今回は、ICLを使用する近視手術での医学的合併症について前回からの続きをお話しさせていただきます。
□ 老眼について
眼はオートフォーカスカメラのように、近距離、遠距離を含むすべての距離に対して焦点を合わせる機能があり、これを調節力といいます。
この調節力は40歳くらいから低下し始め、近距離に焦点を合わせにくくなるため、本を読んだり近くのものをはっきり見るのが困難になります。
調節力の低下は60歳くらいまで進行し、焦点を合わせる機能が弱くなります。この一連の過程は「老眼」と呼ばれます。
有水晶体眼内レンズ挿入術(ICL、IPCL)は眼鏡やコンタクトレンズの依存度を減少させる目的で行いますが、
眼の自然な老化現象は抑えられないため、加齢に伴い老眼鏡が必要になります。
老眼対応の「遠近両用IPCL」が実用化されています。当院でも一時期導入しました。
使い捨ての遠近両用コンタクトレンズが市販されていますが、人によって満足度が安定しないという実情があります。
試してみたが、見え方に不満足で、結局、通常のコンタクトレンズに戻して手元は老眼鏡をかけるという方が多いのです。
「遠近両用IPCL」も様々な医学検証はされており、実用に足るという研究結果が報告されています。
しかしながら、通常のICL、IPCLでは術後の見え方のご不満は殆ど起こらないのにくらべ、
少なくとも当院での遠近両用IPCLを選択された患者さんについては術後の見え方の不満を訴える方が散見されました。
そのため、残念ながらレンズの摘出を強くご希望され再手術対応をさせていただいた方がお一人おられます。
遠近両用の有水晶体眼内レンズは今後発展の可能性はありますが、
現時点では通常のレンズより手術費用が高額になることもあり慎重な対応が必要だと考えます。
現在、当院では遠近両用有水晶体眼内レンズ手術は行っておりません。
また、老眼の自覚が出現し老眼鏡の使用を始めるのが、一般的に45歳以降と言われています。
ところが「スマホ老眼」( https://oguriganka.or.jp/index.php?mnu=0211&IDX=360 )という言葉が出来たように
「老眼発症の低年齢化」が起こっているようです。20~30代のかたでも「手元が見づらい」自覚をお持ちの方が増えていると言われています。
実際、40歳以降の老眼の出現は個人差が大きいと臨床現場で実感しております。
40歳前半であっても近視手術を行って「手元が見づらくなった」、「遠くのメガネは不要となったが、手元用メガネが必要となった」という
患者さんが10年前に比べて増えたように思われます。
そのため、当院では手術による近視治療ICL、IPCLは40歳までとさせて頂いております。
事前に老眼の問題を説明はしてご本人が理解されても、徐々に手元が見づらくなる老眼は思いのほか早い年齢で起こってくると、
「こんな筈ではなかった」と思う方が少なくないのも事実だと感じているためです。
参考までに、この老眼の進行を遅らせることは若いころからの日常生活対応で可能だと考えます。
ご興味をお持ちの方は、こちらをご参照下さい。 https://blog.goo.ne.jp/kouhoukai/e/0e87ed139ba7246f386ec41c81af70ea
特にこれからICL,IPCL手術を検討されている方は、目は身体の一部ですので長く良い視力を維持するためにも
知識として知っておいていただきたいと思います。
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