「インサイツ」 秋吉敏子&ルー・タバキン・ビッグ・バンド
以前から、NHK・FMのライブを録音したものは持っていました。
そこでは「インサイツ」の中の何曲かを演奏していました。
その時も強烈な印象でしたが、今度CDを購入し聴いてみて、やっぱり凄かった・・・
ビッグ・バンドでもスイング系が一番好きな事に変わりはありませんが、秋吉さんの曲の持っている力に強く惹かれます。
収録曲
1 STUDIO J
2 TRANSIENCE
3 SUMIE
4 MINAMATA
PEACEFUL VILLAGE
PROSPERITY & CONSEQUENCE
EPILOGUE
メンバー
スティーヴン・ハフステッター、ボビー・シュー、マイク・プライス、リチャード・クーパー、
ジェリー・ヘイ:トランペット
ビル・ライケンバック、チャーリー・ローパー、ブリット・ウッドマン、フィル・ティール
:トロンボーン
ディック・スペンサー、ゲイリー・フォスター:アルト・サックス
ルー・タバキン:テナー・サックス&フルート トム・ピーターソン:テナー・サックス
ビル・パーキンス:バリトン・サックス
ピーター・ドナルド:ドラムス
ドン・ボールドウィン:ベース
秋吉敏子:ピアノ
観世寿夫:謡曲
亀井忠雄:大鼓
鵜澤速雄:小鼓
ミチル・マリアーノ:歌
堅田啓輝:鞨鼓
和楽器が入っているのが大きな特徴です。
「STUDIO J」は元々はピアノトリオの曲だったそうです。
バド・パウエルが絶賛したそうです。
その曲を秋吉さんがビッグ・バンドにアレンジしなおしたものです。
「TRANSIENCE」ではビル・パーキンスのバリサクのソロが素晴らしいです。
他の作品でも彼は素晴らしいソロを聞かせてくれますが、音色・技術共に凄いです。
「SUMIE」は元々はタバキンのフルートのソロのための曲です。
個人的にはタバキンのフルートの音色は好きです。
テクニックは勿論ですが、ちょっとアタックの強い吹き方で情熱的なソロを聞かせてくれます。
参考までに、この曲はシャープス&フラッツも演奏していました。
「MINAMATA」は壮大な音楽劇のような曲です。
「水俣病」という恐ろしい公害に蝕まれた村がテーマとなっています。
「水俣」は教科書でも扱いました。
助産婦さんが自分の取り上げる赤ん坊に障害を持つ子が増えていったり、死産になったり、それを苦にして助産婦をやめたりします。
当初原因が分からず、それを確定したのが赤ん坊のへその緒に蓄積されていた「有機水銀」から特定したというものだったと思いま
す。
こういった素材をビッグ・バンドで取り上げるのは困難が伴うと思いますが、和楽器を使ったり歌を入れたりして表現しています。
秋吉さんが自分の表現手段である音楽、特にビッグ・バンドで「水俣」の問題を正面から取り上げた事には頭が下がります。