していこうということで研修会なども参加をしておりますし、我々はソフト面を充実させたいと思っております。
・兵藤 最近、「五体不満足」の著者乙武さんがテレビに出演していたり、いろいろ話題になっていますが、彼の、「目の悪い人は眼鏡をかけていますが、足の悪い人が車椅子に乗るということと同じではないか。」「一部をとって、そこがみんなと違うからといって線を引く社会は、違っているのではないか。」という言葉を聞きましたが、彼が爽やかにブラウン管に映る社会は、以前から比べると変わってきているんだなと感じますね。
・高澤 障害を持った人達に対して健常者が意識を持つようになったことは、彼の貢献も大きいと思います。
彼も福祉全体の質を上げる目的で出演している面もあると思うので、大いに出演し
てもらって、全体のレベルを上げていくということは良いことだと思います。やはり、福祉も経済情勢によって変わってきますので、一時、景気の良かった頃などは福祉に対して、社員教育として少しボランティアをしましょうというような芽が出てきまして、現に問い合わせもいくつかありましたが、昨今の景気の悪化によってそれどころではなくなってしまいました。しかし、個人個人の芽生えというものは、何となく感じることができますね。私共も以前よりも利用者と共に施設外に出るようにしていますが、手をさしのべてくれるまではいきませんが、目に見えて笑顔で迎えてくれる人が多くなりましたね。これからは、そのあたりも力を入れていかなければいけないと思っています。
ただ、子供の頃からの教育も大きなウェイトを占めると思っております。私共の学園は、赤見幼稚園や旗川保育園の子供達が来てくれておりますが、いつも仲良く一緒に遊んでくれていますね。一度でも学園に入所している人達に接する事があると、あまり抵抗がなくなりますね。先入観がない分だけ早いですね。やはり、子供の心の教育は必要なのかと思います。・兵藤 私たちも歯科検診などで、園児と触れ合う機会がありますが、大変勉強になります。地域との関わり合いの中で、NPOどうしのネットワークが必要かと思い、本年、NPOサポートセンター設立に向け活動しています。
こちらの学園のような施設どうしの、ネットワークはあるのですか。たとえば、県内外などでの横のつながりなどがあると協力し合えると思うのですが。
・高澤 県外の施設との交流は、それ程はありませんね。私共のような知的障害者の施設が集まって、愛護協会という組織を作っております。これは全国的な組織ですが、県内の施設も、現在は50を超えた施設が加入しております。事務局は、県社協内にありますが、加入施設間の交流や勉強会などは時々行っております。特に近隣の施設は行事などの交流や情報交換などはお互いに協力し合っておりますが、ネットワークとなると、まだまだですね。学園は、平成13年目標に障害者支援センターの機能を持たせた通所施設を建設する予定で準備をしておりますが、それらネットワーク作りには支援センターが軸になるものと思います。期待してください。また、ネットワークをうまく作動させる為にも、先程触れましたボランティアの育成は大事なことだと思います。今、佐野青年会議所ですすめているNPOサポートセンター設立などにも、我々は期待をしています。NPOという仕事にもいろいろな分野があるかと思いますが、これからは、安佐、あるいは両毛圏というエリアを意識して、いかに貢献できるかを私共も考えなければいけないと思いますし、NPOが潤滑油的な役割を担ってもらうような行政と、施設の中にNPOの組織が入ってくればうまく流れるなと思っています。
・兵藤 今日は、お忙しい中、ありがとうございました。
表紙 「こならの若芽」
C・o・n・t・e・n・t・s
■こならの森6月号■
3p としこの巻頭詩「かたつむり」
4p-7p JC・ルネッサンス
8p ヤンバル・お店紹介『ホップの森 』
9p 誕生しました 萩原忠之さん&みゆきさん
10-11p ショート「謎」
12-13p 駅舎問題
14-18p 特集 行楽情報
19p 現代国語 たま
20-21p 協賛店・MAP
22p 辛口映画評「 」
23p 書評「 」・絵本紹介「 」
24-25p クイズ/タウン情報
26-29p インフォメーション98
30p こならの森から「春も本番~」
■■■■■■
【本文抜粋記事】
JC・ルネッサンストーク
とちのみ学園長 高沢 茂夫さんより、21世紀を迎えようとしている今、福祉と地域とのかかわりあい、福祉のこれからについて、お話をうかがいました。
■PROFILE
高澤 茂夫(たかざわ しげお)
1949年 佐野市生まれ。
~福祉の専門性を追求していく~
・兵藤 最初に、とちのみ学園についてお話ください。
・高澤 とちのみ学園は、現在、知的障害者更正施設で定員80名の全寮制の施設です。開園は、昭和34年、知的障害児施設として発足し、昨年、40周年を迎えました。栃木県内では、3番目に歴史のある施設となっております。当時は、障害者に対しての理解も少なく、開設者は大分ご苦労されたと聞いております。施設も時代のニーズによって少しずつ変化しておりまして、昭和30年代になると、知的障害児、成人施設とできてきました。しかし、社会の高度化、生活レベルのUPなどにより養護施設の役割が見直され、児童施設も、養護学校が確立し、また施設に対する親達の考え方の変化、それに加えて少子化も関係し、全国的には定員割れを起こした施設も出てきました。
この学園も40年近く児童の施設として運営してきましたが、この問題の他に入所児童の重度化、滞留化の問題が起きまして入所している方達の入れ替え、すなわち、回転が減ってきました。20年位前ですと、成人になれば親元に帰るか、成人の施設にいくか、或いは社会人として自立するという形でしたが、実社会へ自立していく人達は、年々少なくなり、卒園をすると代わりに重度の人が入所してくる。成人の施設はどうかというと、家庭でも受け入れられないという理由で、20歳迄しかいられない児童施設に、40歳を越える人達がでてきて、平均年齢も上がってしまいました。
実質的には成人施設と同じになってしまった、また、施設内を活性化させる事もあり、建物を改築したのを契機に2年前に成人の施設に移行しまして、現在に至っております。現在、80名の利用者の内、71名が重度認定を受けた重度者です。
・兵藤 とちのみ学園ができた頃のからの時代背景をお聞きしましたが、現状の問題点についてお話ください。
・高澤 福祉の分野にも、大きな変化が起こっています。1つには民間企業が参入し、競争の原理が働いてくる。そういう中で、「福祉の専門性とはなにか?」という事についてあらためて考えなければならない。福祉の専門性を追求する訳ですが、それ以前にフィロソフィーの問題、自分なりの哲学、人生観を持っていなければこれからは勤まらないと思っております。二つめの問題点として、労働時間短縮の問題があります。こういう施設というのは、どうしても時間短縮が難しい。人を扱う仕事であり、全寮制で24時間お世話しなければなりませんから、時間短縮を行うと、どうしても手薄になってしまう。時間短縮されて手薄になった部分をどのように補っていくかということも大きな問題です。そこで、NPOやボランティアの必要性がでてくる訳です。その中には、とちのみ学園として、どのようにボランティアを育成していくかという事があり、それがとちのみ学園だけですとなかなかボランティアが育成できないので、一番良いのは地域をあげてのボランティア組織の構築になります。そういうものに我々も援助もしていかなければいけないし、逆に援助をしてもらう、ということになります。
・兵藤 互いが違いを認め合いながら、互いの善意が生かされる地域社会を私たちも創っていきたいと思います。
~21世紀への大きな変革の波~
・兵藤 今、ビッグバンといわれるように、世の中の仕組みが大きく変わってきていますが、福祉の分野において、今後、変化していくだろうと思われることにはどんなことがありますか。
・高澤 今、まさに福祉にもビッグバンが始まっております。福祉というものは、弱者救済という考え方から始まっていますから、その心は、当然、永遠に変わらないとは思いますが、ややもすると「やってあげる」という意識、イメージが強いようですが、これからは、そんな考えではやっていけませんね。福祉施設も転換期にきております。まずは、介護保険の導入に伴って、大きく措置という考え方、形態が変わってきます。知的障害の施設もいずれ同じように変わるということになるでしょう。形態が変わるということは、今後は個人対個人の問題になってくる。要するに、「あなたは弱者であるからここに行きなさい、お金は出すから」と上から与えられる形態から、「自分で選んでここに来ます、ですから私にこれだけのサービスをしなさい」という形態になってきます。自己決定であり、自己で責任を持つということが、大きな変化かと思います。これからの施設というのは、まず、お互いが対等である、ということが前面に出てくると思われます。
・兵藤 どのようにでしょうか。
・高澤 措置制度が廃止され、契約制になります。しかし、障害を持った人達が対象ですから、それらの下支えがなければ機能しませんね。下支えとなる権利保障としてのアドボカシーサービス(代弁サービス)が必要となってきますし、その一つに成年後見制度という新しい制度ができました。いくら対等だからといっても、知的に障害がある人や、痴呆性老人の方達は正当な契約が出来るのか、というような問題がある。民法の中で禁治産者、準禁治産者制度というのがあります。この人達は意志決定が難しいとされ、強制的に後見人や代理人がいて、この人の財産などについても自分では勝手に出来ないという状況があります。それらを踏まえた上で、幅をもう少し広げて、お互い対等な立場でいくという流れの中で、介護保険と同時に成年後見制度も法制化されてスタートされるということになります。
後見人には、法的な後見人と契約上の後見人という2種類がありますが、すべて契約というもので成り立っています。施設を選ぶ、サービスを選ぶなど。たとえば、この人に合ったサービスは何なのかということを、対象者と後見人が話し合いながら選び、契約を交わし、その後、適正なサービスができているかどうかを後見人がチェックをする、という制度に変わってきます。では、お金がない、解らないという人はどうなのかとなりますと、契約された後見人ではなく、法的に制度として後見人をつけることができるようになります。自分で選んだ後見人や、法的な後見人が十分な働きをしていない場合には、やめさせることもできます。後見人は、法務省の管轄になりますが、それとは別に、厚生省の管轄で、地域福祉権利擁護事業制度という、日常的な身の回りのお世話をしてあげる制度もスタートします。ですから、2つの制度が同時にスタートすると思われます。その制度の中には、後見人や、世話人が適正な働きをしているかという検査をする機関を作りまして、弁護士や医者や福祉士などの専門性を持った後見監査人といわれる方たちが、総合的な判断をし、罷免にすることもできるようになります。後見監査人については、現在、弁護士会等でもやろうということで動いているようです。
・兵藤 人の人としての根源を見つめ直すこととなりますね。
・高澤 そうですね。「対等な立場」を維持するということが、21世紀の福祉施設の流れになると思います。ある意味では厳しく、また、ある意味ではあたりまえのことですね。施設として考えると、民間企業も参入してきますし、競争原理、市場原理の導入があります。そんな中で、我々としては、ヒューマンサービス業として、徹底して利用者の要求に沿ったサービスの提供を一人一人が考えていかなければいけないと思っております。また、情報の開示ということも重要になります。それは、どの程度のサービスがこの施設にあるのか、どういった財務管理がされているのかなどについても、施設を選ぶ場合には必要な情報となります。ですから、我々の学園でもインターネットなどを使用して、こういったサービスをしていますというようなことを公開する事が最低の条件になると思います。アメリカなどでは既にそういった状況になっています。福祉関係の職員も、もともと善意の心を持っているからこのような施設に就職するわけですから、そういった心はあたりまえのことですね。前にも述べましたフィロソフィーにも関係しますが、根本にある人間性をどう考えるか、或いは、人権感覚をどう捉えるか。そういう人こそが施設に入らなければダメになってしまう。ゆくゆくはサービスの低下になり、潰れていくということですね。~地域住民との福祉の輪を広げたい~
・兵藤 施設を利用する側の意識の変化を何かお感じですか。また、知的障害者の方達に地域住民が接している状況を見て、園長先生はどう感じていらっしゃいますか。・高澤 知的に障害を持った方の大半は、出産前後に何らかの要因により障害が出たと言われてますが、昔は、家族に障害を持っている人がいると恥であり、表には出さない。また、施設に入所したとすると、出来るだけ遠い所という考えがあったようです。ここ15年位前からは施設にいられるのであればなるべく近い場所を、また、親が元気な内は手元に置いておきたいという考え方に変わってきております。我々のような学園には入所させないで、手元に置いて養護学校に通わせる、ゆくゆくは入所の施設にお願いしたい、というように親達の考え方が変わってきております。
施設の人達も、在宅の人達も、ひとりの地域住民でありますから、皆で支え合っていかなければいけない、という考え方が必要かと思います。まだまだ浸透したかということについては疑問がありますが、それが、ノーマライゼーションの理念でもあると思います。(若者ばかりの世の中は、非常に活発かもしれないが、普通の社会とは言えない。社会には、子供もいる、赤ちゃんもいる、老人も数パーセントいるのが普通です。一定の率でいろいろな人が存在して社会を形成していることが、ノーマルな社会ですね。その中に障害者もいる―それが地域社会というものです。)ですから、私達が地域で暮らしていく為にはどういうことをしなければいけないのか、どういうことをしてもらいたいのか。健常者も障害者も同じなんですね。障害を持った人達が地域で暮らしていく為に、我々も特に意識なく接し、援助することが必要かと思います。 地域というものに対して、いかに我々がお手伝いをしていくのかということが問われますし、施設のこれからの課題でもあります。そういったことが地域の流れかと思います。今迄施設は、利用している人達の生命の保障、健康の維持、安全しか考えていなかった。今後はそうではなく、健常者も含めた地域の人達と共にいかに幸せに暮らすか、人作りの中で我々のするべき事は何か、障害を持った人も成すべき事は何かということについて、もっと地域の人達も交えて考えていかなければいけないと思います。
・兵藤 具体的な取り組みについてお聞かせ下さい。
・高澤 この4月12日からレスパイトケアということで、障害児の学童保育を始めました。これは、地域の障害を持った学童保育として考えた場合には、保護者の方達が、一日中、大変な苦労をされていますから、一時、預けることで休息をしてもらいましょうということが、レスパイトの主旨となっております。さらに、子供達にも情緒の安定と創造性を育ててもらおうということで始めました。これは、佐野地区だけではなく、安佐地区が対象となっております。この事業が定着しますと、ここを核として、衛星のように各所にグループホームを作っていく。グループホームとは、障害者の下宿のようなものですが、地域の2~6人位でアパートとして暮らし、我々がサポートをしていくということを考えています。当然、我々が援助をするけれども、我々の援助だけではどうにもならないので、より身近にかかわる町内の方や近所の方にも目を向けていただく、しかし、逆に彼らも、隣近所の人達に対し、お手伝いをしますよと。そして、少しずつ福祉の輪が広がっていくというように、1~2年後には作っていきたいと考えています。それから、人に優しい町づくりを推進していこうということで研修会なども参加をしておりますし、我々はソフト面を充実させたいと思っております。
・兵藤 最近、「五体不満足」の著者乙武さんがテレビに出演していたり、いろいろ話題になっていますが、彼の、「目の悪い人は眼鏡をかけていますが、足の悪い人が車椅子に乗るということと同じではないか。」「一部をとって、そこがみんなと違うからといって線を引く社会は、違っているのではないか。」という言葉を聞きましたが、彼が爽やかにブラウン管に映る社会は、以前から比べると変わってきているんだなと感じますね。
・高澤 障害を持った人達に対して健常者が意識を持つようになったことは、彼の貢献も大きいと思います。
彼も福祉全体の質を上げる目的で出演している面もあると思うので、大いに出演し
てもらって、全体のレベルを上げていくということは良いことだと思います。やはり、福祉も経済情勢によって変わってきますので、一時、景気の良かった頃などは福祉に対して、社員教育として少しボランティアをしましょうというような芽が出てきまして、現に問い合わせもいくつかありましたが、昨今の景気の悪化によってそれどころではなくなってしまいました。しかし、個人個人の芽生えというものは、何となく感じることができますね。私共も以前よりも利用者と共に施設外に出るようにしていますが、手をさしのべてくれるまではいきませんが、目に見えて笑顔で迎えてくれる人が多くなりましたね。これからは、そのあたりも力を入れていかなければいけないと思っています。
ただ、子供の頃からの教育も大きなウェイトを占めると思っております。私共の学園は、赤見幼稚園や旗川保育園の子供達が来てくれておりますが、いつも仲良く一緒に遊んでくれていますね。一度でも学園に入所している人達に接する事があると、あまり抵抗がなくなりますね。先入観がない分だけ早いですね。やはり、子供の心の教育は必要なのかと思います。・兵藤 私たちも歯科検診などで、園児と触れ合う機会がありますが、大変勉強になります。地域との関わり合いの中で、NPOどうしのネットワークが必要かと思い、本年、NPOサポートセンター設立に向け活動しています。
こちらの学園のような施設どうしの、ネットワークはあるのですか。たとえば、県内外などでの横のつながりなどがあると協力し合えると思うのですが。
・高澤 県外の施設との交流は、それ程はありませんね。私共のような知的障害者の施設が集まって、愛護協会という組織を作っております。これは全国的な組織ですが、県内の施設も、現在は50を超えた施設が加入しております。事務局は、県社協内にありますが、加入施設間の交流や勉強会などは時々行っております。特に近隣の施設は行事などの交流や情報交換などはお互いに協力し合っておりますが、ネットワークとなると、まだまだですね。学園は、平成13年目標に障害者支援センターの機能を持たせた通所施設を建設する予定で準備をしておりますが、それらネットワーク作りには支援センターが軸になるものと思います。期待してください。また、ネットワークをうまく作動させる為にも、先程触れましたボランティアの育成は大事なことだと思います。今、佐野青年会議所ですすめているNPOサポートセンター設立などにも、我々は期待をしています。NPOという仕事にもいろいろな分野があるかと思いますが、これからは、安佐、あるいは両毛圏というエリアを意識して、いかに貢献できるかを私共も考えなければいけないと思いますし、NPOが潤滑油的な役割を担ってもらうような行政と、施設の中にNPOの組織が入ってくればうまく流れるなと思っています。
・兵藤 今日は、お忙しい中、ありがとうございました。