九日目
ハインド・ハット-アシニボイン・ロッジ-グラッシー・レイク-キャンモア(ACC Clubhouse"Bell Cabin"泊)
ハインド・ハットの夜明け
昨夜は少し雨が降ったが、朝はまた快晴となる。
小屋は昨日りのメンバー10人のまま満員で、昨日夕方頃到着して入り切れなかった二組は外にテントを張っていた。
この二日間、風はそれほど強くなかったが、この吹きさらしの場所でテントは飛ばされることはないのだろうか。
もしかしたらハインド・ハットの名のとおり、見た目は吹きさらしでも意外と山とモレーンに隠れてあまり風を受けないのかもしれないが。
暗いうちに一度トイレに行ったら、もうレッド・バンドの下辺りにヘッデンの光が二つほど見えた。
自分も昨日の今頃、あの辺りを登っていたんだろう。
ヤムナスカ・チームの栗原氏も写真にこだわりを持っているようで、朝早くから大きな一眼レフで朝焼けのアシニボインを撮っていた。
で、小屋の前でコーヒーを飲む私の姿も一緒に撮ってくれる。山はともかく自分の姿など絵になるのか。「違いがわかるシブい男」風に撮れてたらいいけど。
Jimも起きてきて、また写真を撮り合う。
まったくアシニボインだけで何枚写真を撮っただろう。
Assiniboineと私 photo by Jim
今日のアシニボインは頂上付近から雲をたなびかせている。
アシニボインとは元々アシニボイン族のことで、そのテント(ティピー)から煙が出ている様子が、この山の姿と重なるため、そう名付けられたとのこと。
これで見納めとばかり写真を撮れるだけ撮る。
朝食をさっさと済ませると、後は小屋を軽く掃除して出発。二晩お世話になりました。
帰りは節約とハイキングを兼ねて、往きでヘリを使ったところ(アシニボイン・ロッジ~Mt.シャーク・パーキング間、約22km)は6~7時間かけてトレイルを歩いていくので先に出発するつもりでいたが、結局、皆ほとんど一緒に下山することになった。
帰りはまた山腹のガレを行くトラバース。
これがあるから、登頂し終わってもまったく緊張が解けない。
それにしても男性ガイドを連れた例の中年女性は相変わらずペースが異常に遅く、いくら仕事とはいえガイド氏には同情してしまう。
ちょっとした岩場や雪渓のロワーダウンも一歩一歩ロボットのような動きでぎこちなく、待たされるこちらは思わずイライラしてくる。
自分もガイド・パーティーの後にくっついて登らせてもらったのであまり偉そうなことは言えないが、本来その山に登る技術と体力が十分備わっていないのに金さえ積めば登らせてしまうガイド登山にはちょっと疑問を感じてしまった。
下山も最後まで気が抜けない
往きに雪渓の下を潜ったガリーはラッペルし、ガレ場からメドウ、そしてアシニボイン・ロッジに着く。
ハインド・ハットを最後に発ったエリックとジムがその後すぐに到着し、再び握手。
ヤムナスカ・チームやジムたちはもうすぐヘリで出発。
自分はロープやシュラフなど大きな荷物だけヘリで運んでもらうつもり(10kgで約50$)なので、ゆっくりロッジで名物のケーキとティーでも味わおうと思ったらティーハウスは14時までお休みとのこと。残念。
それではお湯だけもらってコーヒーでも作ろうかと思ったら、またエリックとジムが来て「ビールはどうだ?」と言う。
自分はこれから歩きで、飲んだら歩けなくなるとやんわり断ったが・・・、まぁせっかくだから一杯付き合おう。
しかし払おうとしたら「俺たちのおごりだ。」と言う。
さらに本当は自分たちはあと二人メンバーがいたのだが、体調が悪くヘリをキャンセルしてしまい、その分払い戻しできないのでYouが乗れと言う。
そりゃあまりに悪いだろうと断るが、 「You are our friend. No problem. come! come!」と・・・。
結局、帰りのヘリ代(一万円相当)+ビールを奢ってもらってしまったが、いいのかこれで?
アメリカの連中は身体もデカイが、心もデカイ!
20分のフライトで再びMt.シャーク・パーキングへ。
ヤムナスカの人たちにも世話になった。特にアシニボインで終始、私の前を歩き、落石や危険ポイントをさり気なく教えてくれたもう一人の女性ガイド、メリーは好感が持てた。
ささやかな感謝の意を込め、私がいつもザックに付けていた穂高神社の御守りを渡す。
聞くと彼女はまだ見習いガイドで、今度の試験に受かれば正式な資格がもらえるとのこと。合格祈願にニッポンの穂高神社パワーが効きますように!
二日ぶりに愛車"ホワイティ"の所に戻り、ようやく無事に帰ってきた気がする。
さぁ、ひとまずキャンモアへ帰ろう。
車を走らせ、そろそろキャンモアの町が近づく手前で"Grassy Lake"の標識が見えたので、途中で折れて行ってみる。
事前に調べておいたのだが、キャンモア近郊のフリー・ゲレンデの一つだ。
岩場へはトレイルを40分ほど登っていく。
パーキングに車を停め、道行くハイカーに聞きながら40分ほどトレイルを登っていく。山から下りてきたばかりなので、ちょっと疲れた。
湖の他にものすごく鮮やかなグリーンの色をした池がいくつもあって、それを囲むように石灰岩の岩場がある。高さもなかなか。
イメージとしては秩父の二子山の中にきれいな湖が点在しているような感じか。
水中に沈んでいる流木もクッキリ見えるクリアな水
相当被った岩に高校生ぐらいのニイちゃんと年配のおっちゃんが取付いている。
下でビレイしている仲間に「How grade?」と聞くと、「11+」とか言っていた。(5.11後半ってことかな。)
もう少しトレイルを上がっていくとタトゥーの少女とヒゲ・ヒッピーのペアがやっていて、こちらは5.8~5.9と言う。
たしかにこれなら自分でも行けそうだ。
クライミング・シューズとハーネスを持ってきているので仲間に入れてもらおうかと思ったが、しかしよくよく聞いてみると相手は英語ではなく、フランス語を話しているようだ。
たぶん英語も通じると思うが、言葉がはっきり通じないとロープを結んでいてもちょい不安である。
まぁ、ここは無理せず止めておこう。
自分はこの日バンフに泊まるつもりだったが、アシニボインの下山日程が不確定だったため、どこの宿にも予定を入れておらず、面倒なのでまたキャンモアのACCに戻り、クラブハウス別棟の"Bell Cabin"をあてがってもらう。
離れのロッジは泊まってみたかったので丁度良いが、メインロッジから少し離れているだけあって泊り客の散らかし具合も自由すぎる感じ。(苦笑)
同室の隣のベッドの青年はフリー・クライマーのようで、ベッドの脇に大量のカムやらナッツが置いてあり、ここらの岩場を登りまくっているらしい。
上のベッドはあのメスナーがヒッピー化したような感じで、何とも怪しげな風貌。
先ほど別れたエリックとジムはクラブハウスのメイン・ロッジに泊まると聞いていたので、先ほどの礼を兼ねてマティーニのシャンパンと娘のホームステイ先へ土産として持ってきた日本の「タコせんべい」を差し入れする。
エリックとジムは今夜も一緒に食いに行こうと言ってくれそうだったが、彼らには他に二人のメンバーがいるし、これ以上自分が彼らの中に割り込んでも悪い。
Thank you, Erik & Jim. I don't forget you. See you somewhere.
夕方、キャンモアの町を散策。
夜はアシニボインに登れて自分にご褒美ということで、人気ビア・レストランの"Grizzly paw"へ。
バイソン・バーガーwithサラダとチェリーコーラ・フロートで$25。
旨くてそこそこボリュームもあったけど、やっぱカナダの外食は高い。なんだかんだでまず2,000円以上になってしまう。
やはり一人の時はスーパーで簡単にサンドウィッチでも買って済ますことにしよう。
動画 Assiniboine Heri Returns
写真集 アシニボイン下山、グラッシーレイクほか
To be continued.