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ちまちま中間手続33の4

2024-12-21 21:15:04 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続33の4

拒絶査定
 出願人は、意見書にて、以下の点を主張する。 
(1)先の拒絶理由通知書で提示された引用文献2および4には、燃焼工程(1)とオキシハロゲン化工程(2)を連続的に行うことは開示されていないので、先の拒絶理由通知書で提示された引用文献1と引用文献2または4を組み合わせたとしても、本願発明の請求項1の方法に想到することは容易ではない。 
(2)本願発明の請求項1の薄層回転型の炉は、引用文献4のロータリーキルンに相当しないので、引用文献1の方法に引用文献4のロータリーキルンを組み合わせたとしても、本願発明の請求項1に想到することは容易ではない。 

(1)について 
 引用文献2および4には、炭化水素処理用の使用済み触媒の再生方法において、現場外で行うことが開示されている。したがって、引用文献1および3に記載の炭化水素処理用の使用済み触媒の再生を、引用文献2および4に基づいて現場外で行うことは、当業者であれば容易であるといえ、また、現場外で行う具体的な再生処理についても、当業者が適宜設定し得る設計的事項といえる。 
(2)について 
 使用済み触媒再生に用いる炉を選択することは、当業者が適宜なし得る設計的事項といえ、当該炉に公知の炉である薄層回転型の炉を選択することで、格別顕著な作用効果を奏するとは認められない。 
 その余の事項については、拒絶理由通知書に記載したとおりである。 
 以上の通り、出願人の意見書における主張は採用できず、本願請求項1~13に係る発明は、引用文献1~4に記載された発明に基いて、当業者が容易にできた発明といわざるを得ないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

審判 理由
 本願発明では、「現場外で」、薄層回転型の炉を用いることにより相当多量のコークスを含む大量の使用済み触媒が再生される方法が開示される。 
 本願発明において解決される問題は、塩素を含み、かつ、相当な量のコークスを含む使用済み改質触媒の相当な量を再生しながら、生じた塩素化ガスを管理することである。 
 これに対して、特開平02-290259号公報(以下、平成19年8月7日付けの拒絶理由通知書に従い、これを、引用文献1とする)および特開昭51-072989号公報(以下、引用文献3とする)には、使用済み触媒の再生を現場外で行うことは開示されていない。以下、引用文献3を最も近い従来技術とみなして説明する。引用文献1には、触媒組成が開示されておらず、引用文献3に開示された再生の工程のみであり、引用文献3より関連性が乏しいと考えられるからである。 
 本発明は、現場外で薄層回転炉を用いてかなりの量のコークスを含む大量の使用済み触媒を処理し得る点で引用文献3とは相違する。 
 また、実際に、引用文献3の方法では、その第5頁右上欄12行~同頁右下欄9に記載されるように、塩素の周知の環境毒性に拘わらず、塩素は、燃焼工程において介在し得る。 
 引用文献3の方法では、燃焼ゾーンにおいて空気を有するが、塩素混合物がない方法が提案される。空気は、燃焼ゾーンにも導入され、前記ゾーンから抽出され、再循環させられる。それ故に、塩素は、燃焼ゾーンにおいて回避され(第5頁右上欄12行~同頁右下欄9)、塩素除去のために再循環ガスが還元処理されている。 
 しかしながら、引用文献3において説明されるように、引用文献3において開示された方法は、使用済み触媒が制限された量の炭素質物質(コークス)を含む統合設備における連続方法である(第4頁左上欄12行~同頁右上欄9行)。触媒が改質反応器と再生器との間を流通する時に、再生器中の耐用時間は、制限され、それ故に、炭素質物質の量が制限されるべきであるからである。 
 特開昭60-48149号公報(以下、「引用文献2」という)には、コークスの燃焼(空気)のための、ロータリーキルンによって構成される触媒再生器を教示する。明らかに、それは、方法が現場外で操作されることおよび大量の使用済み触媒を処理することを可能にする。当業者であれば、触媒を再生するためにそのような炉を用いることに想到することができるだろう。 
 しかしながら、引用文献3には、塩素が燃焼ゾーンに入ることから回避されなければならないことが教示されている。したがって、引用文献3を理解する当業者は、燃焼のための1つの回転炉およびオキシ塩素化のための一つの回転炉を用いるべきであると考えるので、本願発明の請求項1のように、「工程(1)および(2)は一つの同じ薄層回転型の炉で順 次行われる」構成とすることに想到することはできないと考えられる。


 前置審査の結果 特許査定

自分の中では最長
決め手になる部分をつかめれば、もっと早期に決着をつけることができたかもしれません。
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ちまちま中間手続33の3

2024-12-21 21:11:22 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続33の3

拒絶理由 3回目 進歩性
(引用例1を第一引用例とした場合) 
 引用例1には、白金族群より選ばれる少なくとも一つの貴金属と、担体とを含む炭化水素処理の使用済み触媒の再生方法であり、次の連続する少なくとも二つの工程: 
・酸素を含む気体の存在下に、350~490℃の温度で行われる、該触媒上に存在するコークスの少なくとも一つの燃焼工程(1)、 
・空気の制御された雰囲気下に、350~550℃の温度で、0.5~1時間、ハロゲン化合物の存在下に行われる、少なくとも一つのオキシハロゲン化工程(2)、
を含み、その場で行われ、燃焼工程(1)およびオキシハロゲン化工程(2)に対してラジアル移動床炉を使用する方法が記載されている(請求項1~8,第3頁左下欄第14行~右下欄第7行,第4頁右上欄第16行~19行,第5頁右下欄第2行~第6頁第16行,図面等参照)。 
 請求項1に係る発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、前者は、担体が多孔質担体であるのに対し、後者は、担体としているだけで具体的に記載されていない点(以下、「相違点1」という。)、前者は、燃焼工程において、燃焼時間を0.3~7時間と規定しているのに対し、後者は、燃焼時間に関して記載されていない点(以下、「相違点2」という。)、前者は、触媒の再生が炭化水素精製の「現場外」で行われるのに対し、後者は、「その場」で行われる点(以下、「相違点3」という。)、及び、前者は、燃焼工程(1)及びオキシハロゲン化工程(2)に対して薄層回転型の炉を使用するのに対し、後者はラジアル移動床炉を使用する点(以下、「相違点4」という。)で相違する。 
 上記相違点1について検討すると、触媒担体として多孔質担体を採用することは、通常行われることであり、当業者にとって、容易になし得ることである。 
 上記相違点2について検討すると、燃焼工程及びオキシハロゲン化工程の温度及び時間は、それぞれ失活した触媒に沈積したコークスの燃焼及び触媒のオキシハロゲン化をするのに必要な温度及び時間であり、失活した触媒の状態に応じて、適宜設定し得るものである。 
 上記相違点3について検討すると、引用例2,3には、触媒の再生を現場外で行うことが記載されている(引用例2:特許請求の範囲2、第4頁右上欄第12行~左下欄第7行、第5頁右下欄第2行~第6頁左上欄第4行、第7頁左上欄第5行~右上欄第14行、引用例3:第1頁右欄第1行~16行等参照)。 
 そうすると、引用例1~3は、触媒の再生方法に関するものであり、同一の技術分野に属するものであるから、引用例1に記載の触媒の再生方法において、引用例2,3に基づいて、現場外で行うことも当業者であれば容易になし得ることである。 
 上記相違点4について検討すると、引用例3には、再生炉としてロータリーキルンを使用することが記載されている(特許請求の範囲、第2頁右上欄第1行~8行、実施例等参照)。 
 ここで、引用例3に記載のロータリーキルンは、薄層回転型の炉に相当すると認められる。 
 そうすると、引用例1,3は、触媒の再生方法に関するものであり、同一の技術分野に属するものであるから、引用例1に記載の触媒の再生方法において、その再生炉として、引用例3の記載に基づいてロータリーキルンを採用することも当業者であれば容易になし得ることである。

(引用例4を第一引用例とした場合) 
 引用例4には、第VIII族貴金属成分と、耐火性無機酸化物担体とを含む炭化水素処理の使用済み触媒の再生方法であり、次の連続する少なくとも二つの工程: 
・酸素を含む気体の存在下に、399~566℃の温度で十分な時間行われる、該触媒上に存在するコークスの少なくとも一つの燃焼セクション(1)、 
・空気の制御された雰囲気下に、399~566℃の温度で十分な時間、ハロゲン化合物の存在下に行われる、少なくとも一つのハロゲン化セクション(2)
を含み、その場で行われ、燃焼セクション(1)およびハロゲン化セクション(2)に対して移動床炉を使用する方法が記載されている(特許請求の範囲,第2頁左下欄第3行~13行,第3頁左下欄第1行~12行,第4頁右上欄第6行~左下欄第6行,第5頁左上欄第12行~右上欄第6行,図面等参照)。 
 請求項1に係る発明と引用例4に記載された発明とを対比すると、前者は、担体が多孔質担体であるのに対し、後者は、耐火性無機酸化物担体である点(以下、「相違点1」という。)、前者は、空気とハロゲン化合物の存在下で加熱する工程をオキシハロゲン化工程としているのに対し、後者は、ハロゲン化セクションとしている点(以下、「相違点2」という。)、前者は、燃焼工程及びオキシハロゲン化工程において、それぞれの時間を0.3~7時間及び0.3~3時間と規定しているのに対し、後者は、前記両工程に対応する工程における時間を共に十分な時間としている点(以下、「相違点3」という。)、前者は、触媒の再生が炭化水素精製の「現場外」で行われるのに対し、後者は、「その場」で行われる点(以下、「相違点4」という。)、及び、前者は、燃焼工程(1)及びオキシハロゲン化工程(2)に対して薄層回転型の炉を使用するのに対し、後者は移動床炉を使用する点(以下、「相違点5」という。)で相違する。 
 上記相違点1,3~5についての検討は、引用例1を第一引用例とした場合の相違点1~4についての検討と同様である。 
 上記相違点2について検討すると、引用例4では、ハロゲン化セクションは、ハロゲンと空気が存在する雰囲気下で行われるから(第5頁右上欄第3行~6行,第5頁右下欄第14行~第6頁左上欄第4行参照)、請求項1に係る発明のオキシハロゲン化工程と差異はない。 
 したがって、請求項1に係る発明は、引用例1~4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

意見書
 (引用文献1を第一引用例とした場合) 
 拒絶理由通知には、本願の請求項1に係る発明(以下、前者と称する)では触媒の再生が炭化水素精製の「現場外」で行われるのに対し、引用文献1に記載された発明(以下後者と称する)では触媒の再生が「その場」で行われている点(相違点3)、また、前者では、燃焼工程(1)及びオキシハロゲン化工程(2)に対して薄層回転型の炉を使用するのに対して、後者ではラジアル移動床炉を使用する点(相違点4)で相違点が認められている。 
 そして、上記の相違点3について、触媒の再生を現場外で行うことが引用文献4または2に記載されていることに基づいて、引用文献1に記載の触媒の再生方法において、触媒の再生を現場外で行うことは当業者にとって容易であると認定されている。 
 また、上記の相違点4について、引用文献2には、再生炉としてロータリーキルンを使用することが記載されていることに基づいて、引用文献1に記載の触媒の再生方法において、触媒の再生のためにロータリーキルンを採用することは当業者にとって容易であると認定されている。 
 以下、上記の2つの認定に対して意見を述べる。 
・相違点3に関して 
 引用文献1には、触媒と接触させて石油原料を反応させ、同時に、触媒を再生するのための連続方法であって、前記触媒は、反応帯域と再生帯域との間を連続して流通する、方法が記載されている。触媒の再生方法は、拒絶理由通知にて認められているように、工程3において反応器3において操作される現場内再生方法である。 
 引用文献2および4には、触媒の再生を現場外で行うことが記載されている。 
 しかしながら、引用文献2には、空気を用いた燃焼による、触媒の現場外再生のために用いられるロータリーキルンが記載され、当該ロータリーキルンの内部は、複数の室に分割されており、それぞれの室毎に、空気およびリサイクルされる燃焼ガスが導入され、生じた燃焼ガスが各室から抽出される。このように、引用文献2に記載されたロータリーキルンでの再生方法は、本願請求項1の燃焼工程(1)に相当しているが、本願請求項1のオキシハロゲン化工程(2)は引用文献2には開示されていない。 
 また、引用文献4に記載されているのは、現場外で触媒を予備硫化する(硫黄の導入)方法であって、引用文献4には本願請求項1の燃焼工程(1)またはオキシハロゲン化工程(2)のいずれも開示されていない。 
 本願発明において解決しようとしている課題は、貴金属を含有し、相当量の炭素を含有 し得るリフォーミング触媒を再生することであり、貴金属を再分散させるためにオキシハロゲン化工程(2)は必ず行わなければならない工程である。 
 したがって、引用文献2および4には、燃焼工程(1)とオキシハロゲン化工程(2)を連続的に行うことは開示されていないので、引用文献1と引用文献2または4を組み合わせたとしても、本願発明の請求項1の方法に想到することは容易ではない。 
・相違点4に関して 
 上記のように、本願発明の課題は、貴金属を含有し、相当量の炭素を含有し得るリフォーミング触媒を再生することであり、貴金属を再分散させるために必ず行われるオキシハロゲン化工程(2)は、注意深く制御されなければならない工程である。 
 この点で、本願発明の請求項1における薄層回転型の炉は、触媒の層が薄く、該層の全体にわたって均一にオキシハロゲン化することが可能である。 
 これに対して、引用文献2に記載されたようなロータリーキルンは、段階的に触媒を再生させることを目的としてキルン内部を複数の室に分離しているが、薄層にて処理を行うものでないため、本願発明の請求項1のような均一な処理を行うには不十分である。 
 したがって、本願発明の請求項1の薄層回転型の炉は、引用文献4のロータリーキルンに相当しないので、引用文献1の方法に引用文献4のロータリーキルンを組み合わせたとしても、本願発明の請求項1に想到することは容易ではない。

(引用文献3を第一引用例とした場合) 
 拒絶理由通知には、本願の請求項1に係る発明(以下、前者と称する)では触媒の再生が炭化水素精製の「現場外」で行われるのに対し、引用文献3に記載された発明(以下後者と称する)では触媒の再生が「その場」で行われている点(相違点4)、また、前者では、燃焼工程(1)及びオキシハロゲン化工程(2)に対して薄層回転型の炉を使用するのに対して、後者では移動床炉を使用する点(相違点5)で相違点が認められている。 
 そして、上記の相違点4について、触媒の再生を現場外で行うことが引用文献4または2に記載されていることに基づいて、引用文献1に記載の触媒の再生方法において、触媒の再生を現場外で行うことは当業者にとって容易であると認定されている。 
 また、上記の相違点5について、引用文献2には、再生炉としてロータリーキルンを使用することが記載されていることに基づいて、引用文献1に記載の触媒の再生方法において、触媒の再生のためにロータリーキルンを採用することは当業者にとって容易であると認定されている。 
 上記相違点4および5は、(引用例1を第一引用例とした場合)についての相違点3および4と実質的に同じ内容である。したがって、上記2つの認定に対しても上記(引用文献1を第一引用例とした場合)に説明したのと同様の理由により、本願発明の請求項1は、引用文献3、2および4に基づいて容易に想到することができるものではない。 
 上記のように本願発明の請求項1は進歩性を有している。本願発明の請求項2~13は、進歩性を有する請求項1の従属項であるため、当然、これらも進歩性を有する。

続く
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ちまちま中間手続33の2

2024-12-21 21:07:05 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続33の2

拒絶理由 2回目
(引用例1を第一引用例とした場合)

 請求項1に係る発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、前者は、担体が多孔質担体であるのに対し、後者は、担体としているだけで具体的に記載されていない点(以下、「相違点1」という。)、前者は、燃焼工程において、燃焼時間を0.3~7時間と規定しているのに対し、後者は、燃焼時間に関して記載されていない点(以下、「相違点2」という。)、前者は、触媒の再生が炭化水素精製の「現場外」で行われるのに対し、後者は、再生される場所に関して明確に記載されていない点(以下、「相違点3」という。)、及び、前者は、燃焼工程(1)及びオキシハロゲン化工程(2)に対して薄層型移動床炉又は薄層回転型の炉を使用するのに対し、後者はラジアル移動床炉を使用する点(以下、「相違点4」という。)で相違する。 
 上記相違点1について検討すると、触媒担体として多孔質担体を採用することは、通常行われることであり、当業者にとって、容易になし得ることである。 
 上記相違点2について検討すると、燃焼工程及びオキシハロゲン化工程の温度及び時間は、それぞれ失活した触媒に沈積したコークスの燃焼及び触媒のオキシハロゲン化をするのに必要な温度及び時間であり、失活した触媒の状態に応じて、適宜設定し得るものである。 
 上記相違点3について検討すると、触媒の再生を「その場」で行うか、あるいは「現場外」で行うかは、製品の製造や触媒の再生の効率やコスト等を考慮して当業者が適宜選択し得ることであるから、引用例1に記載された触媒の再生を、現場外で行うことは、当業者にとって、容易に想到し得ることである。 
 上記相違点4について検討すると、燃焼工程(1)及びオキシハロゲン化工程(2)に使用する炉は、製品の製造や触媒の再生の効率やコスト等を考慮して当業者が適宜選択し得るものである。また、本願発明の詳細な説明及び意見書において出願人が主張する薄層型移動床炉又は薄層回転型の炉を選択することによる効果も、当業者が予測し得ない格別顕著なものであるということを示す具体的な実験結果等に基づくものではないから、単に現場外で再生を行う効果及び炉自体が有する効果であって、それ以上の格別顕著なものであることを推認することはできない。

(引用例2を第一引用例とした場合)

 請求項1に係る発明と引用例2に記載された発明とを対比すると、前者は、担体が多孔質担体であるのに対し、後者は、耐火性無機酸化物担体である点(以下、「相違点1」という。)、前者は、空気とハロゲン化合物の存在下で加熱する工程をオキシハロゲン化工程としているのに対し、後者は、ハロゲン化セクションとしている点(以下、「相違点2」という。)、前者は、燃焼工程及びオキシハロゲン化工程において、それぞれの時間を0.3~7時間及び0.3~3時間と規定しているのに対し、後者は、前記両工程に対応する工程における時間を共に十分な時間としている点(以下、「相違点3」という。)、前者は、触媒の再生が炭化水素精製の「現場外」で行われるのに対し、後者は、「その場」で行われる点(以下、「相違点4」という。)、及び、前者は、燃焼工程(1)及びオキシハロゲン化工程(2)に対して薄層型移動床炉又は薄層回転型の炉を使用するのに対し、後者は移動床炉を使用する点(以下、「相違点5」という。)で相違する。 
 上記相違点1,3-5についての検討は、引用例1を第一引用例とした場合の相違点1-3についての検討と同様である。 
 上記相違点2について検討すると、引用例2では、ハロゲン化セクションは、ハロゲンと空気が存在する雰囲気下で行われるから(第5頁右上欄第3行-6行,第5頁右下欄第14行-第6頁左上欄第4行)、請求項1に係る発明のオキシハロゲン化工程と差異はない。 
 したがって、請求項1に係る発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

意見書
 (引用文献1を第一引用例とした場合)
 (i)本出発明は、担体が多孔質であることおよび燃焼工程ための従来方法を権利化することを意図していない。よって、相違点1および2はいずれも本願発明にとって重要ではない。
 (ii)本願発明の目的は「薄層回転型の炉」による触媒の「現場外」再生にあるため、相違点3は本願発明にとって重要である。

 相違点3に関して、拒絶理由通知には、引用文献1では再生される場所に関して明確に記載されていない、とあるが、引用文献1の記載を参照すると、その第6頁左上欄17行~同頁右上欄5行の段落に「焼成(すなわち、再生操作の最終工程)後、…上昇装置は、…第一反応器を通過させることができる。」、第5頁3~15行の段落に「…新規再生回路を提案、かつ使用せざるをえなくなっている。…連続的な…」、第5頁右下欄2~4行の段落に「…最後の反応器を出た触媒は、一般に例えば窒素による上昇装置(リフト)によって再生帯域の方へ運ばれる。」とあるように、触媒の再生が「現場外」で行われていないことは極めて明らかである。 
 「現場外」再生は、工業装置の設置場所の近く、または、工業装置から多少地理的に離れた場所(例えば、触媒製造の工業装置から数千マイル離れた場所)で行われる再生法である。本願発明では、再生は、反応器自体(触媒が用いられる場所)に結び付けられず、これは、反応器のすぐ近く、すなわち、反応器頂部または、これらの反応器と程度の差はあっても直接的に連絡する帯域内(引用文献1または下記引用文献2の場合)では決して再生が行われず、それ故に、一般に、反応器自体またはそれの付属品(例えば触媒の予備の水素化帯域)の操作条件によって少なくとも一部において課される操作条件(温度、圧力等)下に反応器内または再生帯域で操作が行われることが必要であるものではないことを意味する。反応器の操作条件によって課される操作条件で再生が行われることについては、引用文献1の第5頁右上欄17~20行の「…炭化水素仕込原料および新品または再 生触媒が通過する第一反応器内の圧力と同じ圧力で、再生を実施する…」が参照される。
 さらに、引用文献1では、再生器は動かずに固定位置にある方法であり、触媒は格子間を再生器の頂部から底部に流れる。 
 これに対して、本願請求項1では、再生器自体が回転し触媒を移動させる移動装置を用いる方法である。

(引用文献2を第一引用例とした場合)
(i)相違点1(担体が多孔質担体であるか、耐火性無機酸化物担体であるか)、相違点2(オキシハロゲン化工程対ハロゲン化セクション)および相違点3(燃焼およびハロゲン化の時間の差異)は、本願発明にとって重要でないため、その議論は省略する。 
(ii)相違点4については、引用文献2では再生工程が現場外でないことは明らかである。改質反応器および再生帯帯域が、一緒に連続的に連結されているからである。このことについては、第6頁右上欄10~12行の「…触媒粒子は…再生帯域1に送られる」および第6頁左下欄最終行~同頁右下欄5行の「ライン24を経て再生帯域から取り出される触媒粒子…反応帯域に送られる前に別の容器であるいは反応帯域の一部をなし一体となった容器で水素還元を行う」が参照される。 
(iii)相違点5を検討すると、補正により本願は「薄層回転型の炉」に限定されたことから、拒絶理由通知に示された認定は全く関係なくなった。その理由は上記の引用文献1についての(iii)において明らかにされている。 
 本願の現場外再生操作は、下記の点で、引用文献1および2に記載された再生操作と異なっている。 
・薄層回転型の炉を使用すること自体は非常に簡単であるが、引用文献1および2のような連続的再生器は、技術およびその作動の両方の点で複雑であり、技術的な困難性に起因してコストも高くなる。 
・本願のように薄層回転型の炉を用いることによって、ホットポイントが生じない。引用文献1または2のような連続的再生法において作動中に実際にホットポイントの問題があると、触媒中の炭素含有量は、高濃度に増加するだろう(通常は約5%であるのに対してホットポイントがあると10~15%になる)。したがって、引用文献1または2では、約200℃の温度を上げなければ高濃度の炭素を燃焼させることができない。しかしながら、このような高温は触媒の取り返しのつかない損傷につながる。 
 このような引用文献1または2における不利益な点を避けるために、これらの文献の方法では、ガス流れが増加させられるべきである。しかしながら、ガス流れを増加させると、大量のガスを再処理するという問題が生じる。すなわち、より大規模なプラントを設置しなければならず、コストも増加する。 
 これに対して、本願の薄層回転型の炉では、触媒粒子の激しい回転を伴うものであるために、熱量が良好に除かれ、このため大量のガス流を必要としないことを本出願人は観察した。 
 本願の薄層回転型の炉では、触媒粒子の回転を伴い、熱が良好に除かれるので、ホットポイントは生じないが、場合によっては生じたとしても、ホットポイントは触媒粒子の塊中に希釈される。 
 前回の意見書において既に説明したように、薄層回転型の炉では、触媒の全ての形態、例えば、押出物、不規則な床等を受け入れることができるが、引用文献1または2の炉は、規則的なビーズにより満たされなければならならず、実際に、引用文献1および2では、不規則なビーズ(例えば、触媒の移動によって壊されたビーズ)が存在する場合、粒子の消耗に由来する微粒子および壊れたビーズを分離するために再生器に水簸選別機{すいひせんべつき}を備えていなければならない。本願の薄型回転型の炉では上記のように全形態を受け入れることができるので、このような追加的に費用のかかる設備を必要としない。 
 さらに、引用文献1および2では、不規則なビーズは、触媒の床を維持する格子上に固定され、それ故、この点近くの触媒に損傷を与えるホットポイントを生じさせる。 
 また、再生の終了時に、本願発明では、輸送される触媒は冷却されるが、逆に、引用文献1および2では、触媒は、炭化水素処理工程に輸送されるために加熱されて維持されなければならない。 
 本願発明では、以上に説明したような種々の点で、引用文献1または2の発明を比較して有利な効果を有している。したがって、本願発明は、引用文献1および2に基づいて容易に想到することができるものではなく、進歩性を有している。

続く
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ちまちま中間手続33

2024-12-21 21:01:56 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続33

拒絶理由 進歩性
 請求項1に係る発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、前者は、担体が多孔質担体であるのに対し、後者は、担体としているだけで具体的に記載されていない点(以下、「相違点1」という。)、前者は、燃焼工程において、燃焼時間を0.3~7時間と規定しているのに対し、後者は、燃焼時間に関して記載されていない点(以下、「相違点2」という。)、及び、前者は、触媒の再生が炭化水素精製の「現場外」で行われるのに対し、後者は、再生される場所に関して明確に記載されていない点(以下、「相違点3」という。)で相違する。
 上記相違点1について検討すると、触媒担体として多孔質担体を採用することは、通常行われることであり、当業者にとって、容易になし得ることである。 
 上記相違点2について検討すると、燃焼工程及びオキシハロゲン化工程の温度及び時間は、それぞれ失活した触媒に沈積したコークスの燃焼及び触媒のオキシハロゲン化をするのに必要な温度及び時間であり、失活した触媒の状態に応じて、適宜設定し得るものである。 
 上記相違点3について検討すると、触媒の再生を「その場」で行うか、あるいは「現場外」で行うかは、製品の製造や触媒の再生の効率やコスト等を考慮して当業者が適宜選択し得ることであるから、引用例1に記載された触媒の再生を、現場外で行うことは、当業者にとって、容易に想到し得ることである。

 上記相違点1,3,4についての検討は、引用例1を第一引用例とした場合の相違点1-3についての検討と同様である。 
 上記相違点2について検討すると、引用例2では、ハロゲン化セクションは、ハロゲンと空気が存在する雰囲気下で行われるから(第5頁右上欄第3行-6行,第5頁右下欄第14行-第6頁左上欄第4行)、請求項1に係る発明のオキシハロゲン化工程と差異はない。

補正書
  【請求項1】
 ・・・薄層型移動床炉または薄層回転型の炉を使用することを特徴とする方法。

意見書
 本願発明では、燃焼工程(1)およびオキシハロゲン化工程(2)が、薄層型移動床炉または薄層回転型の炉を使用して行われている。引用文献1および2には、燃焼工程およびオキシハロゲン化工程に使用される炉について移動床が記載されているが、本願発明のような薄層型のものは記載されておらず示唆する記載もない。 
 本願発明のように、現場外で薄層型移動床炉(装置は固定され、触媒の床が、重量により装置の頂部から底部に移動するもの)または薄層回転型の床の炉(好ましい形態;回転装置であり、触媒は、薄層の形態で回転しながら移動する)を用いることにより、以下の効果を得ることができる。 
 (a)薄層型の炉を使用することが非常に簡単である。
 これに対して、引用文献1または2に記載されるような移動床を用いた連続式の現場再生器(CCR)は、技術(高費用)およびその作動の両方の点で複雑である。 
 (b)引用文献1または2に記載されるような移動床を用いた連続式現場再生器法(CCR)では、作動中に問題があると触媒中の炭素含有量が高レベル(10~15%、通常は約5%)に増加する。触媒の移動床によるCCR法が現場外(すなわち、リフォーミング法とリンクされる)または現場で行われたとしても、約200℃の温度を上昇させなければ、全ての高レベルの炭素を燃焼させることは可能でなく、これは、再生不可能な触媒のダメージにつながる。このような不利益点を回避するために、ガスの流量は、大幅に増加させられるべきである。しかしながら、問題は、このような大量のガスを再処理することである。すなわち、より容積の大きいプラント、費用が増大する。 
 これに対して、本願発明のように薄層型床を使用することにより、熱量が効率よく除去され、ガスの大きい流量は必要でない。 
 (c)引用文献1または2に関連するCCRでは、触媒は触媒床を維持する格子上に固定され、触媒が不規則なビーズ状等であると、触媒に損傷を与えるホットスポットを生じさせる場合がある。このため、引用文献1または2に関するCCRでは、触媒は規則的なビーズ状に固定されなければならず、水簸選別機(elutriator)が、粒子の損耗から生じた微細物または破損ビーズを分離するためにCCR再生器に提供されなければならない。 
 これに対して、本願の薄層型床(特に回転型のもの)では、熱が効率よく除かれホットポイントが発生しにくく、また、ホットポイントが生じても、触媒質量中に希釈されるので、ホットポイントは問題にならない。
 したがって、本願では、押出物、不規則な床等の触媒の全ての形態を受け入れることができ、引用文献1または2に関するCCRのような追加的な費用のかかる設備を設ける必要がない。 
 結論として、薄層型移動床炉または薄層回転型の炉を用いる本願発明は、多くの点で引用文献1または2の方法からは得られない効果を有するので、本願の請求項1は、引用文献1または2と比較して進歩性を有している。

続く
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ちまちま中間手続33

2024-12-21 21:01:56 | ツーリング
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続33

拒絶理由 進歩性
 請求項1に係る発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、前者は、担体が多孔質担体であるのに対し、後者は、担体としているだけで具体的に記載されていない点(以下、「相違点1」という。)、前者は、燃焼工程において、燃焼時間を0.3~7時間と規定しているのに対し、後者は、燃焼時間に関して記載されていない点(以下、「相違点2」という。)、及び、前者は、触媒の再生が炭化水素精製の「現場外」で行われるのに対し、後者は、再生される場所に関して明確に記載されていない点(以下、「相違点3」という。)で相違する。
 上記相違点1について検討すると、触媒担体として多孔質担体を採用することは、通常行われることであり、当業者にとって、容易になし得ることである。 
 上記相違点2について検討すると、燃焼工程及びオキシハロゲン化工程の温度及び時間は、それぞれ失活した触媒に沈積したコークスの燃焼及び触媒のオキシハロゲン化をするのに必要な温度及び時間であり、失活した触媒の状態に応じて、適宜設定し得るものである。 
 上記相違点3について検討すると、触媒の再生を「その場」で行うか、あるいは「現場外」で行うかは、製品の製造や触媒の再生の効率やコスト等を考慮して当業者が適宜選択し得ることであるから、引用例1に記載された触媒の再生を、現場外で行うことは、当業者にとって、容易に想到し得ることである。

 上記相違点1,3,4についての検討は、引用例1を第一引用例とした場合の相違点1-3についての検討と同様である。 
 上記相違点2について検討すると、引用例2では、ハロゲン化セクションは、ハロゲンと空気が存在する雰囲気下で行われるから(第5頁右上欄第3行-6行,第5頁右下欄第14行-第6頁左上欄第4行)、請求項1に係る発明のオキシハロゲン化工程と差異はない。

補正書
  【請求項1】
 ・・・薄層型移動床炉または薄層回転型の炉を使用することを特徴とする方法。

意見書
 本願発明では、燃焼工程(1)およびオキシハロゲン化工程(2)が、薄層型移動床炉または薄層回転型の炉を使用して行われている。引用文献1および2には、燃焼工程およびオキシハロゲン化工程に使用される炉について移動床が記載されているが、本願発明のような薄層型のものは記載されておらず示唆する記載もない。 
 本願発明のように、現場外で薄層型移動床炉(装置は固定され、触媒の床が、重量により装置の頂部から底部に移動するもの)または薄層回転型の床の炉(好ましい形態;回転装置であり、触媒は、薄層の形態で回転しながら移動する)を用いることにより、以下の効果を得ることができる。 
 (a)薄層型の炉を使用することが非常に簡単である。
 これに対して、引用文献1または2に記載されるような移動床を用いた連続式の現場再生器(CCR)は、技術(高費用)およびその作動の両方の点で複雑である。 
 (b)引用文献1または2に記載されるような移動床を用いた連続式現場再生器法(CCR)では、作動中に問題があると触媒中の炭素含有量が高レベル(10~15%、通常は約5%)に増加する。触媒の移動床によるCCR法が現場外(すなわち、リフォーミング法とリンクされる)または現場で行われたとしても、約200℃の温度を上昇させなければ、全ての高レベルの炭素を燃焼させることは可能でなく、これは、再生不可能な触媒のダメージにつながる。このような不利益点を回避するために、ガスの流量は、大幅に増加させられるべきである。しかしながら、問題は、このような大量のガスを再処理することである。すなわち、より容積の大きいプラント、費用が増大する。 
 これに対して、本願発明のように薄層型床を使用することにより、熱量が効率よく除去され、ガスの大きい流量は必要でない。 
 (c)引用文献1または2に関連するCCRでは、触媒は触媒床を維持する格子上に固定され、触媒が不規則なビーズ状等であると、触媒に損傷を与えるホットスポットを生じさせる場合がある。このため、引用文献1または2に関するCCRでは、触媒は規則的なビーズ状に固定されなければならず、水簸選別機(elutriator)が、粒子の損耗から生じた微細物または破損ビーズを分離するためにCCR再生器に提供されなければならない。 
 これに対して、本願の薄層型床(特に回転型のもの)では、熱が効率よく除かれホットポイントが発生しにくく、また、ホットポイントが生じても、触媒質量中に希釈されるので、ホットポイントは問題にならない。
 したがって、本願では、押出物、不規則な床等の触媒の全ての形態を受け入れることができ、引用文献1または2に関するCCRのような追加的な費用のかかる設備を設ける必要がない。 
 結論として、薄層型移動床炉または薄層回転型の炉を用いる本願発明は、多くの点で引用文献1または2の方法からは得られない効果を有するので、本願の請求項1は、引用文献1または2と比較して進歩性を有している。

続く
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