三日目
天候:
行程:出発7:50-仙人池ヒュッテ9:00-仙人温泉小屋10:30-仙人ダム(高熱隋道)12:30-下ノ廊下某所15:10
昨夜はけっこう冷え込んだ。
で、朝起きると雲一つない快晴。
前半二日間のスッキリしない天気のツケを一気に取り戻した気分。
周辺には霜が降り、テントの外側もうっすらと凍りついていた。
池ノ平小屋のテン場
朝の剱
朝食を済ませ、出発前に散歩がてらカメラだけ持って下の平ノ池まで行ってみる。
ちょうど剣に陽が当たり始め、平ノ池から見る裏剱は実に見事。
既に大判カメラを構えたセミプロのような人がいて、この人の写真に関するウンチクが興味深かった。
曰く
・風景写真はシャッタースピード1秒。絞りに絞って画面全体にピントを合わせる。黒澤明の映画もそうで画面全体にピントが合っている。だから葉っぱ一枚が風で揺れてもダメ。
・裏剣といえば仙人池から撮るのが多いが、もはやカレンダーや絵はがきになっているプロの作品には勝てない。
いかに違う場所から違うアングルで撮るかが大事。・・・云々。
ここまでくると単なる写真というよりもはや勝負の世界である。
平ノ池からの裏剱
さんざん写真を取りまくった後、私もようやく重い腰を上げて出発。
池ノ平小屋のテン場を後にするが、歩きながらもついつい背後の剣が気になってしまう。
池ノ平から仙人池ヒュッテまでは木道が続くなだらかな道で何とも気持ちいい。
仙人池でまた写真タイム。
池に映る紅葉の「逆さ裏剣」は、やはり文句なしの美しさ!
この歳になるとちょっとやそっとの景色では感動しなくなるが、この風景は一度は絶対見ておくべきだと思う。
It's a perfect day!
次のポイント、仙人温泉小屋へは沢沿いにどんどん下っていく。ここで、ようやく剣が見えなくなる。
下っていくにつれ、沢の対岸の山腹に湯煙が二つ見えてくる。やがて仙人温泉小屋着。
仙人温泉の湯煙
先が長いのでここはスルーし、先ほどの湯煙のそばをかすめてひたすらガーッと下っていく。
そろそろ足もヨレてきて、ヒザに堪える長い下りだ。
やがて沢を横切る橋に到着。
長い下りから解放されて大勢の中高年登山者が休んでいた。
さらに沢沿いの水平トラバース道を進んでいくと上から見えていた仙人ダムに到着。
朝方はダウンジャケットを着ていても寒かったが、ここまで下ってくるとさすがに秋の陽が暖かい。
仙人ダム
今日はこれから下ノ廊下を行けるところまで行くつもりだが、その前に阿曽原小屋の露天風呂に入っていきたい。
で、そちらへ向かおうとしたのだが、初めてということもあって少し迷ってしまった。
持参した登山地図が10年前のものでルートが変わっていることもあるが、ダムの脇から関西電力の建物内に入っていく通路は辺りが暗くて初見だとまず迷うだろう。
そして、ここがあの「高熱隧道」であり、熱風の吹きつける削ったままの坑道は工事関係者の苦闘が感じられ迫力がある。
sudoさんに倣って私も吉村昭氏の「高熱隧道」を読んだが、実物を見て、改めてまた読み返したくなった。
高熱隧道
隧道は見ておいてよかったが、ダムから阿曾原小屋まで一時間ほどかかると聞き、時間が無いので今回は露天風呂は諦め下ノ廊下へ向かって歩き出す。
下ノ廊下へ
高度感のある東谷吊橋を渡ると、いよいよ水平歩道の始まりとなる。
この時間、南下コースを行くのは自分一人だが、向こう側から北上してくるパーティーはポツポツいる。
コの字型にくりぬいた水平歩道や眼下に流れる黒部川の景観はなかなかワイルドで、ヒマラヤのトレッキングでもしているような気分。
(左)東谷吊橋を渡る。 (右)コの字にくりぬかれた水平歩道
本日は、下ノ廊下の某所でビバーク。
指定地以外はテント禁止なのかもしれないが、ゴミは残さないので勘弁ね。
熊の出没に怯えつつ、その夜は黒部のど真ん中で眠る。
十字峡
写真集[池ノ平~仙人ダム(高熱隧道)]