弁理士近藤充紀のちまちま中間手続33
拒絶理由 進歩性
請求項1に係る発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、前者は、担体が多孔質担体であるのに対し、後者は、担体としているだけで具体的に記載されていない点(以下、「相違点1」という。)、前者は、燃焼工程において、燃焼時間を0.3~7時間と規定しているのに対し、後者は、燃焼時間に関して記載されていない点(以下、「相違点2」という。)、及び、前者は、触媒の再生が炭化水素精製の「現場外」で行われるのに対し、後者は、再生される場所に関して明確に記載されていない点(以下、「相違点3」という。)で相違する。
上記相違点1について検討すると、触媒担体として多孔質担体を採用することは、通常行われることであり、当業者にとって、容易になし得ることである。
上記相違点2について検討すると、燃焼工程及びオキシハロゲン化工程の温度及び時間は、それぞれ失活した触媒に沈積したコークスの燃焼及び触媒のオキシハロゲン化をするのに必要な温度及び時間であり、失活した触媒の状態に応じて、適宜設定し得るものである。
上記相違点3について検討すると、触媒の再生を「その場」で行うか、あるいは「現場外」で行うかは、製品の製造や触媒の再生の効率やコスト等を考慮して当業者が適宜選択し得ることであるから、引用例1に記載された触媒の再生を、現場外で行うことは、当業者にとって、容易に想到し得ることである。
上記相違点1,3,4についての検討は、引用例1を第一引用例とした場合の相違点1-3についての検討と同様である。
上記相違点2について検討すると、引用例2では、ハロゲン化セクションは、ハロゲンと空気が存在する雰囲気下で行われるから(第5頁右上欄第3行-6行,第5頁右下欄第14行-第6頁左上欄第4行)、請求項1に係る発明のオキシハロゲン化工程と差異はない。
補正書
【請求項1】
・・・薄層型移動床炉または薄層回転型の炉を使用することを特徴とする方法。
意見書
本願発明では、燃焼工程(1)およびオキシハロゲン化工程(2)が、薄層型移動床炉または薄層回転型の炉を使用して行われている。引用文献1および2には、燃焼工程およびオキシハロゲン化工程に使用される炉について移動床が記載されているが、本願発明のような薄層型のものは記載されておらず示唆する記載もない。
本願発明のように、現場外で薄層型移動床炉(装置は固定され、触媒の床が、重量により装置の頂部から底部に移動するもの)または薄層回転型の床の炉(好ましい形態;回転装置であり、触媒は、薄層の形態で回転しながら移動する)を用いることにより、以下の効果を得ることができる。
(a)薄層型の炉を使用することが非常に簡単である。
これに対して、引用文献1または2に記載されるような移動床を用いた連続式の現場再生器(CCR)は、技術(高費用)およびその作動の両方の点で複雑である。
(b)引用文献1または2に記載されるような移動床を用いた連続式現場再生器法(CCR)では、作動中に問題があると触媒中の炭素含有量が高レベル(10~15%、通常は約5%)に増加する。触媒の移動床によるCCR法が現場外(すなわち、リフォーミング法とリンクされる)または現場で行われたとしても、約200℃の温度を上昇させなければ、全ての高レベルの炭素を燃焼させることは可能でなく、これは、再生不可能な触媒のダメージにつながる。このような不利益点を回避するために、ガスの流量は、大幅に増加させられるべきである。しかしながら、問題は、このような大量のガスを再処理することである。すなわち、より容積の大きいプラント、費用が増大する。
これに対して、本願発明のように薄層型床を使用することにより、熱量が効率よく除去され、ガスの大きい流量は必要でない。
(c)引用文献1または2に関連するCCRでは、触媒は触媒床を維持する格子上に固定され、触媒が不規則なビーズ状等であると、触媒に損傷を与えるホットスポットを生じさせる場合がある。このため、引用文献1または2に関するCCRでは、触媒は規則的なビーズ状に固定されなければならず、水簸選別機(elutriator)が、粒子の損耗から生じた微細物または破損ビーズを分離するためにCCR再生器に提供されなければならない。
これに対して、本願の薄層型床(特に回転型のもの)では、熱が効率よく除かれホットポイントが発生しにくく、また、ホットポイントが生じても、触媒質量中に希釈されるので、ホットポイントは問題にならない。
したがって、本願では、押出物、不規則な床等の触媒の全ての形態を受け入れることができ、引用文献1または2に関するCCRのような追加的な費用のかかる設備を設ける必要がない。
結論として、薄層型移動床炉または薄層回転型の炉を用いる本願発明は、多くの点で引用文献1または2の方法からは得られない効果を有するので、本願の請求項1は、引用文献1または2と比較して進歩性を有している。
続く
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